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地方選【福島の針路 2018知事選】

戻らぬ医療環境7年過ぎても

写真:災害公営住宅に住むお年寄り(手前)を往診する井坂晶院長(左から2人目)=富岡町 拡大災害公営住宅に住むお年寄り(手前)を往診する井坂晶院長(左から2人目)=富岡町

 ●「必要なのは人材 柔軟な施策を」

 10月上旬、平日の昼下がり。手に包帯を巻いた高齢の男性。杖をついたお年寄りの女性。作業着姿の中年の男性。ソファが並ぶ小さな待合室には、2時間ほどの間、ひっきりなしに患者が訪れた。

 昨年春に原発事故に伴う避難指示が一部解除された富岡町。JR富岡駅近くの診療所「富岡中央医院」は解除直後に再開業した。

 「爪、治って良かったですね」。診察室で井坂晶院長(78)が患者の男性に笑顔で話しかける。「通ったかいがありました」。男性の声も明るい。

 丁寧さが信条だ。患者の訴えに耳を傾け、検査や診察が終われば、「気をつけて帰ってね」と入り口まで送り出すこともある。

 そんな井坂院長が困り顔で嘆いた。「ない、ない、ない。元避難指示区域の医療は、まだまだないない尽くしですよ」。そして続けた。「何せ人が足りない。だから医療機関も事故前のようには戻らない」

 県の集計では、避難指示が出た12市町村の医療機関は原発事故前に100あったものの8月現在でわずか31。

 大きな要因は医療人材が戻らないことだ。

 県のまとめでは、相双エリアの医師は、2010年に236人だったのが、12年には144人になり、16年でも160人。看護師や保健師らは、10年2051人、12年1173人、16年1308人と推移している。

     ○

 地域医療の構築は、医療法で都道府県が責任を負うと定める。「県は浜通りの医療復興に力を入れています」。県地域医療課の吾妻正明・副課長は説明する。

 県は医療機関の人件費や運営費に対し、国の地域医療再生臨時特例交付金を原資にした補助金を出している。その多くが浜通りの医療体制整備向けだ。

 18年度の当初予算では、同課所管の約135億円のうち約95億円が浜通りに絞った事業だ。だが、多くの予算が投じられ、震災と原発事故から7年7カ月という歳月が過ぎてもなお、浜通りの厳しい医療環境は続く。

 交付金は、国の「復興・創生期間」の最終年度の20年度まで使えるが、その先は未定。予算が先細りした時の打開策は、どこにも見当たらない。

 かつて3世代同居が多かった富岡町だが避難指示解除後は、子育て世代は避難先での生活が安定し、帰還住民は高齢者が中心だ。

 井坂院長は毎週木曜日、自らハンドルを握って往診に行く。月に1度は、避難時に診療所を開いていた大玉村に片道2時間かけて往診する。「いま、富岡で一番必要なのは、訪問してくれる人。家を訪ねて服薬管理する薬剤師さんがいてくれるだけで、相当助かる」

 富岡町では薬局の新設を目指し、県が支援して、町や地域医師会などでつくる協議会での議論が昨年12月に始まった。だが、同様に議論する飯舘村では、今月2日まで開業を希望する業者を公募したが、応募はゼロ。富岡町でも見通しは甘くない。

 震災前には引退を考えていたという井坂院長は「開業していた者としては、地域に医療を提供しなければいけないから」と腹をくくっている。

 医師や薬剤師らが一緒に医療にあたる総合的な拠点をつくるべきだと考えている井坂院長は「県も行政の縦割りを超えた柔軟な施策に乗り出してほしい」と強く訴えた。(奥村輝)

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