朝日新聞デジタル：東燃ゼネラル石油　丸山隆之執行役員 - 愛知

先言深語

東燃ゼネラル石油　丸山隆之執行役員

角野貴之撮影

★　一般家庭も契約する電力会社を選べるようになって１カ月余り。新規参入組の手応えは。

　――４月に全面自由化された電力小売りに参入して１カ月余りがたちました。

　「東京、関西、中部電力の管内で、家庭向けの『ｍｙでんき』の販売を始めた。４月末までの申込件数は全体で１万５千強。競合する東京ガスの約３０万件、東急電鉄の約４万件に比べると少ないが、悲観はしていない。静岡県と千葉県に火力発電所を新設する計画で、それぞれ２０２１年と２４年に稼働する予定だ。この時までに、契約者を着実に増やせばよい」

　――このうち中部電管内は？

　「数百件だ。中部電はもともと原子力発電への依存度が他電力より低く、原発停止による電気料金の値上がりは限定的。このため東電や関電より料金が安く、我々が割安感を訴えにくくなっている」

　――ｍｙでんきの特徴は？

　「１カ月の使用量が３００キロワット時までは料金が中部電と同じだが、これを超えるほど割安になる。少なくとも中部電と同額で、損はしない。解約金もないので、まずは申し込み、どの会社が得かをじっくり検討していただきたい」

●業界トップ　自負

　――ほかの新規参入組では、携帯電話やガス料金などと抱き合わせのサービスが目立ちます。

　「うちは、ほかの商品とセットにしたり、ポイントを付けたりせず、わかりやすく電気料金の安さ一本で勝負している。業界でトップクラスの安さと自負している」

　――電力大手から新規参入組に契約を切り替える際、各事業者でつくる公的機関での手続きが必要ですが、作業は順調ですか。

　「この機関に送った顧客データの４分の１でエラーが起き、その度に顧客に確認する手間がかかっている。お客様番号など二つの数字データを送ればよいはずだったが、実際は氏名の入力も必要で、しかも、姓と名の間にスペースがあるかも確認しないといけない。切り替えが１カ月遅れるケースもあり、業界で問題になっている」

●今後　事業の柱に

　――そもそも石油会社がなぜ電力に目をつけたのですか。

　「主力製品のガソリンは、人口減や若者の車離れで年２～３％のペースで市場が縮んでいく。化学製品も、中国やインドなどで最新鋭の大規模プラントの建設が相次ぎ、競争が激しい。そんな中で電力小売りが全面自由化され、今後の事業の柱にできると考えた。計画中の二つの発電所が完成すれば、胸を張れる利益が出せる」

　――規模が大きい電力大手などと、どう競争していきますか。

　「石油精製プラントで培った経験を生かせば、発電所の建設費や運営費を電力大手より安くできる。世界の燃料の市況が下がっている今、新たに燃料購入の契約を結べる我々は、過去の高値での契約が残る電力会社より、安く仕入れられる。燃料安の状況でなければ、参入しなかったと思う」　（大日向寛文）

■まるやま・たかゆき

　東京都生まれ。東北大工学部を卒業後、東燃ゼネラルグループの前身企業の一つ、エッソ石油に入社。米国やシンガポールでの海外勤務を経て、２０１４年８月から東燃ゼネラル石油の電力事業部長（現・本部長）、１５年４月に執行役員に就いた。５５歳。

■東燃ゼネラル石油

　輸入した原油をガソリンなどに精製し販売する石油元売り。２０００年に東燃とゼネラル石油の合併で発足した。ガソリンスタンド「エッソ」「モービル」「ゼネラル」を展開する。以前は米エクソンモービルの子会社だった。１５年１２月期の売上高は２．６兆円。

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