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土曜「聞く・語る」【北の文化】

百年記念塔の再生を考える 井尻哲男

写真: 拡大

写真:老朽化が進む北海道百年記念塔 拡大老朽化が進む北海道百年記念塔

写真:端聡氏のリノベーション案のイメージ図 拡大端聡氏のリノベーション案のイメージ図

 ■再構築し、自然との「共生」を

 私はこの3〜4年、札幌を中心とした歴史的建造物の保存問題に関心をもってきた。調べてみると、これまで多くの貴重な建造物が不幸にも解体され、その結果、地域社会が文化的資産を蓄積させ、そのエリアをより豊かなものにする機会を失ってきた事例をいくつも発掘できた。こうした損失に何とか歯止めをかけたい思いで、雑誌などに寄稿し訴えてきた。昨年10月以降、北海道百年記念塔(札幌市厚別区)問題に取り組む際にも、解体か存続という二者択一ではなく、可能な限り残す(第三の道)方策を模索し、歴史的建造物保存問題について、いままでとは違った展開ができないかと、一市民として考えている。

  ◇ ◇ ◇

 今年3月、たまたま札幌を中心に先鋭的な芸術活動を続けている現代美術家の端聡氏に、記念塔の将来像について相談にうかがった。あてがあったわけではなかったが、結果的に完成度の高い案が提示された。

 端氏の提案は、百年記念塔を一度解体した上で、記念塔が作られた時に道が掲げた“未来への発展の象徴”というテーマを踏まえつつ、“新たな思想”も導入して、解体した塔の部材をもとに、新たなモニュメントを構築し、リノベーション(再生)させるというものである。

  ◇ ◇ ◇

 では、新たな思想とはなにか。端氏は札幌芸術の森野外美術館に展示されている故砂澤ビッキの彫刻『四つの風』をもとにコンセプトを展開してゆく。1986年に設置されたこの作品は、高さ約5メートルの4本のエゾマツの柱がそびえ立つものだが、うち3本の柱は既に大地に倒壊し、そのままになっている。ビッキ自身が「風雪という名の鑿(のみ)が作品を完成させる」として、自然倒壊を望んでおり、生命の終わりと同様、この彫刻作品も自然に還(かえ)るものと捉えている。すなわちビッキのルーツであるアイヌ文化の「自然との共生哲学」を、記念塔のモニュメントでも取り込み、再構築した鉄の造形作品もまた、風化し、朽ち果て、大地に還るまでのドキュメント作品として提案するのである。これはアイヌ民族の思想に対する敬意を形で表したものと言えるだろう。

 このプランは4月以降、一部関係者及びマスコミなどに開示し、7月にはHTB北海道テレビの夕方の情報番組「イチオシ!」でも紹介された。その中で、高橋はるみ知事はインタビューで次のように話している。「百年記念塔をなにがしかの形で新しいものにするとすれば、私はアイヌの人たちをはじめとするいろいろな人たちの『共生』のシンボルとなるような、そういった施設であり公園空間になればいい」

 いかがであろうか。端氏の提案は道として全く受け入れられないものではないと思う。また2020年には、白老町にアイヌ民族博物館・民族共生公園が誕生する。しかし、当該施設の主体は国である。道自らもこれとは別に、端氏提案のような、共生を象徴するモニュメントを造るということも、また意義のあることではないだろうか。

    ◇

 いじり・てつお 建築史家 1951年、東京生まれ。東京の民間企業を退職後、2011年に札幌へ転居。開道五十年記念で建てられた札幌の野外音楽堂の調査をきっかけに、建造物保存運動にかかわる。現在、月刊「北方ジャーナル」誌に「北海道百年記念塔の再生に向けて」を連載中。

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