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金曜「ライフ・楽しむ」【わたし色】

カフェに漂うあいまいさの心地 美馬のゆり

写真: 拡大

●公立はこだて未来大教授・美馬のゆりさん

 このごろ喫茶店という言葉があまり聞かれなくなり、カフェに変わってきました。

 喫茶店には昭和のレトロな感じが漂い、カフェにはオシャレで開放的なイメージがあるようです。カフェには色々な人がやってきます。パソコンで仕事をする人、本を読む人、おしゃべりに花が咲くグループも。

  □  ■  □

 ちょっと違ったカフェもあります。「サイエンスカフェ」をご存じでしょうか。

 1990年代後半に英国やフランスでほぼ同時期に始まった活動です。難しいと敬遠されがちな科学について、コーヒー片手に専門家の話を聞きながら、みんなで語り合うのです。日本では2004年の科学技術白書で紹介され、各地に広がっています。

 20世紀、私たちを幸せにすると考えられていた科学技術。それが地球温暖化を引き起こし、世界規模の問題になってきたり、遺伝子組み換えや生殖医療技術など、私たちの身近な問題となってきたりしました。

 専門家に任せるだけでなく、自分たちも理解し考えてみようというわけです。一方、研究や政策を進める人たちが専門家でない人の意見に耳を傾けることも必要です。

 時を同じくしてパリでは、「哲学カフェ」が出現しました。これも日本で広がってきています。ちょっと難しそうですが、実は科学より身近なものかもしれません。「生きる意味とは」「老いとどう向き合うか」「親子の関係とは」など、日常生活や経験について、自分の感情をちょっと突き放して考えることを楽しむのです。

  □  ■  □

 人に話したり、議論したりするのが恥ずかしいと思われがちな問題も、カフェという空間ではできてしまうから不思議です。「○○カフェ」には一定のルールがあります。プライバシーを尊重し、人の意見に耳を傾ける。発言の長さや回数にも気を付ける。最終的に一つの答えを出すことが目的ではありません。

 日本には江戸の昔から、軒先、縁側、路地裏、井戸端など、公的な空間と私的な空間の間に、あいまいな空間が存在します。ここでは、どういう人たちが出会い、コミュニケーションが生まれるか、すぐにイメージが浮かんできます。内側と外側、形式と非形式、日常と非日常。そのどちらでもない、あいまいなところに気軽さ、心地よさがあります。

 静かな広がりを見せる「○○カフェ」。時を超え、海を越え、このあいまいさが私たち日本人にしっくりくるのかもしれません。皆さんも一度足を運んでみてはいかがでしょうか。

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