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水曜「働く・暮らす」【けんこう処方箋】

原発避難訓練、複雑な思い 岸玲子

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写真:<イラスト・佐藤博美> 拡大<イラスト・佐藤博美>

●北大名誉教授・環境健康科学特別招聘教授 岸玲子

 先月、テレビ局の取材を受けた。北海道電力の泊原発から5キロ圏内に住む泊村と共和町の住民を対象に、厳寒期に初めての防災訓練が実施されるので、公衆衛生の専門家としての意見を聞きたいとのことだった。私は原子力災害対策に関する札幌市の地域防災計画の有識者会議のメンバーも務めていた。

 「発達した低気圧の影響で数年に一度の猛吹雪に見舞われる中、原発の注水機能が失われた」という想定で、大雪に閉じ込められた住民を救出するとともに、甲状腺被曝(ひばく)を防ぐ安定ヨウ素剤を緊急配布する訓練も実施された。疑問に思った点がいくつかある。

 なぜ共和町では事前にヨウ素剤を配布しなかったのか?

 事故が起こった時に町の担当者が配布のために歩きまわれば、高レベルの放射線に被曝する危険がある。福島ではヨウ素剤は各市町村に備蓄があったが事前には配られず、住民が服用できたのは三春町だけだった。どういう時に服用するか国と市町村は決めておき、保健所や病院などが日ごろから住民に正確な情報提供をする体制にしておく必要がある。

 次に、泊原発から10〜20キロ圏の町や村の住民が訓練に参加しなくていいのか?

 風向きによっては倶知安、ニセコ、蘭越、寿都などにも放射性プルームが飛ぶ可能性がある。福島の事故では、飯舘村のように30キロ離れていても高レベルの汚染に見舞われ、いまだほとんどの住民が帰還できない所もある。避難は5キロ圏内の住民などとは言ってられない。

 札幌市は泊原発から40〜80キロ離れている。一方、福島市は原発から約60〜100キロ先で、札幌市の方が近い。また厳冬期の早朝、札幌市が大地震に見舞われれば、11万棟が全半壊し、死者は2千人と想定されている。電気が途絶え暖房が使えなければ、凍死者は数千人規模になるとの試算もある。地震と豪雪が重なれば、避難も物資の輸送も困難を極めることが心配される。

 そして、住民の不安解消なしに原発の操業は再開されるのか?

 東芝はエネルギー政策の見通しを見誤り、米国の原発メーカーを買収するなどした結果、債務超過を回避するため半導体事業の一部を手放すということだ。我々も同じで、地域の大事なものを見失ってはいけない。日本で美しい村の一つだった飯舘村の現状は、それを教えてくれる。

 私は避難訓練の報道に、複雑な思いを抱いたのである。

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