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高校野球2016【風雲児】

(2)崇斗と辰憲 敗北からの挑戦

写真:投球練習をする尾形崇斗。傍らでコーチの山室公志郎が見守る=石川町の学法石川 拡大投球練習をする尾形崇斗。傍らでコーチの山室公志郎が見守る=石川町の学法石川

写真:春の県大会、聖光学院戦に先発した北郷辰憲=福島市の信夫ケ丘球場 拡大春の県大会、聖光学院戦に先発した北郷辰憲=福島市の信夫ケ丘球場

 ●甲子園、そしてその先を見つめる2人の投手。傍らにはプロの世界を知るコーチがいる。

 春夏合わせて12回の甲子園出場経験がある学法石川(石川町)。6月、「闘志なき者は去れ」の横断幕が掲げられたグラウンドを日が落ちてから訪れると、フリー打撃や送球の練習をする選手たちを照明の明かりが照らしていた。

 投手陣の一人、尾形崇斗(2年)はプロ野球選手になると決めている。尾形は周囲に対し「プロになりたい」とは言わず、あえて「プロになる」と言い切る。「プロになった将来の自分から逆算して、今を過ごしている」からだという。

 エースの北郷辰憲(3年)もプロ志望だ。広野町出身の北郷は「東日本大震災で被災した故郷をプロ野球選手になって励ましたい」と語る。

 そんな2人に今年、力強い味方が加わった。プロ野球・千葉ロッテマリーンズの投手だった山室公志郎(28)だ。180センチを超す長身に、長い手足。モデルのような均整のとれた体で、選手時代は154キロの速球を投げた。桐光学園(神奈川)出身の山室だが、知人の紹介で学法石川のコーチを務めることになった。

     ■

 尾形は初めて山室に会ったときの衝撃を今でも覚えている。キャッチボールの相手をしてもらったら、軽く投げているのに球に切れと伸びがある。直球で押すタイプの尾形が山室から助言されたのは「力の抜き方を覚えたら」だった。

 「早投げ」という練習をすることにした。ボールを受け取ったら、間髪入れずにすぐ投げ込む。次第に疲れてくると、力を込めなければならない瞬間にしか力が入らなくなる。それを100球連続で、週に2、3回やってみた。最近では「疲れていなくても、力が抜けて切れのある球が投げられるようになった」と尾形は言う。

 多彩な変化球を持つ北郷が山室から教わったのは、打者との駆け引きだ。「投手寄りの足を後ろに引いた『オープンスタンス』の打者は内角が打てそうに見えるが、内角が苦手だからこの構えにした可能性が高い」「打者の苦手なコースを見極めるには、スイングを見ればいい」

 「プロはこんなふうに考えているのか」。北郷にとって、山室のひと言ひと言が刺激になった。

 上田勇仁監督(30)も「投手のことは山室に聞け」と信頼を寄せる新コーチ。普段は口数の少ない山室だが、負けん気の強い尾形に熱い一面を見せたこともあった。

 ある日、筋力トレーニングで限界まで挑んでいた尾形が自らを奮い立たせようと「プロに行きます」と声を出した。近くにいた山室がすかさず「俺についてこい」と応じたという。尾形は「ついていくだけじゃなく、追い越してやると思いましたけど」。プロで活躍することで、山室に恩返ししたいとひそかに思っている。

     ■

 今春の県大会。学法石川は準々決勝で聖光学院と対戦した。だが、北郷や尾形ら投手陣が打ち込まれ、5―14で七回コールド負け。昨秋の県大会に続き、聖光学院の壁に阻まれた。

 「プロになるには、まず甲子園。そのために、どうやったら聖光を倒せるか」。昨秋の敗戦以来、尾形は毎晩、寝る前に考え続けているという。

 福島大会を前に、尾形に聞いてみた。「答えは見つかった?」

 尾形は一段と表情を引き締めて答えてくれた。「はい。でも、勝つまでは言えません」(敬称略)

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