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平和・ヒロシマ【聞きたかったこと〜被爆から75年〜】

食料を運び 見た光景

写真:原爆投下後の広島市の様子について話す東谷年人さん=三原市大和町 拡大原爆投下後の広島市の様子について話す東谷年人さん=三原市大和町

写真:少年時代の東谷年人さん=本人提供 拡大少年時代の東谷年人さん=本人提供

 広島県三原市 東谷 年人さん(91)

 広島県三原市大和町の東谷年人さん(91)は、原爆の投下時に16歳。同県庄原市の県修練農場(現・県立農業技術大学校)の生徒だった。広島市内で原爆に遭った農場長の知人に食料を持って行く役割を任され、市内に入った。そのとき目の当たりにした惨状と当時の経験を聞いた。

 原爆が投下された1945年8月6日から、5日くらい後だっただろうか。

 場長の指示を受けて、ほかの生徒4人とともに自転車に分乗し、庄原を出発した。それぞれの自転車に、コメやサツマイモなど、たくさんの食料を積み込んだ。

 場長の知人は、修練農場に講師として訪れていた人だった。途中、向原町(現・安芸高田市)の農場関係者宅で1泊し、翌日の午後3時ごろ、広島駅近くの高台にある知人宅に到着した。

 幸い、場長の知人は無事だった。家の骨格は残っていたが、周囲の多くの建物が燃え、焼け野原になっているのが見渡せた。落ちた屋根瓦の片付けなどを手伝った。

 駅の周辺を歩くと、けが人を乗せた車があちこちで走っていた。収容されていない人も一部にいた。しゃがみ込んだ男性が「水をくれ、水をくれ」とうめいていた。髪の毛や服はぼろぼろだった。やけどをしていたのか、腕に手を当てながら「痛い、痛い」と訴える人がいた。広島駅に立ち寄ってみると、トイレの扉が壊れてなくなっていた。

 近くに広大な東練兵場があり、夜中に何かを燃やす炎が上がっていた。車が次々と到着していた。

 翌朝、仲間とともに現場を訪れてみた。そこには直径2、3メートルほどの穴があり、周辺に白い骨が積まれていた。見た目から明らかに人骨だった。「焼かれていたのは亡くなった人たちだったのか」と仲間と顔を見合わせた。

 当時、大型の爆弾が投下されたとは聞いていたが、原爆の存在はまだ知らなかった。一帯の被害の大きさを目の当たりにし、恐ろしい威力だとつくづく感じた。

 知人宅に3泊ほどし、庄原に戻ることになった。その途中、5人のうち数人が下痢に襲われた。到着すると、ほかのメンバーも下痢になり、寮の廊下を汚してしまう仲間もいた。自分もトイレでズボンを下ろす間もないほど下痢が悪化し、1週間ほど病院に入院した。

 寮にはほかの生徒もいたが、下痢になったのは広島市に行った生徒だった。病院では「放射能のせいだろう」という言葉が耳に入ってきた。

 原爆でけがをした人たちは庄原にも運ばれてきていた。修練農場の近くにあった小学校を訪れると、頭に包帯を巻いたり、寝転んだりする人たちで体育館がいっぱいだった。足を踏み入れられないほどだった。広島市から遠く離れた庄原までけが人があふれる光景に、改めて被害の大きさを感じた。

 修練農場を卒業して間もなく、故郷の今の三原市に戻り、家業の農業を継いだ。結婚し、子どもも生まれた。幸いその後、体調を大きく壊すことはなかった。

 三原市と2005年に合併する以前の旧・大和町で、地元の被爆者団体に参加した。何度もバスを借りて8月6日に広島市である平和記念式典に参加した。大和町が三原市と合併すると、被爆者の団体も合併され、その後は三原市で開かれる式典に出席している。

 今は三原市原爆被害者之会の監査を務め、核兵器をなくす署名運動にも加わってきた。「核兵器は、瞬間の爆発力の大きさだけでなく、放射能という、その後の被害ももたらす恐ろしいもの。この世からなくしてもらわないといけない」(天野剛志)

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