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水曜「働く・暮らす」【けんこう処方箋】

床ずれ、定期的観察と予防を 大日向輝美

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写真:<イラスト・佐藤博美> 拡大<イラスト・佐藤博美>

 ●札幌医大保健医療学部長 大日向輝美

 「床ずれは看護怠慢」――今から三十数年前、ある新聞に掲載された記事の見出しである。床ずれが原因で死亡した患者の家族が、看護師らの過失を訴え、損害賠償を求めた裁判に関するものだ。

 床ずれは、長期間病床にある患者の皮膚に持続的な圧迫が加わることで血流が停滞し、局所が傷つく現象だ。医学的には「褥瘡(じょくそう)」という。

 後に「褥瘡裁判」と言われるようになったこの訴訟は、看護の質が問われた初のケースで、社会的にも注目を集めた。これ以前の看護過誤訴訟は、全てが医師の指示に関わるもので、看護師が看護行為の責任を直接問われたことはなかったからだ。

 裁判は控訴審で和解となったが、争点の一つが褥瘡の発生と悪化を防げなかった看護師の責任と、患者の療養生活の質を保つ看護の役割であった。「看護怠慢」という見出しの衝撃もあって、看護師の役割・責任が問い直されるとともに、看護とは何かを社会に示す契機ともなった。

 褥瘡が起こりやすいのは、圧迫を受けやすい骨突出部である。仰向けでは仙骨部(脊柱〈せきちゅう〉下端の飛び出たところ)、横向きでは大転子部(大腿〈だいたい〉骨上部外側の出っ張り)、座位では座骨部(座面に接する部位)が多い。圧迫しても消えない発赤(炎症)から、水疱(すいほう)、ただれ、潰瘍(かいよう)へと進み、筋、腱(けん)、骨に浸潤していく。病巣が深くなるにつれて痛みが増し、感染リスクも高まる。出血や体液の喪失で全身状態は徐々に悪化。それがまた褥瘡の進行をもたらす。

 健康な人は、睡眠中も同じ部位が圧迫されないように動いている。ところが動きに障害があったり痛み知覚が鈍ったりすると、褥瘡リスクは一気に高まる。裁判で争われたのも、脳出血による半身まひで、動きと知覚に障害を抱えた患者に対する措置だった。

 褥瘡ケアに関する看護師の役割は、つくらないことと悪化させないこと。そのためには褥瘡の危険性を予測して、定期的な観察と予防に努める。万が一発生しても、発赤の段階で発見すれば、特別な医療処置をせずに治すことができる。発赤出現後は短時間で水疱やただれに進むため、早期発見が何より重要だ。

 裁判で問題となった褥瘡の予測と回避は、昔も今も患者の安全・安楽を守る看護師の責務だ。かつてと異なっているのは、高齢化による褥瘡リスクの増大と、エビデンス(根拠)に基づく専門的なケアが、より一層求められるようになってきたことだろう。

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