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憲法の現場から【憲法の現場から】

(1)立憲主義

写真: 拡大

写真:上:立憲主義について市民に講義する憲法応援団の作間豪昭弁護士 下:街頭で自主憲法制定の必要性を訴える「日本のため行動する会」の坂元倫孝幹事長 拡大上:立憲主義について市民に講義する憲法応援団の作間豪昭弁護士 下:街頭で自主憲法制定の必要性を訴える「日本のため行動する会」の坂元倫孝幹事長

写真:雨宮処凛さん 拡大雨宮処凛さん

■暮らしと身近、憲法伝える

■自主憲法制定めざす 「国のあり方を規定」

 4月下旬の日曜の昼下がり、札幌駅前の歩道の一角。日の丸の旗がはためく下で、「日本のため行動する会(日行会)」の坂元倫孝幹事長(50)が、マイクを握り、通行人に呼びかけていた。「どんなものでも、時代に合わせて変えていくのはごくごく自然なこと。なぜ憲法を変えてはいけないのでしょうか」

 札幌市民らでつくる日行会は「日本の国柄と国益を守り、自主憲法制定をめざす」ことを目的に、2012年に設立。毎月、街頭演説をしている。「今の憲法は敗戦後の占領時、民主的な手続きなしで米国が『突貫工事』でつくったもの。護憲とか改憲とか言われているが、まずは憲法の悲しいスタートを知ってほしい」。坂元さんの訴えに、通行人から拍手がわいた。

 街頭演説への市民の反応は年々よくなってきていると、坂元さんには映る。「憲法は変えてもいいもの」という意識が浸透してきていると感じる。

 「独立国家であるなら、自分たちの手で時代にマッチした最高法規をつくろうというのは当然のこと。そこに右も左もない」。演説を終え、坂元さんが熱っぽく語った。「我々の国や生活のあり方を憲法が規定しているということを、もっと多くの国民に気づいてもらいたい」

    ◇

 昨年5月3日の憲法記念日、安倍晋三首相は、20年の新憲法施行をめざすと明言。自民党が12年につくった憲法改正草案では、国民に憲法尊重の義務を課す条文が加わった。憲法によって国家権力を縛るという、明治憲法以来の「立憲主義」の精神が覆されたと、多くの憲法学者が指摘する。

    ◇

■改憲論への危機感 「権利守ってくれる」

 「教育の無償化は憲法を改正しなくてもできる。マルかバツか?」

 4月26日、札幌市北区の会議室で、作間豪昭弁護士(47)が、約20人の市民に語りかけた。札幌弁護士会に所属する弁護士有志が立ち上げた「憲法応援団」の出前講座だ。4月から本格的に動き出した。この日の講座で、作間さんは「個人の権利を制限し政府の権限を拡大する方向の改憲論議には注意が必要。何のための憲法改正か、見極めが大事」と強調した。

 憲法応援団には約50人が名を連ねるが、「改憲絶対反対」で統一されているわけではなく、自衛隊を憲法に明記するべきだと主張する弁護士もいる。共通しているのは、立憲主義を軽視したような改憲論への危機感だ。「そもそも憲法とはどういう性質ものなのか。護憲派・改憲派、両方に伝わるよう、ウィングを広げていかないと」

 15年の安保関連法案への反対行動を機にSNSでつながった若者らでつくるグループ「UNITE&FIGHT HOKKAIDO(ユニキタ)」は、3日から「憲法は誰のもの?」キャンペーンを始める。これまでデモや署名活動で安倍政権の退陣を求めてきたが、改憲反対を唱えるだけでは限界があると感じ、市民との対話を通じ、立憲主義の大切さを訴えることにした。中心メンバーの佐々木瑛(あきら)さん(35)は言う。「憲法というと日常生活とかけ離れたイメージを持つ人が多いが、僕らの権利を権力から守ってくれる身近なもの。そのことを一人でも多くの人に伝えたい」

 (斎藤徹)

■問題解決の根拠示す「超便利グッズ」 前文に感動し右翼から転向、雨宮処凛さん

 1990年代後半、私はフリーターでした。自分が社会にとって必要とされていない人間だという劣等感のただなかにありました。先の見えない状況下、右翼思想に出会いました。「君たちが生きづらいのは、米国と、米国による戦後処理のせいだ」という教えに引き込まれました。右翼団体に入り、「日本人が欲望のまま行動し堕落している大本は米国から押しつけられた日本国憲法にある、だから自主憲法を制定しなければならないのだ」と、街宣で訴えました。

 ある時、右翼団体の討論で憲法改正がテーマになり、初めて憲法を読みました。「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」。前文を読み、うっかり感動してしまいました。グローバルな視点で書かれていて、これこそ世界中がめざすべき理念じゃないかと、自分の中にストンと入ってきました。右翼活動は辞めました。

 憲法を身近に意識するようになったのは、2006年に反貧困運動に参加してからです。運動のスローガンは「生きさせろ!」。最低限の生活も保障されない人たちが武器としたのが「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と定めた25条でした。生活保護を申請する役所窓口で、過労死訴訟の法廷で、最も強力なツールが25条でした。

 最近は、安倍政権に反対するデモでも「立憲主義を守れ」という言葉がよく発せられるようになりました。権力を監視し、縛りをかける法律が憲法なんだということを、今の政治を取り巻く現状を見て、みんなが共有しつつあるのではと思います。

 憲法については、百回議論するより、1回、現場で使ってみるのがおすすめです。私たちの日常生活を取り巻くあらゆる問題を解決する根拠を示してくれる「超便利グッズ」だとわかるはず。憲法は私たちの生活のすぐ隣にあるもの。そう捉え直すことで、もっと多くの人が憲法に関心を寄せてくれるのではないでしょうか。

 (聞き手・斎藤徹)

    *

 あまみや・かりん 作家・活動家。1975年、滝川市生まれ。愛国パンクバンドボーカルなどを経て、2000年、自伝的エッセー「生き地獄天国」で作家デビュー。06年から格差・貧困問題に取り組む。主な著書に「生きさせろ! 難民化する若者たち」(07年)。最新刊は「『女子』という呪い」。「反貧困ネットワーク」世話人。

■憲法前文(抜粋)

 われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。

◇日本国憲法が施行されて71年。改憲論議が盛り上がっているが、憲法は私たちの暮らしにどのように関わっているのだろう。憲法記念日を機に考えてみた。

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