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土曜「聞く・語る」【スクエア】

神秘のマリモ120年、解明進む

写真:上:阿寒湖のマリモ=2013年6月 下:球状マリモの分布域 拡大上:阿寒湖のマリモ=2013年6月 下:球状マリモの分布域

写真:上:阿寒湖のマリモ保護会副会長・松岡尚幸さん 下左:盗採防止を呼びかける看板 下右:1961年の自粛前まで、遊覧船による生育地観察が観光の目玉だった 拡大上:阿寒湖のマリモ保護会副会長・松岡尚幸さん 下左:盗採防止を呼びかける看板 下右:1961年の自粛前まで、遊覧船による生育地観察が観光の目玉だった

写真:阿寒湖のマリモ 主な被害と保全対策 拡大阿寒湖のマリモ 主な被害と保全対策

 国の特別天然記念物「阿寒湖のマリモ」が発見されて今年で120年。絶滅の危機を何度となく繰り返しながらも、地元住民らを中心とした努力と工夫によって世界で唯一その姿を残す。長年謎に包まれていた深緑の球体の解明が進む一方、海外との交流も今年広がる。「危機と保全」の歩みを地元保護団体の副会長に聞いた。

 (見崎浩一)

 ■札幌農学校生が発見

 阿寒湖のマリモは、札幌農学校(現・北大)の学生だった川上瀧彌(1871〜1915)が1897(明治30)年、阿寒湖シュリコマベツ湾で採取。翌98(同31)年に植物学雑誌に「毬藻(マリモ)」と名付けて発表したのが始まりとされる。

 以来120年。マリモは1921(大正10)年に天然記念物、52(昭和27)年に特別天然記念物に指定されるなど希少性が認められ、神秘的な球体に多くの人々が魅了されている。

 その一方、湖内に4カ所あった生育地のうち2カ所が50年代までに消滅。「伐採木材の流送」「水力発電による取水」「売買目的の盗採」「生育地への遊覧船乗り入れ」など、その時々の要因によって絶滅の危機が訪れた。そのたびに保全に向けた取り組みが展開されたが減少傾向は続き、97年には植物版レッドリストで絶滅危惧1類に指定されている。

 ■台湾との交流にも

 「マリモとは何か」「なぜ丸いのか」などは長年謎に包まれていた。が、この二十数年来の調査研究によって徐々に解明が進み、保全活動に役立てられる。「世界で唯一残る球状マリモ」と認知された。

 そのマリモが12月、初めて海外に渡り、展示される。発見命名者の川上が台湾博物館の初代館長を務めた縁で、2日から同博物館で特別展「川上瀧彌と阿寒の自然」が始まる。

 釧路市教委から贈られた人工マリモが展示されるほか、川上の阿寒湖探検や、マリモ研究の最新情報が映像やパネルで紹介される。会期は当初2週間だったが、展示内容が拡充したため、2月25日まで延長された。

 釧路市と台湾側とでマリモを通じた学術交流の覚書が締結される予定で、「マリモ外交」がさらに広がりそうだ。

 ■人が招いた危機から守るために

 ●NPO「阿寒湖のマリモ保護会」副会長・松岡尚幸さん

 阿寒湖にはかつてマリモの生育地が4カ所ありましたが、2カ所消滅してしまいました。現在残る2カ所、チュウルイとキネタンペは絶対に守らなければいけない、という思いで阿寒湖の人たちは保護活動などをしています。

 戦後は観光客誘致よりマリモ保護に重点が置かれました。マリモ盗採・密売が横行したためです。特別天然記念物への指定などでマリモ保護に関心が高まり、盗まれたマリモや土産品として持ち帰ったマリモを阿寒湖へ返そうという「返還運動」が全国的に広がりました。

 1950(昭和25)年には、水力発電所の湖水利用で水位が大きく低下し、湖底のマリモが広範囲に露出するという事態が発生。「発電かマリモ保護か」という議論に発展しました。

 たび重なる危機から地元住民が立ち上がりました。「マリモ愛護会」が50年に結成され、これを母体として64年に「マリモ保存会」、79年に「阿寒湖のマリモ保護会」(マリモ保護会)と名称を変えながら組織を発展。2013年にNPO法人化しました。

 愛護会発足の年に第1回まりも祭りが開かれました。当時の返還運動で、各地から送られたマリモを湖へ戻す際、感謝の祈りを込めた儀式を行うこととし、アイヌコタンの方々に担ってもらいました。68回目の今年もその儀式は受け継がれ、マリモ保護の大切さを伝えています。

 保護会会長だった94年、阿寒湖小6年生の生育地観察会を、97年には地元中学生の卒業記念氷上マリモ観察会を始めました。

 中学、高校の年代になると、阿寒湖の子どもたちは古里を離れます。でも行った先で「阿寒湖」と言うと必ず「マリモの所から?」と言われます。マリモはだれもが知っていて、阿寒湖に生まれ育ったことは特別なことなんです。そんな特別な場所にいる時に生育地観察という特別な体験をさせ、保護への気持ちにつながればと考えました。最初の観察会に参加した児童はいま30代半ば。地味な活動ですが、続けたいと考えています。

 私が会長に就いた翌91年、マリモの調査研究のため若菜勇さん(60)が旧阿寒町学芸員として着任しました。保護会と研究室は役割分担しながら保護活動を盛り上げてきました。「球状マリモは世界で唯一、阿寒湖しか残っていない」と科学的に証明できました。

 この120年の「マリモ消滅」「減少の危機」は、結局は人間が起こしてきたことが原因です。危機はこれからも続きますが、「阿寒湖のマリモ」を育む豊かな自然環境を守るために今できることは何か、を一人ひとりがしっかり考えることが大切だと思います。

    *

 まつおか・ひろゆき 釧路市阿寒町阿寒湖温泉生まれ。NPO法人「阿寒湖のマリモ保護会」の副会長。阿寒湖畔で旅館を営む一方、NPO法人化の前の組織「阿寒湖のマリモ保護会」の会長を1990年から24年間務めた。65歳。

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