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水曜「働く・暮らす」【けんこう処方箋】

DDT、途上国なお使用 岸玲子

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写真:<イラスト・佐藤博美> 拡大<イラスト・佐藤博美>

●北大名誉教授・環境健康科学特別招聘教授 岸玲子

 レイチェル・カーソンの「Silent Spring(沈黙の春)」は、1962年に出版された。

 DDTを始めとする殺虫剤などの有害性や、化学物質残留による生態系への影響を「春になっても鳥たちがさえずらない」という象徴的な出だしで社会に訴えた。人間が生きるための環境の重要性を訴えたこの書は、多くの国で翻訳され、後の国連の環境政策のきっかけともなった。

 私が小学生だった頃、頭髪が真っ白になるほど学校でDDTなどの噴霧がなされていたことを思い出す。厄介なのは、一度環境に出されたDDTなどの残留性有機汚染物質は、半減期が長いので、食物連鎖を通じて魚や肉などに残留し、いまだに人の血液中から検出されることである。

 「環境と子どもの健康に関する北海道スタディ」では、妊娠中の母の血液に含まれる有機塩素系農薬を測定した。この結果、有機塩素系農薬の中でDDTの代謝物が最も高濃度で、母体血中濃度が高いほど、生まれた子どもが18カ月になった時に精神発達の遅れがみられた。

 子どもの臍帯血(さいたいけつ)中の性ホルモンやステロイドホルモン値も分析した。母体の血中の農薬の濃度が高いと、アンドロゲンやエストロゲンなど特定のホルモン量が減ったり、逆に増加したり、また二つのホルモンの濃度比が変化したりといった影響がみられた。

 これらは従来、動物や貝などの問題と考えられていた環境ホルモン作用が人でも起こりうること、特に日本のように現在の残留は低濃度であっても、母がさらされた濃度が高いほど、生まれてくる子どものホルモンバランスを乱す可能性があることを、初めて示唆した論文になった。

 先進国では、1970年代初めにはDDTなどの塩素系農薬が使用禁止になった。だが途上国では、安価な殺虫剤であるDDTの使用は最近までほとんど減っていない。猛禽(もうきん)類や水生生物の減少による生態系破壊はそのままな一方、DDTに耐性のあるマラリアが増えている。

 北海道大学はアフリカ・ザンビアと健康影響の調査で協力をしている。先月、私たちの環境健康科学研究教育センターにも2人の研究者が訪ねてきて、DDTなど環境化学物質の子どもたちの発達への影響調査について、セミナーと意見交換を実施した。私たちの日本の経験が、アフリカでの研究に大いに役に立ちそうであった。

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