メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

10月19日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

新着記事一覧へ

このエントリーをはてなブックマークに追加

水曜「働く・暮らす」【けんこう処方箋】

健康損なう最大原因は戦争 岸玲子

写真: 拡大

写真: 拡大

写真:<イラスト・佐藤博美> 拡大<イラスト・佐藤博美>

●北大名誉教授・環境健康科学特別招聘教授 岸玲子

 今年の夏、初めてポーランドの「オシフィエンチム収容所」跡を訪れた。ドイツ名で「アウシュビッツ」というこの収容所は、古都クラクフから50キロほどの距離にあった。

 ナチス・ドイツがポーランドに侵攻し、第2次大戦が始まった翌年の1940年に、政治犯を収容する目的で造られた。28棟の囚人棟やガス室・焼却炉などがあり、隣接するビルケナウ収容所と合わせ300万人に上るユダヤ人大虐殺をしたホロコーストの地として知られている。戦後は保存され、博物館として当時のまま一般公開されている。

 貨物列車で欧州各地から集められた収容者は、身体検査をされ、トランク、靴や衣類など全てを奪われた。粗末な食事で強制労働や拷問など数々の非人間的な扱いを受け、働けない者は即、ガス室に送られた。子どもや障害者などは真っ先に殺された。

 展示されているのは犠牲者の遺品の山、殺された人々の髪の毛など、目をそむけたくなるものばかりである。生体実験をして虐殺に加担した医師たちもいた。

 約5時間の見学を終え、暗澹(あんたん)たる思いで考えた。このような大虐殺をいつなら止めることができたのか? ドイツは戦後、この負の遺産をどう克服したのか? 問いかけは今も続いている。

 唯一の救いは毎日8千人に上る世界各国からの訪問者である。年間合計で200万人近い。残念ながら日本人は少ないと聞いた。

 今回私がアウシュビッツを取り上げた理由は、健康を損なう最大の原因は戦争だからである。第2次大戦では日本人310万人の命が失われ、アジア諸国では総計2千万人が亡くなった。健康や長寿を願っている私たちは、何より平和を求め、戦争の足音に注意を向けねばならない。大切な保健システムや法の原則、人道のいずれも、戦時下では崩壊してしまうからだ。

 一方、この夏にはうれしいことがあった。被爆者らの長年の運動がようやく実を結び、国連で122カ国(加盟国の約3分の2)の賛成を得て、7月に核兵器禁止条約が採択されたのである。残念ながら日本政府は参加しなかったが、世界は核抑止力を否定し、核兵器などの軍事費増に明確な「ノー」を出した。

 今年の広島・長崎の原水爆禁止世界大会は、核兵器のない世界に一歩近づくことが強く実感された。国際条約の意義は極めて大きい。唯一の被爆国民として、核を保有する国に核廃絶を訴えたい。

PR情報

ここから広告です

PR注目情報

北海道報道センターから

北海道アサヒ・コムへようこそ。
身のまわりの出来事やニュース、情報などをメールでお寄せ下さい(添付ファイルはご遠慮下さい)
メールはこちらから

朝日新聞 北海道報道センター 公式ツイッター

注目コンテンツ