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海峡往来真発見

優しさ出あった、海水蒸し 黒田福美

写真:ヘスチムの一室。地元の人たちと一緒に入り、和気あいあいと過ごすのも楽しみ 拡大ヘスチムの一室。地元の人たちと一緒に入り、和気あいあいと過ごすのも楽しみ

写真:黒田福美さん 拡大黒田福美さん

◇俳優・黒田福美

 韓国南西部、全羅道(チョルラ)地方の光州(クァンジュ)から西に15キロほど行ったところに咸平(ハムピョン)という海辺の町がある。観光名所などは特にないが、ここには大変珍しいお風呂がある。その名も「ヘスチム(海水蒸し)」。

 いくつかの部屋があって、それぞれにコンクリートで固められた湯船がある。体によいヨモギなどの漢方薬がつめられた袋も入っている。

 まずは、ここに海からポンプでくみ上げた海水を満たす。そこに近隣でとれる良質の硫黄を含んだ岩を松の木でカンカンに焼き上げたものを、ドボンと投入するのだ。

 その熱で海水が煮えたぎり、たちまち部屋中にもうもうたる湯気が立ち込めて真っ白になる。

 この蒸気を吸い込むのがまた体によいのだという。

 お客は準備されている作務衣のようなものを着て湯船の周りで待ち構えているわけだが、岩を投入した当座はとても熱くて入れない。まずはこの韓方薬剤と海水と硫黄の混じった蒸気にむされながら、傍らに準備された「むしろ」をお湯に浸して、肩や腰に回し掛けて温まる。

 じんわりと温かさが身に染み入って大変心地よい。

 そんなことを繰り返しているうちに、お湯が冷めて適温になってきたら、湯船につかることもできる。

 しかし、お湯はなかなか冷める気配がない。

 親しい友人同士、時には同窓会で利用するお客もあるというが、たしかにこうしてお湯を囲みながら日がな一日おしゃべりに興じるにはうってつけのところだ。

 このお湯は産後痛や皮膚病、神経痛や関節痛に効くとされ、「立てなかった人が、歩いて帰る」と言われるそうだ。

 私がこの海水蒸し風呂を見つけたのは、地方の魅力を伝えたいとあちこちを放浪しはじめた2000年代初頭であった。

 地図を眺めていて、咸平の脇に書かれた「ヘスチム」という言葉にひかれ、「一体どんなところなのだろう」と興味をもったのがきっかけだ。光州から足を延ばして、夜になって咸平に入った。

 「これから行く」という私の電話に、ご主人はちょっと困った様子をしていた。

 このようなシステムのお風呂だということを知っていたら、早い時間にゆっくりと体験したことだろう。

 ご主人は夜遅くたった一人でやってきた私に、丁寧にお風呂の説明をし、むしろを海水に浸して「こうするのだ」と私の肩に掛けてくれた。

 このダイナミックなお風呂を発見できてうれしかったが、なによりもこのご主人の親切が身に染みた。いつかここを紹介したいという思いは、数年後にかない、日本の番組でリポートすることができた。

 昨今、日韓は大荒れで、ときには私も暗澹(あんたん)たる気持ちになる。そんなときにはこのヘスチムでの出来事を思い返し、韓国の人たちの優しさを反芻(はんすう)しながら自らを鼓舞している。

 (次回の筆者は韓国・東国大大学院生の成川彩さん。2月9日の掲載を予定しています)

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