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金曜「ライフ・楽しむ」【わたし色】

人工知能に出せぬ味わいとは 美馬のゆり

写真: 拡大

●公立はこだて未来大教授・美馬のゆりさん

 今日の料理は何にしようかな。みなさんは料理する時、何から考えますか。

 和食、洋食、中華など、料理のスタイルからでしょうか。豚肉や鶏肉、魚など、主になる食材ということもあるでしょう。冷蔵庫にあるものから考えることもありそうです。煮る、焼く、蒸す、炒める、揚げるなどの調理方法もいろいろあります。

 2011年に米国のテレビ番組で、クイズ王に勝利したことで一躍有名になった人工知能の技術。それを料理に生かすものが出てきました。食材を複数入力し、イタリアンやフレンチなどの調理方法、誕生日などのスタイルを選ぶと、ユーザーの好みのレシピを複数提案してくれます。中にはこれまで人間が思いつかなかったものもあるとか。

  □  ■  □

 科学的に詳細に解説した料理本も出ています。著者はコンピューターメーカーの優れた技術者で経営者。趣味は料理で、世界屈指の料理学校に通い、技術も習得しました。調理中の材料や鍋の温度などを計測し、最適な温度、時間などを理由とともに解説しています。実際に調理中の鍋を真っ二つに切った断面の写真は圧巻です。

 私の研究室でも以前、調理の熟達化を支援するシステムを開発し、実験をしました。台所の調理台や流し場など複数箇所にモニターを設置し、すべきことを適時映像で示すのです。作り手はその指示に従って、塩分センサーや温度センサーも利用しながら調理する。

 その結果起こったことは「カーナビ現象」でした。カーナビを使うと、目的地にはたどり着けるけれど、道は覚えていない。映像に従って行動するだけで、調理はうまくならなかったのです。ちょっと味見すればおいしいかどうかわかるのに、自分の舌よりセンサーの数値を信じ、それに合わせようとする行動も見られました。

  □  ■  □

 料理とは、食べる時の気温や湿度、食べる人が疲れているかどうかなどで、微妙に味を変えるもの。そんな相手を思う気持ちが、調理の熟達化につながっていくのです。そこに必要なのは、食べる人のことを思い描き、試行錯誤しながらいろいろ作ってみること。そして結果を振り返り、失敗や成功からコツを見いだし、次に生かすこと。

 人工知能と共存する社会がすぐそこまで来ている中で、人間にしかできないことは何か。一緒に食べる人がいて、何をどう作ろうか悩み考えることかもしれません。

 北海道はいま、夏野菜のおいしい季節です。自分で素材を選び、調理し、みんなでおいしい夏を楽しみましょう。

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