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水曜「働く・暮らす」【けんこう処方箋】

「安全・安楽」どういうこと? 大日向輝美

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写真:<イラスト・佐藤博美> 拡大<イラスト・佐藤博美>

 ●札幌医大保健医療学部長 大日向輝美

 看護の基本原則で最も重視されるのが「安全・安楽」である。看護師は常に対象となる人々の安全・安楽を考慮しながら行動している。「安全・安心ではないのか?」という声が聞こえてきそうだが、この点については後ほど。

 「安全」とは、言うまでもなく危険のない状態を指す。人間にとっての最大の危険は、生命が脅かされること。医療の対象となる人は、安全確保や危険回避に制約が加わっているうえ、療養生活には様々な危険が内在している。

 病気や障害そのものが生命にとって脅威であるし、危険が伴う治療や検査がつきものだ。思わぬ出来事が患者を不必要に苦しめたり、不測の事態を招いたりすることも起こりうる。このような医療現場において看護師は、病状悪化や危害をもたらす要因から患者を遠ざけ、療養生活に潜む危険を排除する役割を担う。

 一方、「安楽」とは、不安や不快などの苦痛がなく、人間らしい生活を送れている状態を指す。意味がより明確な「安全」に比べて、理解するのが難しい概念だ。

 看護師にとってはなじみ深い言葉だが、生活用語では用いられない独特のものだ。日常的に「楽になった」とは言うが、「安楽になった」と言う人はいないだろう。ちなみに看護の世界で「安心」は心が穏やかな状態を意味し、安楽に含めて捉えられている。

 では「安楽」とは?

 自分らしい生活が支障なく営まれている時、人は安楽を意識することはない。しかしひとたび病気になると、症状や治療がもたらす不快、病状や予後への不安、行動制限による不自由……等々、様々な苦痛を感じるようになる。看護師は、患者が経験している苦痛を「安楽の阻害」と捉え、苦痛を軽減し、安楽を促すケアを行う。

 個々の行為においても安楽であることが重視される。例えば、皮膚の清潔を保つ清拭(せいしき)は、汚染を除去するのみならず、心地よさや爽快感を与えることを目指す。行為の中に苦痛をもたらす何かがあれば、安楽を阻害したと考えるからだ。同時に、熱傷を防ぐために湯を適温に保つなど、安全保持にも注意を払う。

 診療行為の場合、検査や処置を安全に行うには、患者の緊張や恐怖の緩和が不可欠となる。看護師は、患者が平静を保てるよう身体をさするなど、安楽を促すケアを行う。

 患者の安全・安楽は、いついかなる場合においても、看護師にとって最重要の価値なのである。

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