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自治体の名義後援、どうする

写真: 拡大

写真:前札幌市長・上田文雄さん 拡大前札幌市長・上田文雄さん

写真:NPO法人さっぽろ自由学校「遊」事務局長・小泉雅弘さん 拡大NPO法人さっぽろ自由学校「遊」事務局長・小泉雅弘さん

 市民団体主催の催しの名義後援を自治体が断るケースが全国で増えている。札幌市でも「政治的中立性」を理由に不承認が年に数件ある。公共施設にチラシを置けることなどが後援を受ける主なメリットだが、市の制度について、上田文雄・前札幌市長と、主催講座の一部で後援が認められなかった経験があるNPO法人さっぽろ自由学校「遊」の小泉雅弘事務局長に聞いた。

 (戸谷明裕)

 ■市民活動に権威付け不要

 ●前札幌市長・上田文雄さん

 最近、「後援する」「しない」の理由付け自体が非常に政治的な判断になっていることが気になり始めた。価値判断を伴うことは市民に任せるべきだ。市民が発言をしたい、訴えたいことは、公序良俗に反するものを除き、発言の場を封じたり、機会を少なくしたりすべきではない。

 施設を貸さないといったばかげた話もすべきではない。公の施設の使用許可は公序良俗に反しない、あるいは暴力的なものでなければ許可すべきだ。

 「後援」というのは、文字通り後ろから推す、推薦する、行政も好ましいと判断しているということ。後援が付く長所は、イベントの広報手段としてチラシなどを市役所や区役所、まちづくりセンターといった公共施設に置くことができる点にあるようだ。

 後援がつかないとスペースの問題もあり、置くことができなくなるとも聞く。市民自治を訴えている市の自治基本条例や市民まちづくり活動促進条例などの趣旨から考えると、市がそれを抑えることにもなるので、いいことではない。

 公共施設にチラシを置くことができるかどうかという問題であれば、後援制度はやめたほうがいい。基準として、人権侵害を主張する公序良俗に反するものを除き、原則的には協力することが必要ではないか。

 ただ、それは、必ずしも「後援ありき」でもないようだ。基準として市の主催や後援があると判断がしやすくなるが、施設に活動登録している団体は後援がなくてもチラシなどを置いている所もあるようだ。

 市長時代、職員は(政治的)価値判断はするべきではないと考えていた。2013年4月の朝日新聞声欄に、室蘭市に「憲法を守る自治体行政を応援する」という公式ホームページのバナー広告を申し込んだら、掲載を拒否されたという投書があった。

 拒否した市の態度は悪くない。憲法を守るのは公務員の義務だが、ことさらいうのは政治的主張になるからだ。市民が憲法改正を議論することは抑制されるべきではないが、行政がこれを先導することをしてはならない。投書について当時、全職員にメールで問いかけたが、最終的には市長の判断でいいのでは、となった。

 市民活動に後援という権威付けはやめるべきだ。自治に関わる問題について、行政は謙抑的でなければならないというのが私のスタンスだからだ。

     *

 うえだ・ふみお 69歳。幕別町生まれ。26歳で司法試験に合格し、1994年に札幌弁護士会副会長。2003年6月の札幌市長選で初当選。3期を務め、15年の任期満了で退任。

 ■承認の判断、恣意的では?

 ●NPO法人さっぽろ自由学校「遊」事務局長・小泉雅弘さん

 さっぽろ自由学校「遊」の活動は、年間を通して開講する連続講座やワークショップ。市民を対象に人権、環境、平和などの社会的課題や、文化や技能、語学などを学ぶ講座がある。

 札幌市の「名義後援」取得のきっかけは1990年の設立当初から。チラシを公共施設に持って行くと「後援がないと置けません」と言われ、それで取り始めた。

 基本的には一つのイベントごとに後援申請を出すので、環境なら環境の担当課といったようになるが、私たちの場合は講座を年間で前期、後期に分けて申請する。それぞれ複数の講座を載せているので、テーマも様々。全体を紹介したものを置きたいというと、当初は「市教委に」と言われた。現在は「市後援」をとる申請をしている。

 昨年度は前期講座開講後の7月ごろ、市の秘書課から「クレームが来ている」と言われ、その後に後期の講座を申請したところ、決定通知書では「後援するのは以下の講座とする」と、個別に承認・不承認が出てきた。不承認は「大学教育の問題点をさぐる」「教育改革を展望する」「憲法カフェ」など。以前からの「憲法」や「原発」だけでなく、「教育」「沖縄」「レイシズム(人種差別)」など範囲が広がっている。

 市は「クレームがつきそうなものは承認しない」と恣意(しい)的に基準を変えているのではないか。そもそも講座・講演は学ぶのが主たる目的であり、政治的主張を広める、政治活動をするということではない。市に対しては、後援のガイドライン改正案を作り、話し合いもした。

 「後援」に政治的判断が入るというのは問題だと思う。公共施設にチラシを置くことと後援の承認問題を切り離すのはある意味悪いことではない。チラシを置く基準をどうするかという問題は出てくるが、名義後援と結び付けることはやめて、「暴力の助長」「差別表現」などを除くという基準を設ければよい。

 反原発のテーマであっても原発に賛成する人は来るなというなら問題だが、誰が来ても拒まない。講師に異を唱えてもいい。講師は誰でも自分の意見を持っており、中立的な話で講座を成り立たせるのは無理だ。

 他の講座でも細かく見れば政治性があるといえば、ある。そこを「原発」や「憲法」だけダメ、みたいな言い方をするのはどうか。名義後援に限らず、市民は政治的なことには関わったらいけないという風潮があるのかもしれない。

     *

 こいずみ・まさひろ 55歳。神奈川県生まれ。大学入学のため札幌市に移住した。1990年、さっぽろ自由学校「遊」の立ち上げに関わり、事務局を務めている。

 ■多様な声にこたえ、官民で知恵を絞る時

 いわゆる「名義後援」は自治体がつけると、「お墨付き」を得た事業として、集客や出資、PR活動に有利とされる。

 市への申請件数は2016年度は今年1月末までで4047件あり、うち不承認は6件。さっぽろ自由学校「遊」の小泉雅弘事務局長などによると、同団体は複数の講座を年2回、それぞれまとめて後援申請するので、後期(16年10月〜17年3月)で不承認となった講座数は8講座だが、全体として1件とカウントされている。

 また、市によると事前に審査基準を説明し、申請を断念するケースはカウントされていないという。

 市は8月ごろまでに、後援制度のガイドラインを見直す方針。市民活動活性化のためにも、多様な声にこたえ、官民で知恵を絞る時だ。

 (戸谷明裕)

 ◆キーワード

 <札幌市の後援制度> 市秘書課によると、後援制度は1979年には存在し、現在の制度は2004年3月にガイドラインが設けられた。後援を付ける基準として(1)特定の思想、政治的主張、宗教の普及を主目的(2)専ら営利目的(3)特定の者に限定(4)法令または公序良俗違反、の4項目に該当する事業は承認されない。多くの公共施設がイベントのチラシなどを置く基準として、市の後援などを求めるという。「政治的主張」が争点になることが多い。

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