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09月23日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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東日本大震災 7年

東電・国の責任検証不可欠

 ●除本理史氏・大阪市大院教授/賠償巡る問題点(上)

 8兆円に上る原発事故の賠償は、そのうち1兆円を占める精神的苦痛に対する慰謝料の支払いが3月分で終了し、避難指示の解除と歩調を合わせる形で一つの節目を迎えました。しかし、被災者の賠償をめぐる不満は、集団訴訟という形で各地で表出しています。私たちはこうした現状をどう考えたらいいのでしょうか。現行制度の問題点など、識者の意見を2回に分けて伝えます。

 ―原発賠償の問題点は

 原子力損害賠償法(原賠法)の「無過失責任」に基づいて、事故を起こした過失の検証を経ずに、東電が賠償責任を負うという方法がとられた点だ。

 迅速に救済がなされたといえるが、東電や国の責任に関する検証が不十分になっている。損害の認定も国の審査会が指針を作成し、東電が賠償の基準を作った。加害者側が賠償の枠組みを決めた側面がある。

 ●国民の懐あてに

 ―賠償の原資が電気料金などから出ている

 東電や国の責任が明確になっていないことが賠償の資金調達の仕方にも問題を生んでいる。東電は今回、水俣病のチッソと類似の仕組みで、国から資金を受けている。国は自らの責任を認めたわけではなく、資金繰りに協力するといった形だ。加害者が責任を果たしておらず、国民の懐をあてにした救済になっている。

 ただ、チッソの場合は、事実上、国からの借金。債務超過になり、企業の財務にのしかかっている。一方、東電の場合は資金交付。財務諸表上でいうと、特別利益という形で賠償金の原資が入ってきて、ほぼ同額のお金が特別損失として出て行く。つまりプラスマイナスゼロで、東電は債務超過を免れている。株主や債権者、経営者が応分の責任を負う必要がある。

 ―賠償額に対する住民の不満が強い

 避難指示の有無で、大幅な賠償の格差が生まれた。避難指示区域には賠償が比較的手厚く、区域外では非常に少ない。区域外で避難した人の中には、避難費用をまかなえない人もいる。賠償の大きさが被害の大きさに比例しているのであれば文句は出ないが、そうなっていない。

 原因は加害者側が賠償の仕組みを作ったから。賠償の仕組み自体が分断を生んでいる。改善するためには、被害の実態を正確に把握し、それに合わせた賠償の仕組みや、政策形成によって被害を救済していく必要がある。

 ●見えにくい被害

 ―今回の被害の特異性

 過去の公害事案では、まず健康被害が目に見える形で発生し、その救済が迫られた。今回は、健康被害が出ているかが論争になっており、公害の場合と異なっている。そのため、その他の被害がクローズアップされる。人々は地域で平穏に暮らしていた、その暮らしが破壊され、「命以外は全部失った」と訴える被害者もいる。

 今回の被害地域は農村的な色合いが強く、伝統的なコミュニティーのなかで住民は支えあって暮らしてきたが、避難指示などで地域社会が崩壊した。健康被害に比べて「見えにくい被害」だが、影響は深刻だ。

 ―解決の糸口は

 現在、全国で1万人以上が各地で民事訴訟を起こし、東電の元経営者たちに対する刑事裁判も始まっている。その中で、東電や国の責任が検証されていくことが大切だ。責任と賠償はリンクしており、東電や国の責任が明らかになれば、それに応じて、賠償の枠組みや政策も見直されていくはずだ。

 水俣病の裁判でもそうだが、国の責任が認定されていく過程で、政治が動き、復興政策の見直しや新たな政策の提言がなされる。そうして、裁判の原告以外の救済にもつながっていく。必要な政策を生み出していく裁判なんだ、という位置づけで注視していきたい。

(聞き手・三浦英之)

     ◇     ◇

 よけもとまさふみ 専門は環境政策論。水俣病や原発事故の賠償を調査。著書に「原発賠償を問う」「公害から福島を考える」。

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