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平和・ヒロシマ【聞きたかったこと〜被爆から75年〜】

生存者らの生活支援

写真:自宅で居宅介護支援事業所を営む山田寿美子さん=2020年3月、広島市東区 拡大自宅で居宅介護支援事業所を営む山田寿美子さん=2020年3月、広島市東区

写真:被爆から5年ほど経った頃の山田寿美子さん(中央)。長姉の静枝さん(右)、静枝さんの友人と=山田さん提供 拡大被爆から5年ほど経った頃の山田寿美子さん(中央)。長姉の静枝さん(右)、静枝さんの友人と=山田さん提供

 広島市東区 山田寿美子さん(76)

 広島市東区にある「山田居宅介護支援事業所」。所長の山田寿美子さん(76)は、原爆で両親を亡くした原爆孤児だ。終戦後は貧しい生活を送り、学生時代は差別も受けた。被爆から75年が経った今もなお、被爆者の支援を続けている。その思いを聞いた。

 75年前の8月6日、爆心地から約2・3キロ離れた広島市三滝町(現・西区)にある母方の実家で暮らしていた。

 当時の記憶はほとんどないが、共に被爆した18歳上の長姉、静枝さんによると、爆風で1メートルほど吹き飛ばされ、割れたガラスの破片が体中に突き刺さったという。静枝さんに抱きかかえられ、裏の竹林に避難した。

 両親は建物疎開の作業に駆り出されていた。爆心地から約0・9キロの広島県庁付近で被爆した父は、遺骨も見つからなかった。爆心地から約0・7キロの小網町(現・中区)にいた母は、その日の夕方に実家へ歩いて帰ってきたが、体中にやけどを負い、8月23日に亡くなった。

 終戦後、長姉の静枝さんは結核で入院した。終戦の翌年には16歳上の次姉、節子さんが19歳で結婚した。21歳上の兄はほとんど家に帰らなかった。

 7歳上のいとこと2人で実家近くに小さな家を借りて暮らした。いとこは近くの八百屋で働いたが、生活は苦しく、月に1回ほど帰ってくる兄からのお金が頼りだった。小学校に入学しても学費や給食費を払えず、ほとんど登校しなかったという。

 小学4年のころ、いとこと別々の親戚に引き取られた。どこも生活は苦しく、いくつもの家を転々とした。同居した子どもから「お前には親がいないんだ」などとからかわれ、1週間で家を飛び出したこともあった。

 「当時の私は暗くて、いつもふさぎこんでいた。自殺を考えたことも1回や2回ではない」と振り返る。

 中学3年の冬、結核が治り結婚して岡山市で暮らしていた静枝さんに引き取られた。周りに被爆者は少なく、同級生から「病気がうつる」「髪の毛が抜ける」などと心ない言葉を浴びせられた。「被爆者は差別される存在なんだ」とショックを受けた。

 義兄の勧めで高校に進み、暗い自分を変えようと弁論部へ入った。黒人や被差別部落などの差別問題に取り組んだ。義兄の支援を受け、愛知県の日本福祉大に進学。「部落問題研究会」に所属した。卒業論文では同和地区の被爆者の実態を取り上げ、広島市でフィールドワークをした。

 卒業後、医療ソーシャルワーカーとして福島生協病院へ就職。被爆者の健康相談に乗ってきた。退職後は自宅で居宅介護支援事業所を開設。被爆者らの生活支援を続けている。被爆者の介護手当制度を活用し、在宅で手厚く支援できるよう工夫している。

 ケアマネジャーらへの給料や経費を差し引くと、事業所の収支は毎年赤字だ。貯金を切り崩して続けている。

 「頼ってくれる人がいる限り、健康で生き続けたい。お金には代えられない生きがいです」

 「被爆の苦しみは生涯続く」という。支援した人の中に、ガスコンロの火を自分でつけられない女性がいた。被爆直後に見た炎を思い出してしまうのだという。料理を作るときは夫が代わりに点火していたが、夫が認知症になってからはできなくなり、女性はその後、施設へ入ったという。

 「被爆者は国からお金がもらえていいよね、とよく言われるが、生き残った人たちは病気におびえ、記憶に苦しみ続けている。たった一発の原爆がその人の一生を狂わせたんです」 (松島研人)

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