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水曜「働く・暮らす」【けんこう処方箋】

看護師の職業病、腰痛対策を 大日向輝美

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写真:<イラスト・佐藤博美> 拡大<イラスト・佐藤博美>

 ●札幌医大保健医療学部長 大日向輝美

 「腰痛で仕事の継続が難しくなってきた」。久々に顔を合わせた卒業生が言った。彼女を含め、看護師の多くが腰に痛みを感じながら働いている。

 厚生労働省の「職場における腰痛予防対策指針」は、腰痛の発生要因として(1)人力による抱え上げなど腰部に過度の負担を加える「動作要因」(2)作業空間や勤務体制といった労働者を取り巻く「環境要因」(3)年齢や性別、疾患の有無などの「個人的要因」――を挙げている。さらに、2013年の改訂版で追加されたのが(4)仕事上の対人ストレスに代表される「心理・社会的要因」。職場の腰痛は、これらが複合的に絡み合って発生する。

 全業種の業務上疾病の6割を占める腰痛は、看護・介護等の保健衛生業では8割に及び、労働安全上の問題でもある。だが、看護職員の発生件数は、介護職員に比べてかなり少ない。労働災害としての申請が無いからだ。「腰痛持ち」の看護師はそこかしこにいるし、現場には種々の発生要因が存在していることからみて、この統計が実態を反映しているとは思えない。

 日本医療総合研究所の13年の調査によると、急性期病院の看護職員で腰痛がある人は70%で、4人に1人が強い痛みを抱えていた。腰痛で離職を考えたことのある看護師は24%もいた。

 看護師全体の5〜7割が腰痛を訴えているとの報告もある。しかし、業務に影響するほどの腰痛でも、看護師はほとんど仕事を休まない。腰痛で欠勤したことがあったのはわずか9%である。

 看護師はなぜ休まないのか。文献を探って考えられたのは、次の4点だ。

 一つ目。腰痛は職業病だから「仕方ない」とあきらめる傾向と、我慢しながら働くことに価値を置く組織風土。

 二つ目。日頃接している重症患者と比較して、自身の「腰痛くらい」では健康障害とみなさない健康認識。

 三つ目。腰痛原因や予防に関する知識、労働安全や制度についての認識不足。

 四つ目。腰痛予防を個人任せにしている組織の現状。14年の日本看護協会の調査によれば、腰痛対策に取り組んでいる病院はわずか38%。こうしたことが労災申請の少なさにもつながっている。

 腰痛に耐えながらの看護は患者の安全を損なう危険因子にもなる。看護師の不養生が看護・医療の質の低下につながらないよう、組織的な予防対策と意識改革が必要だ。

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