メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

12月09日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

新着記事一覧へ

このエントリーをはてなブックマークに追加

地方から未来へ【第7部・持続可能な未来へ】

地域づくりのモデルに(島根県海士町):上

写真: 拡大

写真: 拡大

写真:島根県海士町の大江和彦町長 拡大島根県海士町の大江和彦町長

 ◇合併拒み 自立に挑戦

 日本海の隠岐諸島にある島根県海士(あま)町は、合併を拒み自立に挑戦し続ける姿から、地域づくりのモデルになっている。全国から「島留学」の生徒がやってくる県立隠岐島前(どうぜん)高校や、島ぐるみで特産品に育て上げた岩ガキや隠岐牛の生産現場などを訪ね、持続可能な地域づくりについて探った。(清水康志)

 ■「島留学」で生徒数倍増 隠岐島前高

 「色んな人と出会うことができる。地域や人ともっとかかわり、成長したいんです」

海士町から600キロも離れた横浜市から「島留学」した1年の鈴木優太さん(16)は、寮の仲間と福祉施設でマルシェを開いたり、島外からの視察団の案内役をしたりして、充実した生活を送る。

 「島親」との交流も支えになっている。故郷を遠く離れた生徒を地元の大人が温かく見守る仕組みで、鈴木さんの場合は民宿を営む夫婦が担ってくれている。

 同校は2010年度から、島留学の募集を始めた。これが実を結び、一時90人を切った生徒数が約180人に倍増している=グラフ参照。きっかけは10年ほど前、生徒減少による統廃合話が持ち上がったことだった。同校は3島3町村(海士町、西ノ島町、知夫村)からなる島前地域唯一の高校。少子化に加えて、大学受験や部活動を理由に島外の高校を選ぶ子もいるため、生徒は減り続け、08年度の入学者はたったの28人だった。

 廃校になれば島の子どもたちは自宅から高校に通えなくなり、中学卒業と同時に島を離れてしまう。そればかりか親も一緒に島を出て、島の衰退が加速しかねない。

 そこで08年、地元の3町村長や中学校長、同校の校長やPTA会長らによる「隠岐島前高校の魅力化と永遠の発展の会」が発足した。カリキュラムの改善や「島留学」の創設、公立塾の開設などの「魅力化」を推し進めた。

 同校の学びの特色は、海外研修など積極的な国際交流活動のほか、地元や島外地域と連携した多彩なキャリア教育を続けていることだ。

 地域課題に取り組む「夢探究」もその一つ。昨年12月にあった1年生の授業では、4人1組のチームに分かれ、2年生時に全員が参加するシンガポール研修(11月)で発表するための準備を早くも始めていた。

 島前3島を結ぶ船便について、「欠航の時が分かりにくい」として話し合いを始めるチームがある一方、課題を見つけられず困惑した表情を見せるチームも。指導教諭はその様子を見守り、「指示はしないけど、ヒントはあげるよ。壁にぶつかってもチームで頑張ってくださいね」と呼びかけていた。大阪府出身の小西未華(みいな)さん(16)は授業後、「地域に出て色んな人に会い、自分で考えて行動する力をつけたい」と話した。

 ■夢と学力育む公立塾

 隠岐島前高校に島内外から生徒を引き付ける役割を担っているのが、公立塾「隠岐國(おきのくに)学習センター」だ。2010年に開所した。

 月曜〜土曜に開館し、授業がない日も自習用に利用できる。スタッフは企業研修の講師や研究者、青年海外協力隊員の経験者ら。月謝は1万円(3年生1万2千円)に抑えられ、生徒の7〜8割が通ってくる。

 学力に幅があるため、授業は講義形式や個別学習形式を織り交ぜている。さらに、自分の興味や夢を確かめる「夢ゼミ」を、年間を通じて開講している。

 昨年12月にあった1年生の「夢ゼミ」には13人が参加し、二つのチームに分かれて、「将来、自立・協働・協調できる自分になるためのアウトプット作り」に取り組んだ。活発に意見を交わし、議論する様子を録画して、上映会を開く案などをホワイトボードに書き出していた。

