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水曜「働く・暮らす」【現場一話】

焼きたてチーズタルト、海外攻勢

写真: 拡大

写真:半製品のチーズタルトを箱詰めする作業=札幌市白石区のBAKE北海道工場 拡大半製品のチーズタルトを箱詰めする作業=札幌市白石区のBAKE北海道工場

写真:シンガポールの店でも長い行列ができた=BAKE提供 拡大シンガポールの店でも長い行列ができた=BAKE提供

■「BAKE」、札幌に工場

 北海道発のスイーツの店舗がアジアで急成長している。「焼きたてチーズタルト」で知られる「BAKE(ベイク)」(本社・東京)だ。ふわりとしたクリームチーズと、タルト生地のさくさくした歯ごたえが絶妙なバランスを醸し出す。

 初の海外出店は2015年8月、香港だった。目の前で焼きたてを提供する販売方法が話題を呼び、オープンの日は300〜400人の客が列を作り、4時間待ちの大盛況だった。わずか2年ほどで台湾、シンガポール、中国、韓国、タイに23店舗を展開するまでになった。

 海外店舗網の拡大を支えるBAKEの新工場が、札幌市白石区で昨年11月に稼働した。10トンの小麦粉をふるいにかけることができる巨大な「サイロ」が2基。クリームチーズやバターなどの大量の原材料を適した温度で保管する専用冷蔵庫も備えられている。チーズタルトの生産ラインでは、トレーに並んだタルト生地に、ムース状になったクリームチーズが次々に流し込まれ、半製品のまま急速冷凍される。

 1日の生産量は10万個、海外輸出用だ。冷凍庫の中には、出荷を待つ段ボールがぎっしりと積み上げられている。「材料の鮮度をそのまま保ち、いかにおいしさを封じ込めるかが大切です」と同工場の飛鷹(ひだか)英志管理課長は言う。苫小牧港から冷凍のまま船で海外の各店舗に運ばれる。工場ではアップルパイも1日1万個生産している。

    *

 実はチーズタルトは最初、あまり売れていなかった。

 BAKEの長沼真太郎社長(31)は札幌に本社がある洋菓子メーカー「きのとや」の長沼昭夫会長(69)の長男。商社を辞めて「きのとや」に入社し、11年から新千歳空港にあった店舗を任された。しかし1日に売れるのは50個程度。当時は、工場で作ったものをショーケースの中で冷蔵して販売していた。

 転機が訪れたのは同年、シンガポールで行われた北海道物産展でのことだ。陳列用の商品の箱が手違いで足りなくなってしまった。仕方なくオーブンから取り出したチーズタルトを鉄板のまま置いたところ、急に客が集まり始めた。甘い香りとともに「焼きたて感」が醸し出され、1日100個程度だった売り上げが、一気に千個に伸びた。

 「これだ」。商品をどう見せるかで、こんなに売れ方が違ってくる。新千歳空港店でもあっという間に人気が広がった。

 12年秋にJR札幌駅にチーズタルト専門店「KINOTOYA(きのとや) BAKE(ベイク)」を出店。「北海道のおいしいお菓子を世界に届けたい」と長沼さんが13年に東京で立ち上げたのが今のBAKEだ。

 意外なことに、海外出店の際はほとんどマーケティングは行わないという。「アジアの味覚は日本と一緒。調査にかけるお金があったら出店できる。駄目なら変えればいい。スピードが大事です」と長沼さん。いずれ中東やヨーロッパへの出店も視野に、「日本を代表する菓子メーカーを目指します」。

 (芳垣文子)

 ■土産物頼みには限界も

 北海道の菓子業界はこれまで、観光客向けの土産物として発展してきた歴史がある。石屋製菓の「白い恋人」、六花亭の「マルセイバターサンド」などがその代表例だ。「きのとや」も地域密着型の菓子メーカーで、店舗があるのは道内だけだ。

 一方、最近は海外に目を向ける菓子メーカーも増えている。洋菓子店「ルタオ」(本店・小樽市)は台湾、韓国などに9店舗を展開、「札幌おかき Oh!焼とうきび」で知られる「YOSHIMI」は羽田や成田の空港の免税店エリアで商品を販売、海外を意識した展開を目指しているという。

 北海道大学公共政策大学院の石井吉春特任教授(地域経済)は「海外からのインバウンドは今のところ元気だが、『土産物』というマーケットだけではやはり限界がある。今後経営者の世代交代などに合わせ、新しい感覚で殻を破る動きがさらに出てくるのではないか」と話す。

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