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地方選【選挙を歩いて−知事選編−】

この腕で高値追求 漁師の誇り

写真:底びき船の甲板で出港を待つ菊地基文さん(左) 拡大底びき船の甲板で出港を待つ菊地基文さん(左)

写真:(左)値札が入れられたヤリイカ(右)水揚げされた魚が市場に並ぶ 拡大(左)値札が入れられたヤリイカ(右)水揚げされた魚が市場に並ぶ

写真:出港する沖合底びき船「清昭丸」=いずれも相馬市 拡大出港する沖合底びき船「清昭丸」=いずれも相馬市

 ●「風評被害の言葉 逃げなんだよな」

 根っからの漁師である。

 「俺らは海に魚とりにいってんじゃない。銭とりにいってんだ」。目がタカのようにギラリと光る。

 相馬市の松川浦漁港。小型船「東晃丸」の3代目、松下護さん(39)は若手のリーダー格で、「流し網」という漁法を駆使する数少ない漁師の1人だ。

 回遊魚をピンポイントで狙う、そんな思い切った漁法だけに難易度は高い。「ゼロか100か」のいわば大ばくちだが、とびっきりのサワラが狙えるのも、その網ならでは。

 高値の魚をどれだけとれるか。鮮度を保つため、いかに工夫できるか。単に大漁だからと喜んでいたのでは先はない。「1匹でも値段が違えば、それが100匹になると100倍の差になる」

 松川浦のある原釜地区には、威勢のいい若い漁師が多い。小型船だけでも40歳より下は70人ほどいる。

 試験操業が始まって6年。出漁は週2〜3回で魚をとれる日は限られる。生活は東京電力の賠償で保証されているが、それにぶら下がる気は毛頭ない。

 賠償は、震災前の漁獲高が基準になるが、あの時、漁獲高を増やす途上にあった彼らにとって、いつまでもそんな基準ではたまらない。もっと稼げていたはずなのだから。

 震災と原発事故後、漁協が仲買組合に魚を一括販売する「相対取引」が長らく続いた。魚価は一律だ。

 昨年春に魚市場での競り・入札が復活。漁師の努力が、値段という結果として帰ってくるようになった。水揚げ量はまだ震災前の2割ほどだが、漁師としての腕が鳴る。

     ○

 福島の漁業にはまだまだ課題が多い。その一つが流通先を増やして高値で売ることだ。仲買人も減り、震災前のような量をさばけない。大量に水揚げしても値崩れするため、量を抑えるしかないのが現状だ。

 原釜地区の沖合底びき船「清昭丸」の4代目、菊地基文さん(42)の気掛かりもやはり魚価だ。

 高値で買ってもらえるよう、各地の料理人と関係を築き、仲買人につなぐ。船では魚の「神経締め」で鮮度を保持する。新たな加工品もつくった。魚介類と一緒に送る情報誌も発行している。福島の漁師渡世は波まかせとはいかないのだ。

 風評は確かにある。ただ、「風評被害って便利な言葉だなって思う時がある。逃げなんだよな。それを使っておけば、他に意見を言う必要ないみたいな」。

 政治や行政に何か期待しますか。そんな質問に菊地さんはこう答えた。「人に頼るのが駄目ってわけじゃないけど、個人レベルで強くならないとね」

 2人に会った日の夜、私は出漁間際の底びき船を港で見つめた。甲板の乗組員たちは手際よく準備し、言葉ひとつ交わさず黙々と作業を進める。原発事故という理不尽に、なりわいを持って克ちに行く人々だ。

 真っ暗な海へ船が進み出た。エンジン音を残し、明かりが消えていった。

 無事であれ。漁運あれ。(杉村和将)

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