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憲法の現場から【憲法の現場から】

(6)教育環境整備

写真: 拡大

写真:理事長の高橋さん(左奥)らスタッフが、中高生の勉強を見ている=札幌市東区 拡大理事長の高橋さん(左奥)らスタッフが、中高生の勉強を見ている=札幌市東区

 ■学びの機会、すべての人に

 金曜夜、札幌市東区の一軒家に中学生や高校生が集まってきた。家庭環境や経済的な理由で学びの機会が失われている子どもたちの学習を支援するNPO法人「カコタム」(札幌市)の勉強の場だ。この日来たのは4人。2階に上がると、それぞれ参考書や教科書を広げて勉強を始める。

 スタッフが間に座る。数学の計算問題でてこずっていた中3の男子生徒を、女子大学生が手助けする。

 「かけ算はこことここをかけ合わせて。約分は斜めでね」「え、約分ってどうやるんだっけ? サボってたから分かんないや」

 15分の休憩時間は1階に降りてみんなでテレビを見る。ボランティアの女性2人がごはんを炊いて握ってくれたおむすびをほおばりながら、おしゃべりで盛り上がった。勉強は午後8時半まで続いた。

 札幌市内の公立高校2年生の女子生徒(16)は中学生のときに通い始めた。小学校低学年まで関東地方にいたが、両親の離婚を機に札幌に引っ越した。父親は給料が出るとパチンコや酒につぎ込んだ。

 離婚後、父親の行方は分からない。母親はいつも疲れていて、食費を切り詰めていることも感じている。そんな女子生徒にとって、ここは大切な場所だ。「塾って堅いイメージがあったけど、楽しくて友達がいっぱいできた。第2の学校みたい」。高校受験のときはここで集中的に勉強し、合格できたという。一方で将来への不安も口にする。「大学には行きたい。でも奨学金といっても借金だし、返せなくて自己破産とか聞くと心配になる」

     ◇

 2017年12月時点で、道内で生活保護を受給していたのは12万3921世帯、16万3350人。人口全体に占める受給者数の割合は3・05%で、大阪府に次いで2番目に高い。

 道は16年に札幌市を除く13市町で保護者約1万1千人、子ども約8千人を対象に生活実態を調べた。親の年収が下がるのに伴って「授業がわからない」と答えた子どもの割合が増える傾向が見られた。

 憲法26条には「教育を受ける権利」が定められている。自民党は、今春とりまとめた「改憲4項目」の一つに26条を挙げ、国は「各個人の経済的理由にかかわらず教育を受ける機会を確保することを含め、教育環境の整備に努めなければならない」との項目を新設すべきだとした。

 ■家庭・経済…悩む子支援

 だがカコタム理事長の高橋勇造さん(31)は、この文言は不要と考えている。経済的な理由以外で教育を受けられない場合、その枠から外れてしまう可能性があるからだ。経済的には余裕がある家庭でも、環境や親の価値観によって進学が難しい場合があるという。「憲法に書く以上、考えられる全てを網羅する必要があると思う。教育を受けられない理由を限定するような書き方はしない方がよいのではないか」

 高橋さんは、親や親に代わる存在の愛情を受けて育つことが、学習意欲や成長過程で人間関係を築く中で非常に重要だと指摘、学びの機会格差をなくすことを最優先に活動を続けている。

 北海道教育学会会長で北大名誉教授の姉崎洋一さん(教育法)は、こうした現場の声を法的権利に結びつける必要性を強調する。「憲法の理念は教育によって実現できるとも言え、学習権は全ての権利を行使するための前提となる。家庭環境や経済的な理由などによって、教育の機会が奪われることがあってはならない」

 (芳垣文子)=終わり

 ■憲法26条

(1)すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。

(2)すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。

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