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水曜「働く・暮らす」【けんこう処方箋】

キホンのキ、鬼門の「無菌操作」大日向輝美

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写真:<イラスト・佐藤博美> 拡大<イラスト・佐藤博美>

 ●札幌医大保健医療学部長 大日向輝美

 「今どきの新人は無菌操作が正しくできない」「清潔と不潔の区別も身についていない」――こんな看護師の嘆きを耳にした。

 「清潔」「不潔」「無菌操作」は、診療に伴う感染予防に関わる医学用語だ。

 「清潔」とは、人体を含む物体の表面に病原微生物が付着していない状態のこと。逆に付着しているのが「汚染」。医療の現場では、病原体の存在が疑われれば、全てを「汚染」とみなす。「不潔」は清潔でないことを意味する慣例的な言い方である。

 感染予防に重要なのが「消毒」と「滅菌」。「消毒」は病原微生物を除去したり死滅させたりすること。「滅菌」は全ての微生物を完全に除去もしくは死滅させることで、その状態が「無菌」だ。

 滅菌した無菌物を扱うのが「無菌操作」。外科手術や傷の手当て、体の内部にカテーテルを挿入する検査や処置、注射や採血など、病原体の侵入リスクのある医療行為に必須の技術だ。身体への病原体の侵入は患者の生命の脅威となるから、安全を守る上での「キホンのキ」といえる。

 しかしこの「キ」を身につけるのが難しい。なぜかというと、微生物は目に見えないからである。そのうえ、無菌操作が行われる環境は(特殊な場合を除いて)汚染状態だから、滅菌物の無菌状態を保つのは大変だ。少しでも汚染物に触れてしまうと、全てが台無しになってしまう。

 無菌操作では日常と異なる振る舞いが求められる。通常、道具を扱う時は身体に近づけるのが上手なやり方だが、無菌操作の時は滅菌物との距離を保つのが原則だ。衣服や身体との接触を防ぐためである。

 看護師になりたてのころは、清潔・汚染の区別もあやふやな上、うっかり滅菌物を汚染させてしまうことがたびたび起こる。「フケツ!」と指摘されてもはじめはピンと来ないが、徐々に清潔・汚染の観念と適切な振る舞いが身についていく。かく言う私も、新人のころは滅菌物を汚染させては叱られていた。

 「キホンのキ」ゆえに、学生時代に繰り返し学ぶ事柄だが、学内のバーチャルな学習で医療現場の現実に対応できる能力が身につくはずもない。感染予防は実地で習得するしかない技術なのである。

 いつの時代でも新人にとって、無菌操作は鬼門だ。だが適切な指導がなされれば、数カ月後にはきちんと対応できるようになることを請け合っておこう。

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