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03月27日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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記者報告

養蚕業再生へ 本腰の富岡市

写真:繭の出荷作業。安中市の製糸工場などに持ち込んでいるが、富岡製糸場で自動繰糸機が動き出すと場内で製糸される見通しだ=2014年6月、富岡市富岡 拡大繭の出荷作業。安中市の製糸工場などに持ち込んでいるが、富岡製糸場で自動繰糸機が動き出すと場内で製糸される見通しだ=2014年6月、富岡市富岡

写真:妙義山のふもとの地域養蚕場を観光拠点にしたいと意欲をみせる掛川利男さん=富岡市妙義町菅原 拡大妙義山のふもとの地域養蚕場を観光拠点にしたいと意欲をみせる掛川利男さん=富岡市妙義町菅原

写真:繰糸場で保存されている自動繰糸機。これと同型の機械が動態展示施設で動かされ、糸を引く予定だ=富岡製糸場 拡大繰糸場で保存されている自動繰糸機。これと同型の機械が動態展示施設で動かされ、糸を引く予定だ=富岡製糸場

 世界文化遺産の富岡製糸場がある富岡市は、養蚕業の再生に本腰を入れ始めた。減り続ける農家に代わる担い手を育て、富岡産の繭を増産し、製糸場で再び繰糸機を動かして糸を引く。その糸で富岡ブランドのシルク製品を作り続けるのが目標だ。

 ◆農家12戸に減 平均77歳

 日本の養蚕業は衰退の一途をたどっている。富岡製糸場に観光客が集まる富岡市も例外ではない。

 市農政課によると、養蚕農家は1968年の約3千戸をピークに減り続け、現在は12戸。平均年齢は77歳を超える。化学繊維の普及や和装離れに加え、中国などの安い輸入品におされた。後継者がいるのは1戸だけだ。

 昨年の生産量が約1400キロと市内で最も多い金井一男さん(75)も「世界遺産登録まで、と夫婦でがんばってきた。登録で繭の需要が増え、何とか続けているが、年だから明日のことはわからない」。

 蚕室には自動で温度管理するヒーターを取り付けているが、晩秋の寒い日は、蚕の様子が心配で寝る前に見に行く。作業は重労働で、餌の桑畑の管理も手間がかかる。「年寄りの稼ぎにはなるが、若い人には、いまの価格でも足りないだろう」

 富岡市は、県や大日本蚕糸会の補助金に独自の上積みをして、2015年度は農家からの買い取り価格を1キロ4千円とし、14年度の3千円から引き上げた。今年度は品質に応じて4千〜4400円で買い取る。

 それでも、高水準の千キロを生産しても売り上げは400万円余り。光熱費や稚蚕の購入代などがかかり、天候にも左右される養蚕業は、若者が集まる状況にはない。

 ◆観光絡め活性化に期待

 そこで市が新たな担い手と期待するのが、団体養蚕と企業養蚕、そして養蚕をやめた農家の復業だ。

 市内では昨年から、「菅原養蚕組合」と、地域づくりに取り組むNPO法人「ふれあいパーク岡成」の2団体が養蚕を始めた。

 菅原養蚕組合は、妙義山のふもとの妙義町菅原地区の住民団体。かつて蚕の卵を孵化(ふ・か)させ、農家に小さな蚕を提供した「稚蚕共同飼育所」の建物を生かして、養蚕と観光による地域活性化をめざしている。

 建物は県道沿いにあり、大型バスも駐車できる。上信越自動車道松井田妙義インター、軽井沢町、妙義青少年自然の家など観光関連施設に近い。

 昭和の終わりごろまで飼育所の飼育主任をしていた組合代表の掛川利男さん(71)は「地の利を生かして観光を結びつけ、子どもらに養蚕を見せたい。農産物の販売や、古い農具の展示もしたい」と意気込む。

 市への提案が通り、3月までに建物が改修され、養蚕の温度管理に欠かせない温風器も今月設置された。昨年約50キロだった繭の生産量を、今年は100キロに増やす方針だ。

 企業も動き出した。富岡製糸場近くでシルク成分を配合した化粧品やせっけんを製造・販売する「絹工房」は、シイタケ小屋跡を改造して昨年夏から養蚕を始めた。「いずれ繭が手に入らなくなるかもしれない。それなら自分で作らないと」と、創業者で顧問の米満正和さん(66)は話す。

 店売り以上に通信販売が伸びているという。昨年250キロだった繭の生産量を今年は800キロ、3年後に2トンにするのが目標だ。

 「富岡産にこだわり、ブランドをとんがらせないと、うちの商品の物語が成り立たない」

 市は昨年度、市内11カ所に計1ヘクタールの桑畑を確保した。主に家庭で蚕を飼う市民向けだが、養蚕をやめた多くの農家に、少量生産の再開を促す狙いもある。

 市によると、買い取り価格が上がるなか、「餌の桑があれば、こづかいかせぎにやってみたい」との声が寄せられているという。養蚕農家は年に数回飼育するが、1回でも飼う農家が増えれば、「養蚕のある風景が広がる」と市の担当者は期待する。

 ◆質高めブランド化狙う

 国宝でもある富岡製糸場の繰糸場は、1987年に操業を停止した片倉工業時代の自動繰糸機が止まったままの状態で公開されている。市は、場内の別の場所に動態展示施設をつくり、繰糸場と同型の自動繰糸機を動かし、富岡産の繭から糸を引く計画を進めている。施設は今年秋にも着工し、来年中に公開したい考えだ。

 見学者の満足度を高める観光面の効果とともに、世界遺産で富岡産の糸を取るという新たな価値を生み出す狙いだ。今年から、富岡シルクブランド協議会が公募、認証した製品を作る事業者に富岡産の繭や糸を販売し、「富岡シルク」のマークを交付する。

 自動繰糸機で一年中、糸を引くには原料の繭が必要だ。昨年約5トンだった市内の繭の生産量を、市は3年後に10トン程度まで増やしたい考えだ。

 市内の農家が生産した繭は現在、ほとんどが安中市の碓氷製糸農協に運ばれている。富岡製糸場内に動態展示施設が完成し、そこで繭から糸を生産するようになれば、純粋な「富岡産生糸」としてブランド価値が高まると期待される。

 岩井賢太郎市長は「製糸場が世界遺産になった富岡地域から養蚕を絶やしてはいけない。質の高い繭を増産し、繭を作った人から生地にした会社まで顔が見えるようにしたい」と話す。

 始まった団体養蚕や企業養蚕の生産量はまだ少ない。市が描くように養蚕業の復興が進むかどうかは未知数だ。とはいえ、新たな担い手の参入や買い上げ価格の引き上げ効果で、減り続けていた市内の繭の生産量は昨年、久々に増加に転じた。(遠藤雄二)

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