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特集「北海道150年」【北のインデックス 蝦夷から北海道へ】

鉱物(3)砂金(上)

写真: 拡大

写真:松前町・松前城址。砂金は稲作ができない松前藩にとって貴重な財源だったという 拡大松前町・松前城址。砂金は稲作ができない松前藩にとって貴重な財源だったという

■採掘場 キリシタンに最北の隠れ里

 北海道の金の研究で知られる在野の研究者、弥永芳子さんは「国が繁栄するのも金、国を滅ぼすのも金、歴史をも変える金とは何なんだろう。(中略)ただ黄金に光り輝くだけで人を魅了し、歴史を変える“黄金”は、人間だけに対して一種の魔力を持っているのか」と書く。まさに至言で、数ある鉱石のなかで、金ほど長く人類の歴史に影響を与えてきたものはない。

 日本でも、黄金の島・ジパング伝説の由来になったとされる陸奥の砂金は、藤原一族の栄枯盛衰を招き、戦国時代の国盗り合戦は、金・銀山の争奪戦という側面を持っていた。そして、鉱山資源に恵まれた北海道にも、砂金をめぐる物語がある。

 蝦夷で本格的な採金が始まったのは、元和3(1617)年のこと。幕府が独占した佐渡、伊豆などの金山で産出量が減少したこともあり、松前藩でも砂金採取が始まった。

 場所は、松前半島中央部に位置する大千軒岳で、山中を水源とする知内川流域だ。松前藩は労働力確保のため、砂金掘りに従事する人々の入国規制を緩和し全国から多くを受け入れた。

 そのなかに、ある集団が潜伏していた。迫害から逃れてきたキリシタンたちである。貴重な財源である金を得るため、松前藩は彼らの素性を知りつつ不問とした。

 さらに、商人や砂金掘りに変装したイエズス会士2人もたびたび潜入していたが、「天下は日本から神父らを追い放ったが、松前は日本ではない」として彼らも黙認された。大千軒岳の砂金場は、キリシタンにとって最北の隠れ里となったのだ。

 昨秋、大千軒岳の麓(ふもと)まで行ってみた。国道228号から町道澄川線を経由、車で行ける奥二股登山口まで林道を行く。谷底を流れる知内川の上流に採掘場があり、砂金掘りたちの集落もあったと推測されている。前述の神父の報告には、「木で骨組みし、樹皮で屋根をふいた部落が点在していた」とある。車を止め、辺りを歩いてみた。この森の奥で、かつて砂金掘りの過酷な労働が行われ、粗末な小屋でひそかに祈りを捧げる人々がいたことを思う。砂金のきらめきは、山師たちの欲望を駆り立てる一方、キリシタンたちが託した命のともしびでもあった。

 しかし、悲劇は起こる。寛永14(1637)年に起きた島原の乱を機に、幕府はさらなる禁教措置とポルトガル船の来航を禁じ、鎖国が確立。松前藩も2年後、捕吏一隊を砂金場と周辺集落に派遣し、キリシタン男女106人が処刑された。

 その後、砂金掘りたちは、新たな金を求めアイヌの人々の生活圏を侵し山中に分け入った。そうした行為が引き金となり寛文9(1669)年、シャクシャインの乱が勃発。これ以降、松前藩は砂金掘りを禁じ、和人の蝦夷地侵入はご法度となる。

 北海道の砂金に再び注目が集まるのは、明治後期のこと。世界的な金本位制に支えられ、狂乱のゴールドラッシュが訪れた。

 (文・井上美香)

 (写真・大友真志)

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