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話題を深掘り「ラウンジ」【ラウンジ】

アイヌ木綿衣、世界最古級か 

写真:(右)世界最古級の可能性があるアイヌ民族の木綿衣の前部(左)独特のアイヌ模様が施された木綿衣の背部=いずれも釧路市立博物館提供 拡大(右)世界最古級の可能性があるアイヌ民族の木綿衣の前部(左)独特のアイヌ模様が施された木綿衣の背部=いずれも釧路市立博物館提供

写真:ロシアの木綿衣2点の写真。釧路の木綿衣とそっくりだ=「ロシア科学アカデミー・ピョートル大帝記念人類学民族学博物館所蔵アイヌ資料目録」(草風館)より 拡大ロシアの木綿衣2点の写真。釧路の木綿衣とそっくりだ=「ロシア科学アカデミー・ピョートル大帝記念人類学民族学博物館所蔵アイヌ資料目録」(草風館)より

写真:木綿衣を着たクリル人(千島アイヌ)の絵。ロシアに渡った木綿衣と推察されている=「ロシア帝国諸民族誌」(1776年発行)から 拡大木綿衣を着たクリル人(千島アイヌ)の絵。ロシアに渡った木綿衣と推察されている=「ロシア帝国諸民族誌」(1776年発行)から

■釧路博物館所蔵、ロシアの2点と酷似

 釧路市立博物館が所蔵するアイヌ民族の木綿衣(もめんい)(ルウンペ)が、世界最古級の可能性が高まっている。現存する世界最古の木綿衣とされるロシアの博物館所蔵の2点と見た目も縫製技法もそっくりで、研究者は同じ時期に北海道で作られたものとみている。3月の調査終了後、早ければ5月にも一般公開される予定だ。

■模様・縫製技、調査進む

 この木綿衣は丈128センチ、両袖を広げた幅は136センチ。釧路市立博物館の初代館長、片岡新助氏(故人)が1951年に寄贈した4480点のコレクションの一つで、前部と背部に独特のアイヌ模様が施され、虻田地域(胆振西部、後志南部)で製作されたものとみられている。

 アイヌ民族の服飾技術伝承者、津田命子・道立アイヌ総合センター元学芸員が、ロシア科学アカデミー・ピョートル大帝記念人類学民族学博物館(通称クンストカメラ)が所蔵する2点と酷似していると指摘。2014年から国立民族学博物館(民博)の佐々木史郎教授(現国立アイヌ民族博物館設立準備室主幹)が代表を務める研究チームが調査を進めている。

 クンストカメラは1714年にピョートル1世がサンクトペテルブルクに創建した宝物館。2点は1775年に収蔵されたと記録され、日本側の調査で18世紀初期には木綿衣に仕立てられていたとみられている。釧路の木綿衣と同じ藍染めで、羽織として着やすくするのに両袖の下にマチを施し、身幅を広げていた。刺繍(ししゅう)の模様もそっくりで、3点とも「切り伏せ」という技法で絹布を縫い付けていた。縫い糸はイラクサ繊維と絹が使われ、いずれもかがり縫いだった。

 チームは、マチを付ける技法は虻田地域や噴火湾周辺で見られることから、3点はこの地方で和人の着物を利用し、晴れ着として同時期に仕立て直されたと推察。2点は千島列島北部に渡り、ヤクーツク(ロシア・サハ共和国の首都)の商人に買い付けられてロシアの博物館に収蔵されたものと考えている。

■文化史知る一級資料

 アイヌ民族の資料は国内外の博物館に数多く所蔵されているが、製作された年代や場所がわかっているものは多くない。特に19世紀前半以前のアイヌ文化には不明な点が多く、江戸時代後期に描かれたアイヌの有力者の肖像画「夷酋列像(いしゅうれつぞう)」などから推察するにとどまっている。

 特に木綿衣は着古されて後世に残りにくく、佐々木さんは「日ロで3点が現存した意味は大きい。北海道のアイヌ民族が積極的に交易をしていた証しで、アイヌ民族の文化史を知る上で一級の資料」と高く評価している。

 釧路市立博物館の木綿衣は1983年の新館開館時から常設展示されており、照明による退色や刺繍の劣化が進んでいる。いまは特別収蔵庫に保管しており、展示する際は温度を22度前後、湿度を55%前後、照明を100ルクス以下に保ち、ハンガーの両端を太くして和紙を巻き、木綿衣への負担を軽くすることにしている。

 白幡敏弘館長は「調査結果で文化財的な価値が証明されればうれしい。ぜひ多くの人に見てもらいたい」と話している。

 (奈良山雅俊)

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