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平和・ヒロシマ【ともに。 被爆70年の夏】

8時15分 今日もつく鐘

写真:鐘をつく亀尾泰弘さん=広島市南区比治山町 拡大鐘をつく亀尾泰弘さん=広島市南区比治山町

 ◇多聞院副住職、亀尾泰弘さん(32)

 広島市南区比治山町の多聞院の鐘は、66年間毎日、原爆投下時刻の午前8時15分に鳴らされてきた。僧侶の亀尾泰弘(たい・こう)さん(32)は、被爆者の鎮魂と平和を願って曽祖父が造ったこの鐘を、2008年から毎朝ついている。「鐘の音を聞き、時計の時刻を見て、70年前、いつもと同じはずの朝に突然原爆が落ちたことを感じてほしい」と言う。

 「ゴーン。ゴーン」。午前8時15分、重厚な音が通勤、通学の人々が歩く京橋川沿いに10回響く。鐘は原爆の爆風ではりや天井がひび割れた鐘楼につるされ、広島の三角州と観音菩薩(ぼ・さつ)の絵、平和を願う七言絶句の詩、「ノーモア ヒロシマ」という英文などが彫られている。

 多聞院は爆心地から約1・7キロ。本堂や庫裏(く・り)が爆風で壊れたが、焼失は免れ、被爆当日の夕方、倒壊した県庁に代わって一時的に県防空本部となった。泰弘さんの曽祖父で住職だった亀尾宥賢(ゆう・けん)さん(故人)と、「広島陸軍被服支廠(し・しょう)」(現・南区)で被爆した祖父の融照(ゆう・しょう)さん(86)は焼け野原を歩き、遺体にお経を上げて回ったという。

 鐘は4年後の1949年に造られた。宥賢さんが鐘に込めた思いは、8月にあった落成法要で読んだ願文(がん・もん)に残されている。

 「歳月流れてすでに4年。復興は進むが、大事業の底には悲劇を忘れない一念が流れていなければいけません。霊の声、アメリカの声、広島市民の声を束ねて毎朝鳴り響くことで、平和の心を持つことができるでしょう」

 泰弘さんが生まれた時、宥賢さんはすでに世を去っていた。融照さんはほとんど体験を語ることはない。だが、地元の市立段原小学校は多聞院で平和学習をする。特別な鐘だと学んだ。

 京都市内の大学や高野山で学んだ後、寺を継ぐため、08年に広島に戻った。毎朝鐘をつき、鐘や寺の歴史を案内するよう言われ、「若い僧が原爆を伝えていってほしい」という意味だと受け止めた。それから、檀家(だん・か)を回る際、被爆体験を尋ねることにした。

 「姉が爆心地の近くに勤労奉仕に出かけて亡くなったんです」と語る男性。「あんなものは地獄ですから」と言って口を閉ざす女性。被爆者の思いにじかに触れ、鐘をつく意味を深く理解した。

 鐘は、寺を訪ねてきた人にもついてもらっている。数年前、朝、鐘楼に行くと、近所の男性が幼い息子を連れて「これがいつも鳴っている鐘だよ」と教えていた。泰弘さんは鐘の歴史を説明し、男の子に鐘をついてもらった。「この鐘をつくことで、『ノーモア・ヒロシマ』というメッセージを心に宿してほしい」と言う。

 原爆記念八時鐘(げん・ばく・き・ねん・はち・じ・しょう) 梵音無礙遍十方(ぼん・のん・む・げ・へん・じっ・ぽう) 驚覚衆生長眠夢(きょう・がく・しゅ・じょう・ちょう・みん・む) 實現寂光平和郷(じつ・げん・じゃっ・こう・へい・わ・きょう)(原爆を記念する鐘の音が一帯に広がり、長い夢を見ている人々を目覚めさせ、光差す平和の郷を実現させる)

 自らが鐘をつく時は、鐘に刻まれたこの七言絶句を唱え、手を合わせている。「詩が表現するように、鐘の音に込められた平和への願いが、人々の胸に届いてほしい」と話す。(根津弥)

 広島市南区出身。市立基町高校を卒業後、龍谷大学文学部に進学した。高野山での修行を経て、同大学院で仏教の「加持」という概念を研究した。

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