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戦後70年 北海道(1)【第7部 明日へ】

(3)移住

写真:冨安寛樹さん(右)と小林直樹さんはパソコンを駆使して仕事をしている。インターネットにつながれば場所は問わない=夕張市のシューパロ湖前 拡大冨安寛樹さん(右)と小林直樹さんはパソコンを駆使して仕事をしている。インターネットにつながれば場所は問わない=夕張市のシューパロ湖前

■若者「ピンチだからこそ」

■新たな「生き方」取り組み模索

 2006年に財政破綻(はたん)が表面化した夕張市。財政再建の一環で廃校した旧緑陽中学校の一室で、冨安寛樹(27)がノートパソコンを操りながら仕事をこなしていた。

 校舎は、地元のNPO法人がスポーツ施設として活用している。冨安は職員ではないが、法人側の好意で間借りし、「オフィス」代わりに使っている。

 「自宅でもできるけれど、オンとオフが必要かなと思って。都会だと、スターバックスを利用する感覚ですかね」

 仕事のほとんどは、「クラウドソーシング」で受注する。インターネット上で企業と個人が仕事を受発注できる仕組みで、働く場所を選ばない。

 冨安は横浜で生まれ育ったが、2011年7月に平取町に移住。「地域おこし協力隊」や町職員をへて、この春夕張にやって来た。

 東京の大手企業で働く将来像を思い描いていたが、大学4年のとき、アトピー性皮膚炎が悪化した。「都会は便利で、大企業に就職すれば安定もする。だけど、がむしゃらに働かされて、自由な時間と健康を失うのは嫌だな」と思った。

 背中を押したのは東日本大震災だった。「都会で巨大地震が起きたらひとたまりもない。自然環境のいい地方に行きたい」。4カ月後、平取町に移住した。

 冨安を夕張に誘ったのは小林直樹(33)だ。地元夕張の高校を卒業後、ミュージシャンをめざして上京。その夢はあきらめたが、ウェブデザイナーとして東京のIT企業などで働き、昨年、十数年ぶりにふるさとへ戻った。

 ノルマ、締め切り、お金……。「何のためにここにいるのか」。冨安と同様、都会での働き方に疑問を持った。

 「北海道 移住」。夕張に戻り、そんな言葉をネットで検索した。冨安のブログが表示され、メールで連絡をとった。「夕張活性化には、しがらみのない人が入った方がいいと思った」

 小林も冨安と同じように、ホームページの作成などを請け負う。収入は約400万円。冨安も月に十数万円で、都会より少ないが、「夕張で暮らすには十分」と口をそろえる。

 2人は、休眠状態だった地元のインターネットポータルサイト「夕張新聞」の運営を引き継ぎ、サイトを一新した上で夕張の情報を発信している。冨安は「なぜ移住したのか」とよく人に聞かれるが、「ピンチだからこそ、変化が起きる余地がある」と返すという。いまの夕張の姿は、大きな組織に依存せず、自立しようともがく自分と重なる。「自立した個人が増えれば、地方はおのずと活性化する」

 小林も「夕張を利用して、いかに市民が人生を豊かにできるか。そのための取り組みを考えたい」と語る。

■夫婦でカフェ

 夕張の北約120キロにある和寒町にも東京暮らしに疑問を持ち、5年前に移住した夫婦がいる。

 中野利樹(33)と奈緒子(33)だ。中野は北見出身。岩手の大学を卒業後、あこがれの東京に出てIT企業に就職、ソフトウェアの開発などを手がけた。だが、「東京は何をするにもお金がかかる。そのために働いていると思うと生きる気力がなくなった」。

 中野は今、町内でオーガニックコーヒーのカフェを営む。旭川市以北に、都会のような落ち着いた雰囲気のカフェが少ないと思い、開店した。ホームページの作成などでの収入と合わせ、年収は東京時代の半分ほどだが、暮らしていくには困らない。「仕事が見つかるか不安だったが、すべては自分次第。やる気になれば起業もできる」

■「1区画980円」

 過疎問題に取り組む行政も移住促進に力を入れる。道は06年度から体験移住事業を継続。初年度は40の市町村が参加し、417人が利用したが、昨年度は参加市町村は93に広がり、利用者も2526人に増えた。

 深川市は今秋、1年半以内に家を建て、住民票を移すという条件で、市所有の宅地9区画を各980円で販売。4区画がすでに売買契約を済ませ、残り5区画も数人が興味を示しているという。

 だが、道内の人口は減り続けている。1990年代後半に約570万人に達したが、現在は約540万人。札幌市でさえ来年から人口減に転じる見通しだ。

 若い世代の目に、北海道が魅力的に映るためには何が必要なのか。それは単なる人口減対策を超えた、豊かさや幸せ、生き方における新たな価値観を打ち出せるかにかかっているのかもしれない。

=敬称略

(関根和弘)

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