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人に食あり 食に人あり

(6)虐殺・震災 分かち合う一杯

写真:ルワンダコーヒーを入れるマリールイズさん=福島市 拡大ルワンダコーヒーを入れるマリールイズさん=福島市

写真:博物館に展示されている、虐殺された子どもたちの写真=2016年2月、ルワンダの首都キガリ、三浦英之撮影 拡大博物館に展示されている、虐殺された子どもたちの写真=2016年2月、ルワンダの首都キガリ、三浦英之撮影

 ●ルワンダコーヒー 被災者に

 熱湯を注ぐと、真っ白な蒸気と懐かしい香りが部屋いっぱいに広がった。

 風味豊かなルワンダ産のコーヒー。福島市のNPO「ルワンダの教育を考える会」の代表で、ルワンダ出身の永遠瑠(と・わ・り)マリールイズさん(53)は「良い香りでしょ。ルワンダはとってもおいしい豆が採れるのよ」と笑顔で言った。

 赤道近くにあるにもかかわらず、国土の大部分が標高千メートルを超えるため、長野県のように冷涼な気候に恵まれたアフリカの内陸国・ルワンダ(人口約1200万人)。四国を一回り大きくしたような小国を、私が取材で訪れたのは2016年だった。

 コーヒー豆の取材ではない。1994年4月に起きたジェノサイド(集団虐殺)の取材だ。世界各地で分断や対立が続く中、集団虐殺から約20年を経た同国が悲劇をどのように総括しているのか、見たかった。

 62年にベルギーから独立する前から、同国内で暮らす多数派民族と少数派民族が対立。94年4月、大統領の暗殺をきっかけに、多数派民族が少数派民族の虐殺に乗り出した。「ゴキブリを殺せ」などとラジオにあおられ、住民は身近な農機具などを使い、隣人を次々と殺害していった。約100日間で殺された住民は80万人以上と言われている。

 マリールイズさんは、当時の様子を知る生き証人の1人だ。首都キガリで洋裁の教員をしていた彼女は93年4月、日本の青年海外協力隊との交流により日本に留学。須賀川市などでホームステイをした後、94年2月にルワンダに帰国した。

 その2カ月後、集団虐殺の現場に遭遇する。道路を埋め尽くす無数の遺体に「何も考えることができなくなった」と振り返る。

 隣国のザイール(現コンゴ民主共和国)に逃れ、94年12月再来日。福島市内で暮らしていたところ、2011年3月、東日本大震災に伴う原発事故が発生した。

 「私が生まれて初めて海を見たのは、留学時代に訪れた浪江町の請戸海岸でした。その『海』に行けなくなるなんて、夢にも思いませんでした」

 震災後に日本国籍を取得。今も県内各地の仮設住宅などを回り、被災者にルワンダコーヒーを振る舞いながら、お互いの「経験」を分かち合う取り組みを続けている。

 「大切なのは、過去に起きたことを恨まないこと。過去は過去として受け止め、今をしっかりと生きていなければと思うのです」

 今はルワンダから輸入したコーヒーや紅茶をイベントなどで販売し、集めたお金を遠く離れた祖国に送って、若者たちが教育を受けられるようにする活動を続けている。

 マリールイズさんの夢は大きい。「ルワンダ人の若者も、福島県の若者も、辛い経験をした。いつか両者が手を取り合って互いの過去を共有し、未来に向かってより良い社会を築けるようなきっかけ作りをしたい」

 ルワンダコーヒーはその架け橋になれる。そう信じている。

     ◇      ◇

 ルワンダでは当時の記憶を語り継ごうと、各地に博物館が設置されている。500人が閉じ込められ、火がつけられた教会の跡地。虐殺された子どもたちの写真が貼られた展示もある。

 私はマリールイズさんが注いでくれたコーヒーを飲みながら、「あなたは多数派民族と少数派民族のどちらだったのですか」と尋ねた。彼女は「どちらでもありません。私はルワンダ人です」と答えた。民族同士が憎しみあい、殺し合う過ちはもう繰り返したくない。そんな意思表示であるように私には聞こえた。 (三浦英之)

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