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土曜「聞く・語る」【スクエア】

「百年記念塔」進む老朽化、行く末は

写真: 拡大

写真:完成から約半世紀を迎える北海道百年記念塔 拡大完成から約半世紀を迎える北海道百年記念塔

写真:左:山崎幹根教授 中:戎谷侑男さん 右:杉浦正人さん 拡大左:山崎幹根教授 中:戎谷侑男さん 右:杉浦正人さん

 ■北海道150年迎え、方針決定へ

 札幌市厚別区の野幌森林公園にそびえる「北海道百年記念塔」が揺れている。老朽化が進み、現在は塔内部と周辺は立ち入り禁止に。「北海道150年」を迎える今年中に、道は存続か解体か今後の方針を決める予定だ。その前に、記念塔の生い立ちをたどり、その行く末を考えてみたい。

 (山内浩司)

 歴史の節目に何か大きなモノを残したい、と考えるのは、洋の東西、古今を問わない人間の本質かもしれない。

 1962年に開かれた第1回開道百年記念準備委員会の席上、当時の町村金五知事は、米国・ラシュモア山の歴代大統領の彫刻を引き合いに、こんな趣旨の発言をした。

 “あのような立派なモニュメントには若者を報恩、感謝、発奮させる効果が非常にある気がする。僕はああいうものが欲しい……”

 こんな意向が忖度(そんたく)されたのかは定かではないが、記念事業で記念碑(塔)の建設は当初から盛り込まれていた。

 「北海道百年記念事業の記録」によると、当初、注目を集めたのは、大通公園に高さ約33メートルの塔を建て、上部に明治天皇や黒田清隆ら、下部に開拓功労者の像を配置する提案。これには異論も出て、アイヌ民族や開拓事業の犠牲となった労働者や囚人らの慰霊碑(塔)などの建設案も多かったという。

 当時は高度経済成長末期にあたり、北海道では札幌五輪の招致などの大型プロジェクトが決まるなど、未来へ伸びゆく北海道というイメージが実感できる時代だった。一方、ベトナム反戦運動の激化など社会運動も高まりをみせていた。開拓からすべての歴史が始まったようにとらえる「北海道百年」事業に対しても、先住民であるアイヌ民族の存在を軽視しているといった批判も強かった。

 そうした世相を意識してか、記念事業協議会は記念塔の性格について、特定の人物や対象に限定せず「開拓の先人に対し感謝と慰霊のまことを捧げ」「将来に向かってのたくましい北海道の建設を誓う道民の総意を込めた」ものにする方針を決める。

 67年に道が道民1200人を対象に実施した世論調査では74%が塔建設に賛成、反対は7%、不明19%という記録が残る。だが、巨額の建設費には「無駄遣い」という反発は根強く、道民からの寄付は低調だったという当時の新聞報道もある。

 ■撤去でも4億円

 道は2016〜17年、百年記念塔を含む野幌地区にある歴史文化施設の今後を考える懇談会を設け、学者や観光事業者ら7人が議論した。

 道の試算では、今後50年間にかかる記念塔の維持管理費は、展望台を使えるように補修した場合は約28・6億円、安全性を確保した現状維持で約26・5億円、解体撤去しても約4・1億円にのぼる。道は安全性や将来世代の負担軽減などを考慮し、ヒアリングやアンケートをした上で年内に具体案を出すという。

 ■解体・補修・そのまま…議論必要

 それでは記念塔はどうすべきなのだろう。

 懇談会メンバーでもあった北大大学院法学研究科の山崎幹根教授は、存続を巡る議論を「北海道の歴史と未来を、みんなで考えていくための機会にすべきだ」と語る。

 大阪の「太陽の塔」や広島の「原爆ドーム」などの保存運動が参考になるのではないかという。「ただ、前提になるのは『残したい』と考える市民の強い希望。今のところ、そうした動きが感じられない」と話す。

 「空に向かって垂直に伸びゆく北海道はこの50年で達成された。これからは水平に広がるイメージに切り替えてもいいのではないか」と、旅行会社シィービーツアーズ社長の戎谷侑男(ゆきお)さんは言う。

 記念塔の代わりに、メモリアルなものを残し、植樹やアイヌ民族の伝統家屋チセなどを建てる方法もあると提案する。「これから50年、80年と維持するのは難しいのでは」

 札幌建築鑑賞会を主宰する杉浦正人さんは大胆だ。

 「あえて何もしない」

 現在の価値観や歴史観からみれば、巨大なモニュメントを作るような行為には反対。だが、調べてみると、札幌・江別の27小中高校で校歌や校章に記念塔が使われていた。

「半世紀近い歴史を重ね、景観も定着している。建設までの経緯を知ると、様々な思惑の中で生まれたこともわかる。そうした歴史も含め、経費などの効率性の観点からだけで、解体して“なかった”ことにするには抵抗を感じる」

 輝かしいと信じた未来の姿の現実、時の流れの厳しさ、歴史とは何かといった問題を、朽ち果てていく記念塔が、痛みを持って感じさせてくれるのではないか。「自然にまかせてその姿を遠くから見守る選択肢は考えられないでしょうか」

 今秋にシンポジウムを開くなど、記念塔を考える機会をつくっていきたいという。

     ◇

 記念塔の今後について、読者の皆さんのお考えもメール(hokkaido@asahi.com)でお寄せください。

 ■高さ、地上25階建て相当

 北海道百年記念事業として1970年に完成。高さは100メートルで地上25階建てに相当する鉄骨トラス構造。地上23メートルに展望台がある。上から見ると雪の結晶の六角形になり、塔に設けた突起で「北」の文字に見えるようデザイン。外装材には、さびることで耐久性が高まり、独特の風合いをみせるコルテン鋼(無塗装耐候性高張力鋼板)を使用。総工費は約5億円で、半分は道民の寄付でまかなわれた。

 96年ごろから、老朽化による外壁などの一部落下が確認された。道は92年と99年に2億〜3億5千万円をかけて大規模な補修工事をしたが、2014年から塔内部及び周辺への立ち入り禁止が続いている。

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