朝日新聞デジタル：仮設後の生活　シェアハウスは - 福島

一歩

仮設後の生活　シェアハウスは

仮設住宅自治会の藤島昌治会長（中央奥）提案の「シェアハウス構想」について、アイデアを出し合う仮設住宅の住民たち＝南相馬市鹿島区横手

　●南相馬のお年寄りら議論

　震災５年目の仮設住宅の老朽化や入居者の高齢化が進む中、南相馬市鹿島区の仮設住宅で暮らすお年寄りらが４日、「これからの生活」を考える集まりを開いた。仮設住宅自治会長の藤島昌治さん（６９）は、高齢者数人で共同生活する「シェアハウス」の開設を提案した。

　集会呼びかけ人の藤島さんは、来春の避難指示解除をめざす同市小高区からの避難者。東京電力福島第一原発事故後、浜通りの多世代同居世帯の多くが、高齢者の１～２人暮らしと、仮設を出て都会で暮らす子育て世代に分裂・離散している傾向を指摘。

　「仮設に取り残された高齢者らは、今度は避難解除で仮設を追い出され、親しくなった隣人とも別れてしまう不安に苦しめられている」と、復興住宅への転居ではなく、シェアハウスを提案した背景を説明した。

　南相馬市内の仮設住宅は、他市町村ほど空き家率は高くないが、それでも３０団地２７８３戸の２割は空き家。入居世帯の３７％が１人暮らし、入居者４１２９人の半数が６５歳以上だ（先月末現在）。

　藤島さんの仮設でも１６４世帯のうち、藤島さんを含め６０世帯が１人暮らし。藤島さんは関東や近県に孫がいるが、原発事故以降、「孫たちが遊びに来てくれない」と寂しそうだ。

　市職員とともに宮城県内のＮＰＯ法人運営のシェアハウスを視察してきた藤島さんが提案するのは、台所や食堂、居間などの共同スペースを囲み、４～５人程度の個室があってプライバシーも守られる構造のもの。来春の避難指示解除をめざしている小高区内での開設を想定し、経費削減のために空き家を借りて改造してもいいという。

　参加者の市野沢芳枝さん（７５）は「そんなシェアハウスができたら、すぐにでも入りたい」というが、「一緒に住むのは相性のいい人じゃないとストレスになるね」と心配もする。

　●「うつにならぬ」「皆で作り食事を」

　「仮設を出ても子どもたちとは同居できず、１人で暮らさざるを得ない人にとっては最適」「うつにならなくていい」と提案を評価する声の一方で、「最期の看取りは家族以外の人の世話になるのか？」「コロリと逝くのでない限り、その前に介護施設などに移るだろう」「介護のサービスはないのか」などの議論も交わされた。

　介護サービスまで整備した場合は「グループホーム」の性格を帯びるため、法的な条件整備も必要になる。藤島さんはあくまで「自立型共同生活住宅」としてのシェアハウスをめざす。そこでは食事の準備や片付け、掃除など基本的な家事は自分たちでこなす。

　「誰かの作った食事でなく、みんなで作って楽しく食べたい」「土いじり、野菜作りのできる庭は絶対にほしい」「場所は原発２０キロ圏内の小高区ではなく原町区にしてほしい。小高だと孫は来てくれないから」などの要望も強かった。

　入居希望者のほとんどが年金生活者。入居費用や家賃を安く抑えるため、藤島さんらは先月末、建設費や運営費の公的支援を求めて市議会に陳情書を提出した。県外の支持者分も含めて約１万人分の署名も添えた。（本田雅和）

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