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憲法の現場から【憲法の現場から】
(5)安全保障
■「活動もっと」「増強ノー」
2016年12月16日。アフリカ・南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣されていた第7師団(司令部・千歳市)を中心とする第10次隊の主力部隊第2陣が帰国し、同市の陸上自衛隊東千歳駐屯地が大勢の人でわいた。「自衛隊のみなさん ご苦労様でした」。のぼりを立てて出迎えるOBの中に、元陸将補の菊池伯(つかさ)さん(66)の姿があった。迷彩服の隊員がまぶしく見えた。「本当に精悍(せいかん)。良い経験をしたんだなと思いました」
帰国報告の後、隊員たちは集まった家族のもとに歩み寄り、再会を喜び合っていた。「無事に帰ってきてよかった。ご家族は本当に心配してたんだよね」。当時を振り返って言う。
第10次隊が派遣されていた16年7月、首都ジュバで大規模な武力衝突が起きた。「戦闘状態ではないが火種は残っていたのでしょう。ただ、自分たちが狙われたわけではなく、勤務の大半は淡々としたものだったようだ」とした。
菊池さんはかつて第7師団で各部隊間の通信網をつなぐ第7通信大隊長を務め、08年に勇退。現在は、自衛隊OBでつくる公益社団法人の地方組織「千歳地方隊友会」会長を務める。自衛隊が活動しやすいよう、地域との橋渡しや政策提言などをする団体だ。
15年に安全保障関連法が成立し、「駆けつけ警護」ができるようになるなど自衛隊の活動範囲は広がった。「派遣される隊員の負担は増すが、当たり前のことがやっといくらか認めてもらえた」と受け止める。ただ、憲法9条を踏まえ、「武器使用は要員防護のための必要最小限に限定」などを盛り込んだPKO参加5原則は残る。「派遣するしないは政治判断だが、派遣してもできることはこれだけ、というのは違う気がする。他の国々と横並びになるにはどうしなければいけないか、もう少し考えてほしい」
岩手県内の進学校から同級生で唯一、防衛大へ進んだ。高校の同級生の集まりでは「(自衛隊は)憲法違反だろ」と今も言われる。「そりゃ、悔しいですよ。人生の半分以上をかけてやってきたことですから」。後輩が同じ思いをしないためにも、これだけ国民に受け入れられるようになった自衛隊を憲法に明記してほしい、と望む。「もう憲法違反と言われたくない」
◇
■自衛隊への「たが」どこへ
同じ千歳市で、平井史郎さん(75)は15年、安保関連法制定に反対を訴えた。自衛隊員を戦場に送ることになるとの危機感からだ。翌年、南スーダンへのPKO派遣の際、発足した市民団体「ピースアクションinちとせ」の事務局長に就き、再び声を上げた。
活動場所は主にJR千歳駅前で、駐屯地前はなるべく避けた。「隊員が悪いわけではないし、家族にとって派遣がどれだけつらいかわからない。隊員にではなく、社会に訴えて派遣反対の世論をつくりたかった」
亡くなった兄は元自衛隊員。自らも高校卒業前、試験に受かった。先生に勧められた地元の企業に先に決まったため入らなかったが、身近な存在であることに変わりはない。
今の国際情勢では一定の実力組織を持つことはやむを得ないと思う。でもそれは今の憲法のもとで十分可能ではないか。「憲法を変えたら増強されてしまうに決まっている。たがが外れるわけだから」と言う。
昨年12月から改憲阻止の署名活動を進める。5月初めまでに2200人分余りが集まった。決して少ない数字ではない、と自負している。
(片山健志)
■安全保障関連法
集団的自衛権の行使の要件を盛り込んだ改正武力攻撃事態法など10の法律を一括した「平和安全法制整備法」と、自衛隊の後方支援について新たに定めた「国際平和支援法」からなる。このうち、放っておくと日本が攻撃されてしまうような状況で自衛隊が他国軍を後方支援するため、周辺事態法を改正したのが重要影響事態法。世界のどこでも日本の安全に関わる事態が起きたと判断すれば後方支援を可能にし、支援対象を米国以外にも広げた。自衛隊の活動が広がる一方、戦闘に巻き込まれる危険が増すと指摘されている。
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