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文化

ディアスポラの流転を描く

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写真:「台湾文学セレクション」の既刊4冊 拡大「台湾文学セレクション」の既刊4冊

台湾文学「惑郷の人」作者・郭強生さんに聞く

●「歴史の周縁的な人々のために」

 台湾の長編小説「惑郷の人」(作・郭強生、訳・西村正男)が、名古屋のあるむ社から刊行された。「台湾文学セレクション」の4冊目。戦時中に台湾で生まれた日本人や離郷を強いられた若者を主人公に、故郷喪失者たちの流転を描いている。

 日台の国交が断絶した翌1973年、台湾東部の田舎町で、結局は未完に終わってしまう日台合作映画が撮影される。日本支配時代に戻ったかのような空気が町に立ちこめるなか、忌まわしい事件が起きる。物語は、2010年までの70年間のあちこちを行き来しながら、事件の真相とともに、事件に関与した人々の「それまで」と「その後」の人生を描いていく。

 登場するのは、さまざまな理由で故郷に定着できないでいたり、故郷といえる場所を探していたりしている人々だ。裕福な台湾人家庭で育てられた湾生日本人。大陸から台湾に逃げてきた放浪者の父と先住民の母を持つ青年。両親が戦後移住したアメリカで育った若い日系人。霊魂となってさまよう元日本軍兵士の台湾人も出てくる。

 原作「惑郷之人」は、台湾文化部が優れた出版物に贈る金鼎(きん・てい)賞を13年に受賞した。郭強生さんに作意を聞いた。

 「戦後に中国から台湾に渡ってきた両親だけでなく台湾生まれの私も常に外省人というレッテルを貼られてきた。湾生(終戦前に台湾で生まれた日本人)への関心は、それと無関係ではない。湾生の姿を借りて、台湾が抱え続けているアイデンティティー問題に迫った。『未完の合作映画』は台湾の多元的社会の隠喩です」

 「ディアスポラ(故郷を失った者)は現代文学の重要なテーマ。経済、政治、戦争、人権問題などのせいで多くの人々が不本意な『移動』や『越境』を強いられている。この作品は戦争体験世代へのレクイエム(鎮魂歌)でもあるが、ディアスポラが現在進行形の問題であることを提起したかった」

 「歴史の混乱に取り残された周縁的な人々。彼らのために声を上げ、主流的価値観や支配的なイデオロギーのほころびを明らかにすることが文学の使命のひとつ。少数者や忘れられた人々は敗者ではなく、我々の先行者だと思いたい。『惑郷之人』に続く『断代』は同性愛者を歴史の証人として描きました」

 「台湾文学セレクション」は愛知大の黄英哲教授らが編集委員となり13年に創刊した。さまざまな社会的少数者への肯定的まなざしを感じさせる現代文学作品を翻訳刊行してきた。

 1冊目「フーガ 黒い太陽」はSF小説家による幻想的短編集。異性愛中心主義を木っ端みじんに粉砕する。

 2冊目の「太陽の血は黒い」は、87年の戒厳令解除後に育った女性を語り手に、繁栄から取り残された元政治犯や精神疾患者、同性愛者といった瀬戸際生活者たちの内面を描く。

 3冊目は「沈黙の島」。台湾を代表する女性作家蘇偉貞さんの代表作。30歳のキャリアウーマンが国家・民族・階級・ジェンダーといった枠を取り払った先に自分を見いだす物語だ。

 「惑郷の人」は334ページ、2300円+税。あるむ(052・332・0861)。(佐藤雄二)

 18日午後3時から名古屋大学東山キャンパス人文学研究科1階大会議室で郭強生さんの講演「移動・記憶・セクシュアリティ 台湾文学から見た東アジアの戦後」がある。名大・超域文化社会センター主催。通訳あり。参加無料。

【かく・きょうせい】 1964年台湾生まれ。短編集「夜行之子」、長編「断代」(いずれも未邦訳)など。本書のほか随筆集「何不認真来悲傷」(2015年)でも金鼎賞を受賞している。2018年から台北教育大教授。

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