メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

05月21日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

新着記事一覧へ

このエントリーをはてなブックマークに追加
mixiチェック

水曜「働く・暮らす」【現場一話】

旭川「谷口農場」

写真:谷口威裕社長(左)と従業員。社員は約20人。30代の若手が多いという=旭川市の谷口農場 拡大谷口威裕社長(左)と従業員。社員は約20人。30代の若手が多いという=旭川市の谷口農場

 ■有機栽培、元気な土が味を育む

 旭川市の谷口農場は、有機栽培のトマトで作ったトマトジュースが人気だ。化学肥料も農薬も使わず、土壌の持つ力を生かして作物を育てる有機農業は手間も時間もかかる。そのトマトを惜しげもなくジュースに加工してしまう。ぜいたくにも思える商品が生まれた背景には、地中の微生物が持つ力に注目し、常に新しいことに挑んできた農場の歴史があった。

 谷口農場は1900(明治33)年、現社長の谷口威裕(たけひろ)さん(69)の祖先が富山県魚津市から移り住み、開拓したのが始まり。いまはトマトやカボチャ、ジャガイモのほか、ゆめぴりかやななつぼしなどコメも手がける。約43ヘクタールの水田で育てるコメは、農薬や化学肥料を通常の半分以下に抑えた特別栽培米。トマトなどの野菜はそれらを使わない有機栽培で育てており、有機JAS認証を取得している。

 人気のトマトジュース「ゆうきくん」は、塩などを加えず、農場で収穫した完熟トマトを絞ったトマト100%のジュース。700ミリリットル瓶で850円、190グラム缶で210円(いずれも税別)。市販のジュースと比べると高めだが、これがおいしい。トマトジュースにありがちな野菜臭さがなく、さわやかな甘みでごくごく飲める。

 おいしさの秘密は農場の土の力という。「土壌に住む微生物が元気になれば、土にも力がつく。そこで育つ野菜もおいしくなる。人間も腸内細菌が活性化すれば、腸の調子も良くなるでしょう。うちでは同じ畑でトマトを25年ほど育てているが、土に免疫力がついているから連作障害がおきません」と谷口さん。

 土壌の微生物を元気にするため、同農場ではさまざまな原料で有機肥料を作る。コメぬか、大豆かす、菜種かす、カニやカキの殻、魚かす。これらに菌を混ぜて発酵させ、微生物を培養する。加えて、完全に発酵した牛ふんにもみ殻を混ぜた堆肥(たいひ)も畑にまく。「いろいろバランス良く混ぜることで、地中の微生物の種類も増える」というのが谷口さんの考えだ。

     *

 谷口さんが有機農業を始めたきっかけは1972年にさかのぼる。妻の流産を機に農薬や化学肥料をなるべく使わない安全な農業に関心を持ち、自家用の野菜栽培から実践した。幸い子宝に恵まれ、その後は家族一丸で有機農業に取り組むようになった。

 80年ごろからは販売用のコメに取り組みを拡大。国の減反政策が本格化すると、エノキ栽培にも挑戦した。エノキ栽培を辞めた後は、その建物で牛を飼い、肥育も手がけた。このとき、牛ふんを堆肥にして栽培したコメがお客に好評だったという。

 80年代後半には市民農園をオープン。有機肥料で育てて、豊作で収穫しきれなかったトマトから生まれたのが「ゆうきくん」だ。

 さまざまな試行錯誤から、化学肥料や農薬は速効性に優れるものの「土壌の微生物を減らしてしまう」ことに気づいた谷口さん。「有機農業は最初は苦労することもあるが、田畑の土に力がつけば、丈夫でおいしい野菜が収穫できる」と話す。

 (井上潜)

 ■「面積割合1%」、目標達成は厳しく

 有機農業は土壌や水など環境への負荷の軽減を目的に、農薬や化学肥料、遺伝子組み換え技術を使わない農業。有機JAS認証制度では、農相認定の登録機関に認定された生産者が「有機」と表示できる。堆肥(たいひ)などで土をつくり、種まき前に2年以上、化学肥料や農薬を使っていないことが条件。特別栽培は化学肥料や農薬を50%以上減らす。

 国は2018年度までに耕地面積に占める有機農業の割合を1%に増やす目標を掲げるが、16年度末時点で0.5%(有機JAS認証以外の生産者も含む)と目標達成は厳しい状況だ。

 一方、農水省によると、有機農業に取り組む農業者の平均年齢は59歳と、全体に比べて7歳ほど若い。約半数が60歳未満という。新規就農希望者の3割が有機農業での就農を希望している。谷口さんは「適正な利益が確保されなければ続かない。地域で(有機農家を)支える仕組みも必要だろう」と指摘している。

PR情報

ここから広告です

PR注目情報

北海道報道センターから

北海道アサヒ・コムへようこそ。
身のまわりの出来事やニュース、情報などをメールでお寄せ下さい(添付ファイルはご遠慮下さい)
メールはこちらから

朝日新聞 北海道報道センター 公式ツイッター

注目コンテンツ