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文化【百聞より一見】

木村充伯展 ケンジタキギャラリー

写真:木村充伯「We Mammals」(毛が生えるパネル、油彩)の展示風景 拡大木村充伯「We Mammals」(毛が生えるパネル、油彩)の展示風景

 美しく機能的な家具や電化製品、洗練されたデザインの什器(じゅうき)やインテリア雑貨、それらは常に「物質と形態が高度に融合した完成品」として消費者の前に現れ、物欲を刺激する。もちろんアートも例外ではない。一方、そうした欲望の視線には把捉できない、ものの裂け目を出現させようとする試みもある。

 大小さまざまな大きさの白いパネルにモサモサした質感で浮かび上がる、人や動物のかたち。近づいてみると、その表面はチェーンソーで彫り削られ、ささくれ立っている。小さな棘(とげ)だらけになった木肌が、そのまま動物たちの体毛の表現となっているのだ。いきなり世界が裏返ったような、不思議な感覚に襲われる。

 「絵とはカンバスやパネルの上に絵の具を盛り上げたもの」という私たちの先入観は、これらの作品の前で軽々と裏切られる。しかも「毛が生えるパネル」という何とも人を食ったネーミング。「生える」という言葉と「削る」という行為の乖離(かいり)に、見る者の感覚は再度宙づりにされる。

 イメージの生成にこうしたトリッキーな仕掛けを施しながらも、そこに現れた全身に毛の生えた人やさまざまな動物たちは、子どもの描画さながらの素朴でユーモラスな外観だ。脱力系と言うべきか。だが、無造作に投げ出されたかのようなそれらの形態と、触覚に訴えかける荒々しい木肌の物質感の拮抗は、どこか野蛮なものも感じさせる。

 「野蛮」とは第一義に「文化の開けていないこと。未開なこと」を言うが、それに即せば、ここにあるのは、完全体になり損ねた、あるいはなってしまう以前のなまなましくも不穏な何かだ。木村充伯の作品は、物質と形態の裂け目として私たちの前に立ち現れ、ウェルメイドな「完成品」ばかり欲望してきた眼差(まなざ)しを不意打ちする。6月11日まで。 (文筆家・大野左紀子)

【大野左紀子 おおの・さきこ】  名古屋市生まれ。東京芸術大卒。著書に「あなたたちはあちら、わたしはこちら」など。

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