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水曜「働く・暮らす」【けんこう処方箋】

子の貧困と健康、深い関係 岸玲子

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写真:<イラスト・佐藤博美> 拡大<イラスト・佐藤博美>

●北大名誉教授・環境健康科学特別招聘教授 岸玲子

 子どもの貧困が注目されている。経済格差が拡大し、親は働けど非正規雇用で賃金が増えず、貧困にあえぐ家庭が増えているためだ。厚生労働省の調査によると、子どもの6人に1人(16・3%)が貧困状態で、特に1人親の家庭では約6割の子どもが貧困と指摘されている。

 健康は環境と関係が深い。特に幼少期の貧困や低栄養は発達に影響を与える。学力のみならず、成長過程で様々な健康障害を引き起こし、成人した後もがんや糖尿病、循環器疾患といった疾病につながることが危惧される。子どもの貧困や劣悪な生活環境は、社会問題であるとともに、今や医学の課題でもある。

 しかし日本では、子どもの貧困の実態把握は十分なされていない。例えば世帯の経済状態と子どもの食生活・栄養との関連は、ほとんど報告がない。対象者を把握しきれていないからだ。

 わずかに実施された調査によると、全世帯の所得の中央値の半分である「貧困ライン」を下回る世帯の児童では、朝食の摂取頻度が少なく、野菜を食べる頻度が低い一方、魚や肉の加工品やインスタント麺類を食べる頻度が高い。炭水化物の摂取が多く、たんぱく質やビタミン、ミネラルが少ないということだ。栄養不良の子どもは抵抗力が衰え、発育阻害を引き起こし、脳の発達や学習能力を低下させる原因になる。

 虫歯が多い子どもの生活を調べると、親の病気や貧困による育児放棄で口腔(こうくう)ケアがなされず、予防的な健診も受けられず、虫歯が10本以上あり咀嚼(そしゃく)が困難な「口腔崩壊」でも診療費が払えないため、全く受診できない子どもたちが相当数いると推定される。

 教育関係の専門家は、貧困に起因する多様な発達困難、不安や緊張、ストレス状態を報告している。特に児童虐待の調査では、4割程度が経済的に困難な世帯であることが把握されている。

 極貧の困難な生活ではなくても、私たちの研究では、胎児期の世帯収入が低いほど、3歳半の時点での習熟度や認知処理の得点が低かった。家庭の経済状態といった環境を改善すれば、多くの子どもたちの発達がより保障されることを意味する。

 現在札幌市は子どもの貧困に関する調査をし、今年度中に対策計画を作成する準備をしていると聞く。国が進める「子ども食堂」などの食事支援や学習支援にとどまらず、貧困家庭が貧困を脱するための抜本的な政策が望まれる。

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