 センター長の豊田庄吾さん(45)がタイミングを見て助言していく。「問いかけて自分の考えを表現させ、実践しながら学ばせたい」と話す。

 福岡県出身で、大学卒業後にリクルート関連会社や研修会社を経て、09年に島に移住した。給料は半減したが、「島の人が本気で子どもたちの教育に取り組もうとする姿を見て、一緒にやりたいと思った」という。

 それから10年。学力は底上げされて大学進学率が4〜5割に上昇し、難関校への合格も。同校の評価は高まり、島前地域の中学校から入学する割合も08年度の5割弱から、8割程度にまで回復した。島留学の生徒たちの中にも、「ここが故郷。また戻ってきたい」などと言ってくれる子が増えているという。

 豊田さんは「高校が存続していても、地域がつぶれては意味がない。持続的な学校と地域をつくるため、教育で何ができるかを探求し、この島で仲間と一緒に未来をつくっていきたい」と語る。

 ■伝統継承「半官半X」や「人事部」構想

 海士町のスローガンは「ないものはない」。ないものねだりはせず、足元にあるものを探して磨こう。大事なことはすべてこの島にある、との思いが込められている。

 この言葉を旗印に、2002年から昨年までの4期16年、かじ取り役を務めたのが前町長の山内道雄さん(80)だ。「海士町に挑戦事例はあっても成功事例はない」と言い続け、意識改革を進めた。

 この気概が、離島ならではの自然や風土と相まって、多くの移住者をひきつけた。同町によると、昨年度までの14年間で428世帯624人が全国各地から移住。そのうち5割弱が定着し、人口約2300人の1割強に上っている。

 昨年5月からは、山内さんの下で特産品開発に携わった大江和彦町長(59)が町政を担う。今の合言葉は、「心一つに、みんなでしゃばる(引っ張る)島づくり」。

 ただ、島の農漁業や伝統文化の担い手は年々減り、先行きが見えない。そこで進めているのが、町職員が副業で地域の担い手になる「半官半X(エックス)」という働き方改革だという。このほか、島に戻りたい人を受け入れ、育成しながら起業を促す「島の人事部」構想もある。「海士の風土や伝統文化を伝えていくことが、真のブランド力につながるはず。島が一つの家族のようなコミュニティーを築きたい」と語る。

PR情報

ここから広告です

PR注目情報

広島総局から

「地域情報・広島」では県内の主なニュース、連載、イベント情報など多彩な話題をお届けしています!情報提供やご意見ご感想はメールでお寄せ下さい。
メールはこちらから

朝日新聞 広島総局 公式ツイッター

注目コンテンツ

  • 写真

    【&w】カカドゥの不思議な野鳥たち

    ノーザンテリトリー〈PR〉

  • 写真

    【&TRAVEL】遊び心満載の豪華客船

    船上でサーフィン?〈PR〉

  • 写真

    【&M】TEPPEI×ハマ・オカモト

    自分に合った服装とは?

  • 写真

    【&w】劇場鑑賞券を3組6名様に

    「&w」読者プレゼント

  • 写真

    好書好日旅するように異国料理を作る

    宮崎あおいさん初の料理本

  • 写真

    WEBRONZAカーシェア急拡大

    今日の編集長おすすめ記事

  • 写真

    アエラスタイルマガジンこれぞ手軽な手土産の大本命

    手土産に縁起のよい「虎家喜」

  • 写真

    T JAPAN未来を変えるコスメ 第2回

    全米で話題の「CBDオイル」

  • 写真

    GLOBE+注目は年齢差だけではない

    マクロン大統領夫人の実像

  • 写真

    sippo絶滅の危機に瀕するトラ

    生態は猫とほぼ同じ

  • 働き方・就活

  • 転職情報 朝日求人ウェブ