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土曜「聞く・語る」【北の文化】

縄文時代はすごいのか? 望月昭秀

写真: 拡大

写真:森町の鷲ノ木遺跡から出土したイカ形土製品 拡大森町の鷲ノ木遺跡から出土したイカ形土製品

 ●望月昭秀 「縄文ZINE」編集長

 ■土地の暮らしが生んだ「特別」

 縄文時代のフリーペーパーなんて作っていると、よく聞かれることがある。なんで縄文なんですか?とか、なんで縄文好きなんですか?だとか。最初のうちは、星野道夫さんの「旅をする木」という名著があって……とか、クルマを買って最初の遠出が縄文遺跡だったんだ、とか、丁寧に順を追って縄文好きになった経緯などを説明していたのだが、説明の面倒くささから、いまでは「好きなことに理由なんてない」とビシリと釘を刺すようにしている。

 で、結局のところ縄文時代ってすごかったの?と、聞かれることもある。これも最初のうちは、「すごいっていうよりも面白い」と、自分のフィールドに引き込んで話をしていたんだけど、この漠然としたすこしトゲのある質問が実は曲者で、質問者は縄文時代そのものに疑惑の目を向けているのだ。縄文時代の非公式広報者として、看過してはいけなかった。この場をお借りして、この質問に答えたいと思う。

  ◇ ◇ ◇

 縄文時代の草創期、土器という人類屈指の発明をいち早く採用した縄文人はその時点で世界最先端だった。これはわかりやすく「すごい」のだが、それから1万年の間には、世界では四大文明が勃興し、エジプトでは巨大なピラミッドが建設されるまでになってしまった。文明というスケールで縄文時代を測ると、決して「すごい」とはいえないだろう。

 では世界中の狩猟採集民や独自の文化を持つ民族と比べてみたらどうだろう。近代化された社会では到底作り得ない造形や、現代人から見るとユニークな風習、独自の哲学に自然と調和した風俗。比べてみればみるほど、どの文化も興味深い。縄文だけが突出しているわけではない。

  ◇ ◇ ◇

 取材以外でも、よく縄文遺跡巡りをしている。北海道も北東北も何度も訪れた。蚊に食われながら案内してもらったキウス周堤墓群、景色の最高な大船遺跡に高速道路の真上にある鷲(わし)ノ木遺跡(ここからは“いかめし”そっくりの土製品が出ているが、この地域では現代でもいかめしが特産品だ)。もちろん国宝の中空土偶にだって会いに行った(現在は東京・上野に出張中)。青森の三内丸山遺跡のスケールに、秋田のストーンサークル。岩手の御所野遺跡ではイベントの手伝いまでやらせてもらった。他の地域も訪れているのだが、その度に縄文文化は一つではないことに気づかされる。例えば信州や山梨あたりの縄文文化と北東北・北海道の縄文は、同じ縄文文化であってもその様相は大きく違っている。

 なぜかは分かっている。その要因はもちろんその土地だ。縄文文化は地域や彼らを取り巻く自然に根ざした文化なのだ。

 僕は思う、「すごい」かそうでないかは重要ではない。その地域性に根ざした文化は掛け値無しに「特別」なのだと。文化はその場所でしか育まれないものなのだと。その地域性に育まれて当たり前のように紡がれる。そのことこそが本当の普遍性なのだと思う。

 「北海道・北東北の縄文遺跡群」は、世界文化遺産の国内推薦候補に決まった。登録まで関門はあるが、大きく前進したことは確か。素直に喜びたい。しかしどちらにしても、この土地の「縄文」は、この土地に住む私たちにとって特別で普遍的な文化なのだ。縄文はすごくない。だからこそすごい。

     ◇

 もちづき・あきひで 「縄文ZINE」編集長 1972年、弥生の遺跡である登呂遺跡で有名な静岡県生まれ。株式会社ニルソンデザイン事務所代表。2015年からフリーペーパー「縄文ZINE」を発行。著書に『縄文人に相談だ』(国書刊行会)、新刊に『縄文力で生き残れ』(創元社)。

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