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平和・ヒロシマ

在外被爆者支援護 この春前進

写真:研修で日本を訪れ、被爆者が暮らす老人ホームで職員から説明を受ける日伯友好病院の医師ら=2018年2月、広島市 拡大研修で日本を訪れ、被爆者が暮らす老人ホームで職員から説明を受ける日伯友好病院の医師ら=2018年2月、広島市

写真:ブラジル在住の盆子原国彦さん(中央右)らは県庁を訪れ、湯崎英彦知事(同左)に感謝状を手渡し、記念写真におさまった=4月10日、広島市中区 拡大ブラジル在住の盆子原国彦さん(中央右)らは県庁を訪れ、湯崎英彦知事(同左)に感謝状を手渡し、記念写真におさまった=4月10日、広島市中区

写真:広島市役所を訪れ、被爆者援護の担当者に要望する「韓国の原爆被害者を救援する市民の会」広島支部のメンバーたち=5月、広島市中区 拡大広島市役所を訪れ、被爆者援護の担当者に要望する「韓国の原爆被害者を救援する市民の会」広島支部のメンバーたち=5月、広島市中区

 ◇医療費の一部負担 不要に

 ■ブラジル在住者 日本国内と同様運用

 長きにわたり日本政府から援護の枠外に置かれてきた海外に暮らす被爆者たち。訴訟などを通じて改善が進み、この春、実務レベルでも大きく前進した。声を上げ続けてきた在外被爆者たちは歓迎している。(宮崎園子)

 「受診者ご本人に代わって病院が被爆者援護法に基づく医療費の支給申請手続きを行うこととなりました」。こう日本語とポルトガル語で記した「お知らせ」を5月末、広島県庁がブラジルに発送した。

 ブラジルで暮らす被爆者たちが今春から、日本国内の被爆者と同様に、窓口で医療費を一時負担することなく受診できるようになった。被爆者らでつくる「ブラジル被爆者平和協会」の、1984年の設立当初からの悲願がようやく実現した。

 「かあちゃんや、ようやくおまえが望んでいたことが実現したぞ」。森田隆会長(95)=サンパウロ市=は、10年前に84歳で亡くなった妻綾子さんの墓前に報告した。ともに広島で被爆、結婚後に移住し、協会の事務局長を務めた綾子さん。夫婦は何度も日本を訪れ、国内の被爆者と海外に住む被爆者との「格差」の是正を求め、国などにかけあってきた。陳情文はいつも綾子さんが手書きした。

 当初、日本側の対応は冷たかった。「ブラジル政府に頼んだらどうですか。国を捨てたのですから」

 隆さんは2002年、泣く泣く裁判を起こした。韓国でも訴訟が先行しており、米国からも続いた。「被爆者は国外に行ったら被爆者としての権利を失う」としてきた国の運用は、03年にようやく改められた。その間、多くの仲間が鬼籍に入った。

 綾子さん亡き後も日本を訪れ、訴え続けてきた隆さんは今回、感謝の思いを直接伝えることを望んだが、健康上の理由で断念。「祖国は我々を見捨てなかった」などと記した感謝状を、盆子原国彦副会長(79)らに託した。

 盆子原さんらの訪問を受けた広島県の湯崎英彦知事は「長らくお待たせをした」と声をかけた。広島市の松井一実市長は、ハンカチで目元をぬぐった。

                 ◇

 被爆者援護法に基づく援護は厚生労働省が所管するが、被爆者健康手帳の交付や健康管理手当などの支給は、法定受託事務として都道府県と広島、長崎両市が担っている。そのため、在外被爆者が手帳交付や手当支給を求めて提訴すると、被爆自治体側は裁判の被告となって被爆者側と争わざるを得なかった。

 一方で、被爆自治体側はタッグを組み、国側に援護の充実を求めてきた。広島県医師会も行政と協力し、定期的に医師団を北南米などに派遣。被爆者の健康相談に応じ、現地の医師への研修も重ねてきた。

 ブラジルの被爆者が医療費を一時負担せず受診できるようにするには、日本との医療制度の違いや、為替リスクなどのハードルがあった。今回、それらを乗り越え、現地の3病院が広島県側と協約を結んだ。

 サンタクルス日伯慈善協会サンタクルス病院、日伯友好病院、リベルダーデ医療センターだ。いずれも、日系移民の多いブラジルで長く被爆者の医療に携わってきた。理解を深めるため、医師を日本へ派遣して研修させるなどしてきたことも、協約の背景にある。

 サンタクルス病院職員の藤村ゆりさんは「1945年8月に恐ろしい経験をした被爆者の方々が、希望や安心とともに暮らすためのお役に立てれば」と言う。

<キーワード> 在外被爆者 

 広島・長崎で被爆後、母国に帰国したり、海外へ移住したりした人で、厚生労働省の2018年3月末時点のまとめでは、31の国・地域の3123人。韓国、米国、ブラジルが大半を占める。日本政府は「被爆者の権利は海外では失われる」として、長年被爆者援護法(1995年の施行までは原爆医療法と原爆特別措置法)の枠外に位置づけてきた。国内の被爆者と同等の援護を求め、70年代以降、在外被爆者による提訴が相次ぎ、政府は運用を改めた。

 ◇諸手当の受給 迅速化

 ■韓国在住者 支援者「制度周知を」

 病気やけがに応じて被爆者に支給される諸手当の申請も今年度から、被爆者健康手帳の交付申請と同時にできるようになった。高齢での手帳申請が増える中、必要な手当がより早く受給できることにつながる。

 手当の申請は従来、手帳交付決定後にしかできなかった。かつてわざわざ来日しないと手続きすらできなかった在外被爆者も、国が運用を改め在外公館で可能となった一方、事実確認のため、手帳交付まで1年近くかかるケースもある。その間は病気であっても手当を受けられなかった。

 長崎市は、手帳を求めて訴訟を起こし、今年1月に交付決定された在韓被爆者について、申請時にさかのぼり、手当を支給することを決めた。被爆者の高齢化で、手帳申請時にすでに手当が支給される疾病にかかっている人も増えており、対応の必要性が叫ばれていた。厚労省は3月、手帳と手当の申請を同時に受け付けてもよいとする通知を自治体に出した。

 被爆から74年となる今も手帳を申請する人はいる。広島市の受け付け分だけで、2017年度に在外18人を含む81人、18年度には在外15人を含む78人の申請があり、いずれも3割程度が交付に至った。「韓国の原爆被害者を救援する市民の会」広島支部によると、現在67人が手帳取得手続き中という。

                  ◇

 運用の改善に歓迎の声が上がる一方、在外被爆者の支援団体は「制度を現地の人たちにわかりやすく説明して」と要望している。

 「市民の会」広島支部のメンバーは5月、広島市役所を訪問。市が韓国に送った通知について「これを読んでも向こうの人はさっぱりわからない」と訴えた。

 同会によると、韓国で手帳の申請手続き中の70代男性のもとに4月、今回の運用変更についての通知が届いた。韓国語で記されていたが内容が理解できず、問い合わせ先は広島市役所のみ。困って相談してきた。

 要望を受け、広島市は、在外公館で問い合わせを受ける態勢に変更。山本雅英援護課長は「より一層、被爆者に寄り添った対応をしていく」と話す。同会の中谷悦子支部長は「在外被爆者だけでなく国内の被爆者にも周知徹底してほしい」と求めている。

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