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東日本大震災 7年

「解除後1年間」では足りぬ

写真: 拡大

 ●馬奈木厳太郎氏・生業訴訟弁護団事務局長/賠償巡る問題点(下)

 ―精神的賠償が終了した

 原子力損害賠償紛争審査会(原賠審)は、精神的苦痛に対する賠償(慰謝料)について「解除後も生活は困難で、相当期間は賠償の対象」と認め、その「相当期間」を「避難指示の解除後1年間」とした。

 だが解除すれば直ちに損害がなくなるというわけではない。国が「帰っても構わない」と言うことと、住民の損害は連動していない。損害が3月で終わるということはあり得ない。

 実際、住民の帰還には濃淡がある。線量の問題だけでなく、生活に必要な社会的インフラや、商売をやっている人にとっては商圏が戻っていない。「相当期間」が「1年間」では、期間が足りない。

●「国に責任」評価

 ―生業訴訟判決の意義

 国の責任を認めたことがまず大きい。国はこの間、「社会的責任」と言い続けてきた。それは「法的責任」を否定すること。つまり、自分たちは当事者ではなく、東京電力が一義的な責任を負い、国がそれをバックアップする、と。

 それではダメですよ、と指摘したのが昨年の判決。国が法的に責任を負うことは、救済に向けた義務を負うことを意味している。

 2点目として、原賠審はこれまで、この人は被害者、この人は被害者じゃない、と勝手に線引きし、選別してきた。判決はそれが不適当だと指摘し、救済の対象地域を拡大させ、水準を引き上げた。対象者は、福島県で150万人以上に及ぶ。彼らは救済を受ける権利を持った人たちだ。原告だけでなく、被害者全体の救済を目指している。

 ―東電賠償の問題点

 原子力損害賠償法(原賠法)はひどい法律だ。第1条で、被害者の保護と原子力事業の健全な推進をうたい、教科書的には「二つの並列した目的」と説明されるが、実際はそんな話ではない。要するに、「カネを払うから、原発をやらせろ」という法律。被害をカネで抑え込むものだ。

 我々はそれでハッピーなのか。「無過失責任」は一見、被害者に優しいように見えるが、東電は悪質かどうかを問われることもなく、結局、国の税金が投入されている。自らの財布が痛むこともなければ、良心の責め苦にさいなまれることもない。

●実態沿う救済を

 ―被害の不条理さ

 事故後は住民間に分断が持ち込まれ、被害者同士がバラバラになった。地域社会や人間関係の再構築を目指す取り組みが必要だ。

 今回の分断は「持ち込まれた」ものだ。国は最初に同心円で線を引いた。避難させるかさせないかの基準だったが、被害者かそうでないかの選別でもあった。加害者が、誰が被害者かを決め、何が損害か、賠償の期間まで決めた。

 例えて言えば、乗用車に乗っていたら後ろから追突され、後部座席の人は被害者だが、助手席の人は被害者ではない、と追突した車の運転手が言っているようなもの。さらに、後部座席の右側の人には不動産も賠償するが、左側の人には8万円だけね、と。交通事故でそれをやったら、追突された車の人は怒るはずだ。

 でも、福島では、前の座席の人と後部座席の人でいがみ合いが始まったり、後部座席の左側の人が、右側の人をうらやましいと思ったり。追突した車の人はほくそ笑んでいるのではないか。私たちは、向こうの線引きに取り込まれたり、向こうの土俵に乗ったりしてはいけない。被害の実態にあった救済がなされなければならない。(聞き手・三浦英之)

     ◇     ◇

 まなぎ・いずたろう 弁護士。「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟(生業訴訟)の弁護団事務局長

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