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記者報告

建前は実習生 本音は担い手

写真:中沢睦一さん 拡大中沢睦一さん

写真:収穫作業にあたる実習生ら 拡大収穫作業にあたる実習生ら

写真:実習生3人が寝泊まりする部屋=いずれも昭和村糸井 拡大実習生3人が寝泊まりする部屋=いずれも昭和村糸井

 農業県群馬はいま、中国や東南アジアからの外国人に支えられている。農家の数が減り続ける一方、担い手不足を外国人が肩代わりしている。その多くは外国人技能実習制度で、技術を学ぶ建前で来日した実習生たちだ。

■受け入れ先の農家 やる気維持に腐心

 赤城山の山裾に広がり、耕地面積が村の4割弱を占める昭和村。多くの技能実習生が農場で働いている。小松菜やホウレン草を栽培する同村糸井の中沢睦一さん(63)は1990年代前半から中国人の実習生を受け入れてきた。

 現在は中沢さんの一家3人と従業員6人、20〜40代の実習生9人が働く。「実習生は貴重な戦力。若い人の力は違う」と中沢さん。

 9月中旬、小松菜の収穫が最盛期を迎えていた。従業員や実習生が黙々と鎌で小松菜を刈り取っていく。その場で機械を使って袋に入れ、段ボールに詰める。多い日は一日段ボール600箱分を収穫し、関東地方を中心に出荷している。

 この農場は戦後間もなく入植した中沢さんの父親が開墾した。中国人を受け入れるようになった90年代から大規模化を進め、隣接する渋川市や前橋市にも農場を広げた。現在は合計18ヘクタールほどの農地がある。

 標高が昭和村より低い前橋市や渋川市の農場では冬も野菜を栽培でき、実習生は年間を通じて働ける。昨年の売上高は約1億3千万円。中沢さんは「この地域は貧しい農家も多かったが、外国人を受け入れるようになってずいぶん変わった」と話す。

 中沢さんは毎年3人を監理団体のJA利根沼田を通じて受け入れている。9割近くは3年間滞在するが、仕事が合わないなどの理由で数カ月で帰国してしまう人もいる。2011年の東京電力福島第一原発事故の際には数人が去った。

 いかに3年間やる気を保ってもらえるかに腐心するという。買い物や外食、地元の祭りなどに連れて行くことも。一方で、お互いが疲れないためには「適度な距離も必要」という。

 実習生は農場内で寮生活をしている。中国人同士で生活しているため、日本語を話せるようになる人は少ない。必要があれば漢字を紙に書いたり、スマートフォンの翻訳機能を使ったりしてやり取りする。

 実習生の本来の目的は、習得した技術を母国で生かすことだが、実際に中国に戻って農業を続ける人は少ない。中沢さんは「実習生とは言うものの、実際には労働者だ」とも漏らす。

 JA利根沼田を通じた実習生は現在、中国人とカンボジア人約250人。80ほどの農家が受け入れ、最低賃金より14円高い時給797円で働いている。担当者は「日本人を雇っても途中で辞めてしまう心配がある。実習生は、最低賃金に近い給料でも一定期間は確実に働いてくれるという安心感があるのではないか」と説明する。

■増える従事者 細る就業者

 県内の農業分野の外国人技能実習生は増加傾向にある。群馬労働局のまとめによると、2017年10月末現在、農林業に従事する外国人労働者は962人。このうちの多くが実習生とみられるという。549人だった12年から5年間で約1・8倍にまで増加。農林業で外国人労働者を受け入れている事業所数も1・5倍の270に増えた。

 農林水産省によると、17年10月の時点で全国の農業実習生は約2万4千人。12年10月から約1・7倍に増え、県内と同じ傾向だ。

 一方で、農業の担い手の減少と高齢化は進む。農水省の調べでは、県内の農業就業者は1995年には約9万8千人いたが、20年で半分以下の約4万4千人にまで落ち込んだ。農業就業者の平均年齢は59・7歳から66・3歳に上がっている。

◇覚醒剤・失踪…トラブル続く/「現状に追いつかず」制度自体に苦言も

 実習生が絡むトラブルもある。

 今春、昭和村や沼田市のタイ人の農業実習生7人が覚醒剤の輸入や使用、所持などで逮捕される事件があった。2人は不起訴だったが、5人が裁判にかけられ、有罪判決を言い渡された。タイに帰国した元実習生から覚醒剤を密輸し、仲間内で売り買いしていたという。懲役3年執行猶予5年の判決を受けたタイ人の1人は、来日前から覚醒剤を使用。興奮する効果を利用して、「もっと仕事の量を増やし、いい給料をもらいたかった」などと述べた。

 このタイ人を受け入れていた農園の代表者は「運転免許を取得するなど、日本語もできて優秀だった。家族のように接してきたのでショックだった」と嘆く。同じ出身国の実習生同士が農場を超えてSNSを通じて交流していることもあるといい、「いい情報も悪い情報もすぐ手に入る環境にある」と話す。

 失踪するケースも後を絶たない。約250人の実習生の受け入れ窓口になっているJA利根沼田では、毎年数人程度が失踪。複数人で行方をくらますこともあり、失踪者が10人程度の年もあるという。

 法務省入国管理局によると、2016年は全国で約5千人の外国人技能実習生が失踪。12年と比べると、2・5倍に急増した。不法滞在や不法就労などの捜査を行う県警外事課の担当者は「SNSなどで『もっと給料の高い仕事がある』などと甘い言葉で誘うブローカーがいる。人手不足で、失踪した実習生と分かっていても雇ってしまう業者もいる」と説明する。

 外国人の人権問題に取り組む下山順弁護士(群馬弁護士会)は、「来日前に思い描いていた生活と違うと感じる実習生も多い。失踪して在留資格を失えば、より弱い立場になり、過酷な状況で働かざるを得なくなる場合もある」と指摘する。

 技能実習制度そのものに苦言を呈す。「労働力を必要として実習生を受け入れているのが現実。それならば、日本に定住できる道も拡大すべきではないか。現状に制度が追いついていない」(森岡航平)

◆キーマーク

「外国人技能実習制度」

1993年に途上国の「人づくり」に協力する目的で始まった。建設業や食品製造業、介護など77の職種が対象で、農業は2000年に加わった。監理団体が実習先の紹介や実習状況の監査を担う。

 17年11月に新法が施行され、優良な監理団体が受け入れる実習生は実習期間が最長3年から5年に延びた。17年末現在で全国に約27万4千人。県内には約7500人の技能実習生がいる。法務省入国管理局のまとめでは、17年は213の監理団体や企業などで賃金不払いや長時間労働といった違法行為が確認されるなど、実態は安価な臨時労働者確保だとの批判が根強い。

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