メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

06月24日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

新着記事一覧へ

このエントリーをはてなブックマークに追加
mixiチェック

未来へ

(3)憧れ連鎖 進路見えた

写真:高野紗月さん(前列右から2人目)や渡辺瑠奈さん(同4人目)ら「あすびと塾」の高校生たちと半谷栄寿さん(同中央)=2016年12月、南相馬市 拡大高野紗月さん(前列右から2人目)や渡辺瑠奈さん(同4人目)ら「あすびと塾」の高校生たちと半谷栄寿さん(同中央)=2016年12月、南相馬市

 ●「大学で農業経営学びたい」/福島高2年 高野紗月さん(17)・安積黎明高1年 渡辺瑠奈さん(16)

 昨年12月22日。南相馬市で開かれた「あすびと塾」は熱を帯びていた。

 福島高校2年の高野紗月さん(17)や安積黎明高校1年の渡辺瑠奈さん(16)ら9人の高校生が真剣に議論を交わす。

 高校生らにビジネスの仕組みなどを教える塾の、この日のお題は「起業」。塾を主宰する東京電力元役員の半谷栄寿さん(63)が、どうやってトマト工場を起こし、販路を開拓したかをモデルケースに、それぞれの考えを論じ合った。

 半谷さんは高校生がまとめた考えを絶賛し、激励した。「この中から必ず新しい価値を作る人が生まれる」。塾を終えた高野さんは「半谷さんはきょうも熱かった」とほおを紅潮させていた。

 高野さんは1年生の秋、学校のフィールドワークで半谷さんに出会った。大学の医学部に進みたくて高校に入ったものの、優秀な同級生たちに気後れし、やりたいことが分からなくなっていた。

 そんな時の半谷さんの話は新鮮だった。お礼のメールに思いをぶつけた。「熱い気持ちになりました。憧れの連鎖に入りたい」

 「憧れの連鎖」。起業家に憧れる若者が、自ら起業し、次の憧れの存在になっていく―。福島を担う人材を育てる半谷さんの言葉だ。

 高野さんは、あすびと塾の先輩が始めた「高校生が伝えるふくしま食べる通信」(こうふく通信)の編集部に飛び込んだ。原発事故の風評被害に悩む福島。「それでも前を向く農家を応援したい」という高校生の思いが結晶し、2015年春、こうふく通信が創刊された。

 B5判のオールカラー。年4回の発行で、20ページほどの記事の取材や執筆を10人に満たない高校生が担う。県内の食材を特集し、その食材と一緒に2500円で全国に送っている。購読者は徐々に増え、今では800人ほどに上る。

 昨年秋の第7号は須賀川市の「渡辺果樹園」の梨を特集した。編集長を務めたのは高野さんだった。

 編集部員になったばかりの頃の記事は、助っ人の大人の手が入って原形をとどめていなかった。この号でも取材は大人に手伝ってもらった。でも、6ページに及ぶメインの記事には自分の文章の大半が残っていた。

 昨夏から編集部に加わった渡辺さんは第7号の高野さんの記事に、はっとした。

 実は、渡辺果樹園は実家だ。でも、ずっと梨が嫌いだった。秋の収穫期はかまってもらえず、家族の主役の座を奪われたと感じた。「お小遣いがないと手伝いなんか無理」。将来は航空会社のキャビンアテンダントなど、農業と関係のない職業に就きたかった。

 高野さんの記事で父は語っていた。「農業をサラリーマン並みに安定して稼げる職業にする仕組みを作りたい」。こうふく通信が紹介してきた農家と同様、父も前を向いているんだと気付いた。昨年秋の収穫は進んで手伝った。父は「おまえ、意外とできんじゃん」と目を細めてくれた。

 今月下旬に出る第8号も編集長は高野さんだ。特集を川俣町のシャモに決め、町の農業振興公社と交渉して生産者を紹介してもらった。いつもは1回の取材を、今回は3回こなした。

 その行動力は編集部の全員から驚かれた。「前の自分より、もう一歩踏み込めるようになりました」と高野さん。渡辺さんは「紗月先輩は憧れの存在です」と目を輝かせる。

 2人は今、「大学で農業経営を学ぶ」という同じ進路を思い描いている。大学卒業後は詳しく決めていない。自分たちができることは広がっていくし、自分たちでも開いていけると思うからだ。

 高野さんの夢は「日本の食料自給率を上げる」ことだ。「そのために福島が先駆ける。そうしたら、東北が変わり、国も変わっていくと思うんです」

 そう言ってから恥ずかしそうに笑った高野さん。福島が先駆けるきっかけになるという決意がみなぎっていた。(鈴木剛志)

PR情報

ここから広告です

福島総局から

「福島アサヒ・コム」は朝日新聞福島版の記事から、最新のニュースや身近な話題をお伝えします。
福島総局へのメールはこちらへ

朝日新聞 福島総局 公式ツイッター

関連サイト

別ウインドウで開きます

注目コンテンツ

  • 写真

    【&BAZAAR】もう臭わせない!

    梅雨の部屋干しに

  • 写真

    【&TRAVEL】エーゲ海で見る世界一の夕日

    楽園ビーチ探訪

  • 写真

    【&M】拝見!モデルルーム

    進化するマンションの未来形

  • 写真

    【&w】ジョニー・デップが語る

    パイレーツ・オブ・カリビアン

  • 写真

    ブック・アサヒ・コム生まれ変わり続ける女性の話

    「小説巧者」佐藤正午の新刊

  • 写真

    WEBRONZA「正解の押しつけは大嫌い」

    伊礼彼方インタビュー

  • 写真

    ハフポスト日本版 地球に舞い降りた天使

    仕事中に見たら思わず手が止まってしまう子猫28連発

  • 働き方・就活

  • 転職情報 朝日求人ウェブ