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土曜「聞く・語る」【ひと模様】

若菜勇さん(4)大量打ち上げの真相

写真: 拡大

写真:湖岸に打ち上げられた大量のマリモ=2002年10月 拡大湖岸に打ち上げられた大量のマリモ=2002年10月

写真:打ち上げられた大量のマリモを湖に移動させる作業=13年12月 拡大打ち上げられた大量のマリモを湖に移動させる作業=13年12月

 ●マリモ博士・若菜勇さん

 「マリモの打ち上げは被害ではありません。そもそも打ち上がる生き物なんです」。私を取り囲んだ記者やテレビカメラに繰り返し説明しても、「壊れたマリモが山積みじゃないか。なぜ放置したんだ」と、聞き入れてくれませんでした――。

 その2週間前の1995(平成7)年11月21日、マリモが群生する阿寒湖チュウルイの湖岸に大量のマリモが打ち上がりました。概況調査を続けていた時にテレビ取材が入り、その翌日に全国ニュースで流れたのです。あろうことか「マリモはいま重大な危機を迎えています」とコメントしたものですから、「一大事!」とばかりに報道陣がドッと押しかけたのでした。

 ■生産効率を回復

 《どういうことが起きたのでしょうか》

 約300メートルあるチュウルイ湖岸のほとんどが、幅3メートルにわたってマリモに埋め尽くされました。マリモはふだん沖合50〜200メートルの水深1〜3メートルの湖底に群生しており、その一部が湖岸まで運ばれたのです。

 大半は長径1〜5センチの小塊で、球状マリモが壊れて生じた断片と考えられました。岸近くの水中には大型もあり、多くは亀裂が入るなど壊れていました。総湿重量は約30トン、生育地全体の4分の1と推定され、相当な量でした。

 このような大量打ち上げは過去にも何度かあり、被害を防止すべく61(昭和36)年以降、湖岸に堤防を設けるなどの対策が採られてきました。

 けれども、おそらく人がマリモと関わる以前から打ち上げ現象はあっただろうし、実験研究を通じてマリモは大きくなるほど光合成の生産効率が悪くなると分かっていました。つまり、マリモが生物量を増やすには小さい方がいい。打ち上げは被害などでなく、小さく分かれて生産効率を回復させる重要な過程ではないかと考えられたのです。

 《打ち上げのメカニズムとは》

 仮説の裏付けには長期にわたる調査が必要でした。

 次に大量打ち上げが起こる2002年までの間に、破損断片の一部は浅瀬に戻り、中には年に2〜4センチ直径を増大させて20〜30センチに大型化するものも現れました。湖底に数層に重なり合うマリモのうち、集団の上層に位置するものが太陽光を多く得て、優先的に成長します。下層のマリモは光不足となります。

 大きなマリモが増えてきた時点で風速20メートル以上の南風が一定時間吹くと、湖水流動が起こって大型マリモが湖岸に向かって動き出す。大量打ち上げには、大きくなりすぎたマリモを周期的に集団から取り除き、湖底の光環境を回復させる効果もあったのです。

 ■生活史の一局面

 《大量打ち上げとは何だったのでしょうか》

 02年以降、大量打ち上げは07年と13年に起こりました。記録が残る1957年以降のデータも合わせると、5〜9年ごとに発生しています。この周期性がマリモの成長と連動しているのは疑いありません。

 大量打ち上げとは偶発的な被害などではなく、崩壊と再生を繰り返すマリモの生活史の一局面なのです。

 そしてこの成果は保護活動の新たな展開につながりました。壊れたマリモを使って、球状マリモを生み出す技術の開発です。

 (聞き手・見崎浩一)

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