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人に食あり 食に人あり

(5)給食に籠城食 先人思う

写真:担任の先生の説明を聞きながら籠城食を味わう3年生の児童たち=謹教小学校(同校提供) 拡大担任の先生の説明を聞きながら籠城食を味わう3年生の児童たち=謹教小学校(同校提供)

写真:籠城食のパネルを示す平出美穂子さん=いずれも会津若松市 拡大籠城食のパネルを示す平出美穂子さん=いずれも会津若松市

 ●会津若松の学校 戊辰を再現

 その珍しい響きの給食を知ったのは昨年11月、食育の取材で福島県会津若松市の市立一箕(いっ・き)小学校を訪ねた時だった。栄養教諭の二瓶美智子さん(60)が年間の献立を説明する中で「9月に『籠城(ろう・じょう)食』を出しました」とさらりと話した。

 献立は南瓜(かぼ・ちゃ)と大豆のみそあえ、玄米ごはん、じゃがいものみそ汁、大根の香り漬け。1868年の戊辰戦争で会津藩は9月22日に降伏するまで、約1カ月間の籠城戦を強いられた。その時に城内で作られた食事を再現したものだという。

 「他の学校でもやっていますよ」との二瓶さんの言葉を受けて市教育委員会に尋ねたところ、昨年9月に30の市立小中学校のうち、26校で提供されていた。会津若松の子どもたちにはおなじみの献立だということを、恥ずかしながら知らなかった。

 学校によってメニューに若干の違いはあるが、南瓜と大豆をみそ味で煮た料理はほぼ共通する。

 どうして籠城食が給食に取り入れられたのか。まず発案者である食文化研究家の平出美穂子さん(72)に会って、話を聞くことにした。

 平出さんは2007年に市内で開かれた地産地消を推進する会議で提案していた。その際に参考にしたのが、会津藩士の家族で、籠城戦のまっただ中で働いた間瀬みつさんの回顧録「戊辰後雑記」。食材が不足する中、大豆、南瓜をみそで煮ていた、との記述を見つけ、伝統野菜の会津小菊南瓜を使って再現しようと考えたという。

 平出さんは「会津若松の子どもたちに、籠城の時はどんなだったか、どんなものを食べていたのかを知ってもらいたかった」と振り返る。この年に鶴ケ城に近い鶴城小と謹教(きん・きょう)小から始まり、他の学校に広まった。

 それにしても、当時、敵の包囲の中でどうやって食材を入手したのだろう。

 戊辰戦争を研究する元会津図書館長の野口信一さん(69)に尋ねると、「新政府軍は城の中の会津藩士が脱落できるよう、南側の天神橋口、1カ所だけ開けていた。戦意を喪失させるための戦術だ」と教えられた。この道を使って、命がけで兵士が食糧調達に出たり、篤志家の農家が野菜を届けたりしたという。

 城の中にいたのは藩士や、その家族ら約5千人。屋外にかまどをつくって、女性たちが一日中炊事をしていた。野口さんは「砲弾が飛んでくる中での仕事。こちらも命がけだったはずだ」と指摘した。

 教室の様子を知ろうと、「先駆け」の2校のうち、謹教小を訪ねた。

 昨年は9月11日から14日までの4日間を「会津の歴史を学ぶ給食週間」と呼び、籠城食のほか、旧藩士の移住先・斗南藩ゆかりの青森県むつ市の料理などを出していた。

 給食の時間には、学級担任だけでなく、栄養士の菊地美恵子さん(58)が教室を回り、食材や調理の工夫について説明する。材料の会津小菊南瓜は、地域の伝統野菜づくりに取り組む長谷川純一さん(48)と会津農林高校の生徒が栽培したものだ。長谷川さんは「大人になって都会に出たり、海外に行ったりしても、地元の野菜の味を覚えていて欲しい」との思いを込めたという。

 山本靖(おさむ)校長は「戊辰戦争の歴史を教えるというと、『戦い』に焦点が当てられてしまいがちだが、当時の人たちに思いをはせることが大事だ。食べ物を通じて歴史に触れることで、子どもたちは当時の人々の気持ちをつかめるのではないか」と話していた。

     ◇     ◇

 給食による籠城食の発案者、平出美穂子さんは「郷土食を今、一般家庭に求めるのは難しい。食文化を伝えるのは学校給食なんです」と話した。

 確かに給食の味は記憶に残る。揚げパンとソフトめんが出た時のうれしさは、半世紀近くを経た今でも、懐かしい思い出だ。「9月になれば籠城食」との経験を積む会津若松市の子どもたちは、どう感じるのだろうか。大人になってから改めて話を聞いてみたい。(戸松康雄)

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