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海峡往来真発見

セウォル号遺族の葛藤描く 成川彩

写真:成川彩さん 拡大成川彩さん

写真:映画「誕生日」のポスター=NEW提供 拡大映画「誕生日」のポスター=NEW提供

 ◇韓国・東国大大学院生、成川彩

 3月、4月は、ちょっと気持ちが不安定になる。人それぞれ、過去の痛みを思い出す時期というのがあると思うが、私にとっては、2011年に東日本大震災が起きた3月と、14年に韓国でセウォル号沈没事故が起きた4月だ。実際に被災したり、事故に遭ったりした方たちとは比べ物にならないが、新聞記者として取材に携わった身で、やはり痛みは残った。

 東日本大震災の被災地を訪れたのは発生1年後。福島県で10日間、取材にあたった。私は地震が大の苦手で、少しでも揺れると顔が真っ青になるほど怖い。発生当時、若手記者が被災地に行くのは当然の流れだったが、怖くてとても行けなかった。

 その負い目を抱えながら行くと、福島の人たちはとっても温かく迎えてくれた。取材は嫌がられると想像していたので、いくらでも被災当時の話をしてくれるのは意外だった。「周りでも亡くなった人が多く、生き残った自分たちの話は、申し訳なくてできなかった」と言う。話したくても話せなかった1年を経て、せきを切ったように話してくれた。

 それとは対照的に、セウォル号事故の直後に訪れた現場近くでは、ほとんど話が聞けなかった。

 事故当日から政府の発表も報道も錯綜(さくそう)し、救助を待つ乗客の家族の多くはマスコミに不信感を募らせ、怒っていた。声をかけるだけで怒鳴られるような状況で、ゆっくり話を聞くのは極めて困難だった。

 家族らが救助の知らせを待つ体育館では、時折悲鳴や嗚咽(おえつ)が聞こえてきた。死亡が確認された瞬間だ。

 救助の知らせを期待したが、死亡確認の人数のみ増え続け、徒労感いっぱいで日本に戻った。涙も出ない自分に自分で驚いたが、その1年後、知人に当時の話をしていて涙が止まらなくなった。涙も出ないぐらいショックだったんだと、気づいた。

 セウォル号事故から5年の今年4月、遺族を描いた映画「誕生日」が韓国で公開される。配給会社によると、この事故を正面から取り上げた商業映画は初めてという。公開を前に試写を見せてもらった。

 事故で息子を亡くした夫婦をソル・ギョングとチョン・ドヨンが演じる。息子の誕生日を友達や親戚たちと一緒に祝いたいという夫と、息子の死を受け入れられない妻の葛藤が描かれている。

 イ・ジョンオン監督は実際、遺族を支援するボランティア活動を続ける中で、母親たちが、亡くなった子どもの誕生日が近づくと不安定になっていくのを感じたという。私が東日本大震災1年後に経験したように、監督も「遺族が意外に積極的に話してくれ、映画化を考えた」と話す。「まだ早いのでは」と悩みもしたが、むしろ遺族が背中を押してくれたという。

 遺族に寄り添った監督の作品を通して、5年前に聞けなかった声を聞いてみたい。

 (次回の筆者は韓国料理ライターの八田靖史さん。4月13日の掲載を予定しています)

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