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戊辰戦争150年

「単純化」はならぬこと

写真:酒井忠久さん 拡大酒井忠久さん

写真:「戊辰戦争と『奥羽越』列藩同盟」の表紙 拡大「戊辰戦争と『奥羽越』列藩同盟」の表紙

 ●県外を巡って考える(下)

 山形県鶴岡市にある致道博物館館長の酒井忠久さん(72)は庄内藩酒井家18代当主だ。会津藩と軍事同盟を結び、相前後して降伏した庄内藩は敗戦後、斗南藩(現在の青森県)への移住を強いられた会津と異なり、30万両の献金という寛大な処分で済む。

 この違いは何だったのか。酒井さんは「それは西郷さんという人がいたからだ」と話す。処分が西郷隆盛の指示に基づくと受け止めている庄内では、西郷への敬愛の念は今も強い。「長州憎し」が残る会津とは、この点でも対照的だ。

 ただ、庄内藩では幕末、路線対立が高まり、「佐幕」に批判的な勢力が一掃される「丁卯の大獄」と呼ばれる事件も起きている。

 「歴史は、いろいろつらいこと、悲しいことが起きながら徐々に進んでいく。今の時代から考えて批判するのは簡単だが、時代背景を考えて、当時の人々がどんな思いで取り組んできたかを考えるのが大切だ」

 ●冷静な歴史考察が必要

 昨年10月に出版された「戊辰戦争と『奥羽越』列藩同盟」(清文堂)は、武力衝突への緊張が高まる中、米沢、仙台など各藩の藩士が京都を主舞台に「外交戦」を展開する様子を史料から読み解いた本だ。

 戦争回避に向けて会津藩を説得しようとしたり、長州と薩摩を離反させて「討薩」への流れをつくろうとしたり。しかし、福島での長州藩士・世良修蔵殺害で開戦は不可避になる。

 「もっと情報伝達が速ければ」と思うとともに、「東対西」のような単純な構図ではないと認識させられる。

 筆者は東北大学大学院文学研究科学術研究員の栗原伸一郎さん(43)。「各藩の中で、それぞれの立場の人が良かれと思って行動する。一人ひとりの選択、それが積み重なった藩の選択、苦悩を見ていきたいという思いがあった」と話した。

 会津藩については、庄内藩との軍事同盟に加え、越後の諸藩に軍事的な協力を求めていたことから「藩内で強硬論が台頭していたのではないか」と見る。ただ、他藩に比べ、史料が乏しいために十分解明されていない面もあるという。

     ◇

 高知県立高知城歴史博物館は3〜5月に、福島県内の資料も紹介する特別企画展「明治元年の日本と土佐 戊辰戦争 それぞれの信義」を開いた。その図録の冒頭には、次の文章が記されていた。

 「ややもすると、戦争の歴史は、正邪の対立、勝敗の結果といった単純化された構図で語られがちです。あるいは、裏切りや怨みといった感情論と結びついた史観によって、冷静な歴史考察が妨げられることさえあります」

 なぜ戦いに―その疑問は解けていないが、単純化してはいけないとの点は、この文章の通りだろう。

 だが、「冷静な歴史考察」のため、高知のように「相手側」の見方を紹介するような取り組みは福島県で行われているだろうか。

 会津若松市では、長く「悲劇」というわかりやすいイメージで戊辰戦争が語られ、それが観光誘客に結びつけられてきた。

 「『義』の想い つなげ未来へ」をうたう同市の戊辰150周年記念事業の事務局は、市役所の観光課が担っている。誘客に重点が置かれることで、従来のイメージが、さらに上塗りされ、固定化することにつながらないだろうか。

 歴史を真摯に探究する姿勢こそが、未来につなぐべきものだと思う。(戸松康雄)

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