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海峡往来真発見

骨ごと刺し身、スズメダイ 八田靖史

写真:済州島の市場で売られているスズメダイ 拡大済州島の市場で売られているスズメダイ

写真:済州島の郷土料理「チャリムルフェ」 拡大済州島の郷土料理「チャリムルフェ」

写真:八田靖史さん 拡大八田靖史さん

 ◇韓国料理ライター・八田靖史

 スズメダイという魚がいる。

 漢字では「雀鯛」と書く。全長15センチほどで、「スズメのように小さいタイ」……かと思いきや、それ以外にも「目がスズメに似ている」とか、「スズメのように群れるから」など、語源は諸説あるようだ。タイと名はつくものの、タイ科ではなくスズメダイ科に分類される。

 福岡では、これを塩焼きにした「あぶってかも」という郷土料理が知られる。ユニークなネーミングだが、「炙(あぶ)って噛(か)もう」、または「炙ると鴨(かも)の味」という意味があるらしい。

 もうだいぶ前になるが、私も福岡市内の居酒屋で食べたことがある。頭から骨まで食べられるとのことで、それこそバリバリと噛(か)んで食べた。身はやわらかく上品な味。特に頭のあたりが濃厚でおいしかったのを覚えている。鴨の味に似ていたかは記憶にないので、個人的には噛むほうをより支持したいと思う。

 加えて言えば、韓国においてもスズメダイは噛んで食べる魚である。焼き魚としても食べるが、骨ごと刺し身にすることが多い。福岡が「あぶってかも」なら、韓国は「さしみでかも」だ。

 内臓を抜いて頭を取り、背骨ごと薄切りにする。韓国ではこの切り方を「セコシ」と呼ぶが、これは日本語の「背越し」が由来である。慣れないと骨があたって気になるものの、韓国人に言わせれば、骨のカシカシとした食感こそが持ち味とか。確かに韓国語では「シムヌンマッ(噛み味)」という表現を用い、食感のにぎやかさ、軽快さを喜ぶことは多い。コノシロやアナゴ、小さなカレイなどもセコシで味わう。

 スズメダイは朝鮮半島の南に浮かぶ済州島(チェジュド)が名産地である。韓国語では「チャリドム」と呼び、こちらも語源をひもといてみると、チャリは座席や場所を示し、ドムはタイを表す。「同じ場所から移動しないタイ」という意味があるそうだ。

 済州島では「チャリムルフェ」(スズメダイの冷や汁風刺し身)が、初夏から盛夏にかけての人気メニュー。セコシにした刺し身を、キュウリなどの生野菜とあえ、みそ、コチュジャン、酢などを混ぜた冷たいスープを注いで味わう。暑い日には氷も入れて清涼感を楽しむ。済州島の方言で「チェピ」と呼ばれる山椒(さんしょう)の葉を少量加えると香りもいっそう引き立つ。

 あるいは「チャリジョッ」と呼ばれる塩辛もおいしい。ごはんともよく合うし、ゆで豚にちょんとつけて食べてもいい。

 済州島ではちょうどこれからの時期、5月から8月にかけて旬を迎える。ちょっとひと噛みしに行ってはいかがだろうか。

 (次回は6月2日掲載予定。筆者は韓国・東国大大学院生の成川彩さんです)

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