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ほっかい食どう 育てる人びと【ほっかい食どう  育てる人びと】

高級酒醸す米への期待

写真:蒸し上がったばかりの「吟風」をほぐして冷やす蔵人たち=福井県永平寺町の黒龍酒造、安冨良弘撮影 拡大蒸し上がったばかりの「吟風」をほぐして冷やす蔵人たち=福井県永平寺町の黒龍酒造、安冨良弘撮影

写真:北海道の米を使った酒造りを語る杜氏の畑山浩さん=福井県永平寺町の黒龍酒造、安冨良弘撮影 拡大北海道の米を使った酒造りを語る杜氏の畑山浩さん=福井県永平寺町の黒龍酒造、安冨良弘撮影

写真: 拡大

■次世代向け、北陸で仕込み

 北海道のお米はおいしい、と、食べた全国の人が認めるようになった。次は、酒用の米の出番だろうか。

 福井県永平寺町で200年以上続く「黒龍酒造」は、高級吟醸酒の蔵元として地酒ファンに知られる。寒は仕込みの真っ最中、同社として初めて、北海道で生まれて育つ酒造好適米(酒米)の「吟風」を使った酒を造っている。

 吟風は、道の中央農業試験場が育成し、品種登録は2002年。翌03年酒造年度の全国新酒鑑評会で道内の蔵が吟風の酒で金賞をとったことは、業界の話題に。日本酒全体の消費量が減る一方、飲み手は特色のある酒を求めている。地産地消を追い風に、各地で独自品種の育成が進むなか、北海道は質で選ばれる米への流れを酒米にも広げる。

 福井を訪ねた日、吟風の酒は、酒母(しゅぼ)造りの3日目に進んでいた。酒を生む元気な「もと」を育てる工程で、タンクをのぞき込むとピチピチ、パチパチ。酵母の勢いで泡がはじける。見守る杜氏(とうじ)の畑山浩さん(43)が、手のひらで表面の空気をこちらに送ってくれる。メロンのようなバナナのような、甘く涼しい香りが、ぶわっと鼻を抜けた。

 目指すのは、蔵の信条とする上品さを備えた純米大吟醸だという。地酒をもりたてる酒販店の全国組織「酒門の会」との企画で、次世代に向けた挑戦という側面がある。畑山さんは「黒龍という舞台の上で、吟風がどう演じてくれるか」。造りたい酒と原料との関係をそう説明する。「舞台に合うように、持ち味をうまく引き出していくのが、私たちの仕事です」

 吟風には、全国の酒を集めた試飲会で10年ほど前に出会った。思わず出た言葉が「これ何ですか」。大吟醸の気配があって、いい純米酒にもなりそうな、潜在能力の高さを感じた。畑山さんは道南・松前町出身だ。

 その「縁」を数年後、社長の水野直人さん(50)がつなげる。農業への関心から旭川を旅した際に、期待の酒米だと農家の人たちに教えられたのが吟風だった。

 3年の試作期間を経て、迎えたのが今回の仕込みだ。精米歩合は40%、酵母は派手さを抑えた香りの出るものを選んでいる。ふくらみ、雑味のなさ、ほのかな甘み……。水野社長はイメージを「北海道の緑の草原」に例えた。1年間ゆっくり熟成させて、来春の発売を予定する。

 新しい米に目を向ける背景には、いま手に入る酒米が永遠とは限らないという危機感がある。酒米の最高峰である山田錦と五百万石を使ってきたが、田んぼの環境変化は肌で感じる。頼りの農家も年々高齢化する。地元の新品種を試したものの、合わないと諦めたこともある。伝統を継続するための一歩でもある。

 黒龍など全国の地酒を扱う酒販店「横浜君嶋屋」(横浜市)の君嶋哲至社長はいう。「世代交代と多様化が進む日本酒の世界で、問われるのは原点。その土地の水に合うように、いい米で酒を醸すことです」

 (長沢美津子)

■黒龍酒造株式会社

 福井県永平寺町松岡春日1の38

 電話:0776・61・6110

 HP:http://www.kokuryu.co.jp

 「黒龍 吟風」は、「酒門の会」に参加する全国の酒販店65店で2016年春の発売予定。

◆キーワード

 <酒造好適米> 日本酒づくりに適した酒造用の品種で、食用米と区別される。酒米とも呼ばれる。「吟風」は、「初雫(はつしずく)」に続く道内2番目の酒造好適米。広島で育種された「八反錦2号」と「上育404号」の子に、食用の「きらら397」を交配した。

 「山田錦」や「五百万石」といった人気品種と同様、米の中心部に麹(こうじ)の菌糸が入り込みやすい「心白」ができるため、吟醸や大吟醸の酒づくりに使う米として期待がかかる。続く酒造好適米の品種に、初雫と吟風を交配した「彗星(すいせい)」、人気品種「雄町」を受け継ぐ「きたしずく」がある。ホクレン米穀部によると、道内の酒造好適米の主産地は新十津川町や旭川市、当別町で、2014年産の作付面積は前年より25%多い約300ヘクタールで、生産量は1600トン。そのうち吟風が75%を占める。

 室谷光紀原材料課長は「北海道産吟風を使ったことを表示するお酒が増えている。酒米として認められてきた証拠です」。食用米に比較して取引価格は低いが、農家にとっては相場に左右されにくいのがメリット。「全国からの需要を踏まえた計画生産を進めています」と話す。

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