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憲法の現場から【憲法の現場から】

(4)緊急事態

写真: 拡大

写真:国後島から船で脱出する際、大塚さん一家が持ち出せた家財で唯一残っているミシン。大塚誠之助さんは「これを見ると島での生活を思い出します」=札幌市豊平区 拡大国後島から船で脱出する際、大塚さん一家が持ち出せた家財で唯一残っているミシン。大塚誠之助さんは「これを見ると島での生活を思い出します」=札幌市豊平区

写真:千島歯舞諸島居住者連盟根室支部長の宮谷内亮一さん=根室市 拡大千島歯舞諸島居住者連盟根室支部長の宮谷内亮一さん=根室市

 ■ミサイル通過、住民危機感

 昨年8月29日午前6時過ぎ、滝川市の東滝川連合町内会長・米田裕紀さん(78)の携帯電話が、けたたましい音を立てて鳴った。画面を見ると、北朝鮮からミサイルが発射された模様、とあった。全国瞬時警報システム(Jアラート)だった。「頑丈な建物や地下に避難して」と呼びかけていた。

 すぐに地区の避難所の研修センターに行き、カギを開けた。ミサイルは北海道上空を通過し、襟裳岬の東方約1180キロの太平洋上に落下した。

 9月1日には同地区で、北朝鮮のミサイル発射実験に備えた道内初の避難訓練を開催。地区の約200人が参加した訓練から間もない同15日午前7時ごろ、再び北海道上空を北朝鮮のミサイルが通過した。この日、地区住民は近くの廃校になった小学校の草刈り作業に精を出していた。消防の防災サイレンが鳴り、ミサイル発射に気づき、校舎の壁際に体を寄せたという。

 「まさか本当に外国からミサイルが飛んでくるとは考えてもみなかった」と米田さんは振り返る。「滝川が狙われることはないと思うが、万が一に備えてふだんから危機意識を持つことが大事だと実感した」

     ◇

 根室市の宮谷内亮一さん(75)は73年前、「外国の脅威」を体験した。第2次大戦終戦後の1945年12月15日深夜、濃霧が立ちこめる国後島の入り江から、宮谷内さんの家族9人は小さな船を出した。島に侵攻してきたソ連兵に見つからないよう、ぬらしたむしろをエンジンと煙突に巻いて音を消した。大人たちは、当時2歳で泣き声を上げる宮谷内さんをたたくなどして黙らせ、脱出した。この恐怖感は、今なお宮谷内さんのトラウマになっている。

 現在、北方四島の元島民らでつくる「千島歯舞諸島居住者連盟」根室支部長を務める宮谷内さんは、戦争について「国のあり方やそこでの暮らしをすべて変えてしまう。プラスを生まない」と捉える一方、「自衛・防衛のための対策は必要」とも言う。憲法については「今のままでずっとよいという立場ではない。守るべくは守り、時代に合わせるところは変えていくことが必要だ」と考える。

 だが、自民党が改正憲法に盛り込もうとしている「緊急事態条項」については慎重な立場だ。

 自民党が2012年にまとめた憲法改正草案では、緊急事態の対象を「外部からの武力攻撃」や「内乱」、「大規模な自然災害」などとしていた。今年3月の条文案では、対象を「大地震その他の異常かつ大規模な災害」に限定したうえで、内閣の権限強化と国会議員の任期延長を明示した。

 宮谷内さんは、根室市職員を務めた経験から「大規模災害では地方自治体が頑張っても限界があるから、政府の力でやってもらわなければ困ることもあるが、緊急事態条項を憲法に入れるのは早計だ。もっと議論を重ねるべきだ」と言う。

 札幌市の大塚誠之助さん(82)も、ソ連が侵攻してきた国後島から脱出した。1945年9月の真夜中、船で島を脱出した際、持ち出せた家財はわずかだった。札幌での新生活は苦労が多かったが、73年間、国内で戦争の惨禍がなかったのは憲法のおかげだと思っている。

 「北朝鮮のミサイルが危険でないとは言わないが、500キロ以上も離れた上空を通過しただけで『国難』とあおるのは、過剰反応ではないか」。北朝鮮と韓国の首脳が4月末に朝鮮半島の「完全な非核化」目標で合意した今、なおさらそう感じる。「むやみに近隣諸国への敵対心をあおった果てに戦争に向かった過去の経験を、忘れてはいけない」

 (神村正史、斎藤徹)

 ■自民党改憲草案(2012年4月) 内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる。

 ■自民党改憲4項目条文案(18年3月) 大地震その他の異常かつ大規模な災害により、国会による法律の制定を待ついとまがないと認める特別の事情があるときは、内閣は、法律で定めるところにより、国民の生命、身体及び財産を保護するため、政令を制定することができる。

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