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土曜「聞く・語る」【スクエア】

札幌11人死亡火災から半年

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写真:左上:山内太郎さん 右上:井上雅雄さん 下:ほっとらんどの訓練。全員が建物の外に避難するまでにかかる時間を計った=北広島市 拡大左上:山内太郎さん 右上:井上雅雄さん 下:ほっとらんどの訓練。全員が建物の外に避難するまでにかかる時間を計った=北広島市

写真:布田一樹記者 拡大布田一樹記者

 入居者11人が亡くなった札幌市東区の共同住宅「そしあるハイム」の火災から半年が経った。生活困窮者や身寄りのない高齢者は、どうすれば安全な住居を確保できるのか。火災は、私たちに問いを投げかけた。住まいのセーフティーネットをめぐる課題について、岡山県で入居支援に取り組むNPO法人理事長と道内でホームレス支援に携わる社会福祉学者に聞いた。

 ■単独支援は限界、連携を/NPO法人「おかやま入居支援センター」理事長・井上雅雄さん(56)

 おかやま入居支援センターは精神障害者の支援が中心だ。大家が家賃滞納や近所とのトラブルを心配し、こうした人たちの入居を断るケースがある。私たちは不安を取り除くため、入居者本人の了解を得たうえで、通院先などの情報を大家に提供し、問題があれば連絡できるようにしている。センターが保証人になることもある。

 昨年10月の改正住宅セーフティネット法の施行は、基本的には良い方向だ。入居を断らない住宅を増やす考えは間違っていない。さらに、私たちのような活動をする団体を「居住支援法人」として法律に明示。物件探しなどの入居時の支援、見守りなどの入居後の支援、そして家賃債務保証の三つが必要だ、と示したことは大きい。

 しかし、私たちだけで入居者の支援を全てやろう、とは考えていない。医師や社会福祉士、ケースワーカーらと連携することが大切だ。私たちに、単独で支援できるほどの余裕はない。入居者にとっても、一つの機関との関係だけだと、そこが切れたら終わってしまう。結局は、どこまでを自分たちでやり、どこからを他の機関に頼むか、という切り分けの問題だ。

 札幌市内でも、居住支援法人がいくつか指定されている。9月、そのうちの1法人と意見交換をする予定だ。札幌でも、私たちと同じような活動はできると思う。

    *

 いのうえ・まさお 1961年生まれ、弁護士。2009年、医師や不動産業者らとともに、障害者や高齢者、生活困窮者らの住宅確保などを支援するNPO法人「おかやま入居支援センター」(岡山市)を設立。同センターの理事長を務める。

 ■貧困は身近、問題共有を 札幌国際大短期大学部准教授・山内太郎さん(43)

 生活困窮者は社会的な孤立という問題を抱える。経済的な支援だけではなく、他者とのつながりが必要だ。国の新しい住宅支援制度で、「居住支援法人」が家賃の債務保証や安否確認によって入居者の生活を支えるのも、住む家だけではなく支える人が必要だから。札幌市内で活動する支援法人は六つ。今後さらに増えてほしい。

 しかし、どんな事業者が支援法人になるのか、注意しなければならない。入居者が家賃を滞納した場合、「見守りに行く」と言いながら家賃を取り立てれば、入居者を苦しめることになりかねない。滞納の原因を知り、一緒に解決策を考える姿勢が大切だ。

 一つの居住支援法人ができることには限りがある。新しい住宅支援制度では、自治体や不動産の関係団体などが「居住支援協議会」を作ることになっている。複数の団体が連携すれば、解決の糸口が見つかることもある。行政が率先し、協議会を作ることが大事だ。

 行政による困窮者支援の費用は、税金で賄われる。そこには社会の合意が必要で、結局は私たちの問題だ。そしあるハイムの火災で、近所に困窮者向けの共同住宅があることを初めて知った人もいたのではないか。貧困問題は遠い世界で起きている話ではなく、身近な問題だと認識する。そのことが合意形成には重要だと思う。

    *

 やまうち・たろう 1975年生まれ、札幌国際大学短期大学部幼児教育保育学科准教授(社会福祉学)。北海道大学院博士課程中退。学生時代からホームレス支援活動に取り組む。一般社団法人「札幌一時生活支援協議会」代表理事を務める。

 ■当事者意識、社会変える/北海道報道センター・布田一樹

 「障害は、いつ誰が(持つように)なってもおかしくないんよ」。岡山市の不動産会社「阪井土地開発」の阪井ひとみ社長(59)が取材で語った言葉だ。

 同社は約20年前から、精神障害者や身寄りのない高齢者らに住まいを提供してきた。こうした人たちは、家賃滞納や室内での孤独死を懸念する大家から入居を断られるケースが珍しくない。それでも受け入れてきたのは「自分も同じ立場になる可能性があるのに差別するのはおかしい」という当事者意識があるからだ。

 そしあるハイムの火災は、老朽化し災害に脆弱(ぜいじゃく)な建物が、生活困窮者らの住まいになっている現状を浮き彫りにした。同様の火災は過去に繰り返され、その度に困窮者の住まいの問題に光が当てられた。だが、時間が経つと議論は低調になり、行政による支援は進まなかった。

 背景にあるのは何か。社会の一人ひとりに、この問題に対する当事者意識が欠けていることだ。しかし、「自分には全く関係ない」と言い切れるだろうか。自分や身の回りの人が突然病気にかかり、仕事を失い、家を追われるかもしれない。その時、安全な住まいを見つけることが困難な社会で良いのだろうか。

 当事者意識を持つことで何が変わるのか。例えば、低所得者や障害者らの入居を断らない「セーフティネット住宅」。全国的に自治体への登録戸数が伸び悩むなか、自分も力になろうと空き家を登録するオーナーが出てくるだろう。家賃債務保証や安否確認などで入居者を支援するNPO法人や企業の増加も期待できる。支援の担い手が増えれば、大家がより安心して物件を登録でき、住まいの受け皿はより大きくなる。関心を持つ人が多いほど、誰もが安全な住まいを見いだしやすい社会になるはずだ。

 ■法的位置づけない下宿型施設、札幌市内11件

 1月に発生した「そしあるハイム」の火災は、老朽化した建物に火が一気に燃え広がり、被害が拡大したとみられている。札幌市によると、ハイムと同様に法的位置づけがない下宿型施設は市内に11件ある。そのうち、自動火災感知器や誘導灯がなく消防法違反が疑われるのは1件、非常用照明装置がないなど建築基準法違反が疑われる施設は6件あった。

 一方、道内では自主的に避難訓練をする生活困窮者向け施設もある。北広島市のNPO法人「ほっとらんど」は6月、運営施設で訓練を初めて実施。入居者ら12人が参加した。消防署員から消火器の使い方を学び、外へ避難するまでの時間も計った。

 理事長の盛誠逸さん(67)は「ハイムの火災を知り、1人も犠牲者を出したくないと思った。施設にスプリンクラーを付けるとしたら約970万円かかるので難しい。できることからやっていきたい」と話す。

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